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絵本探求講座第3回を終えて

 梅雨に逆戻りしたようなお天気が続きます。
 6月26日(日)の絵本探求講座 第1期(ミッキー絵本ゼミ)第3回講座の振り返りをします。
①    グループワーク「技法が特徴となる絵本」の発表
私は、『ね、ぼくのともだちになって!』を選びました。

『ね、ぼくのともだちになって!』
作: エリック・カール
偕成社/1991年05月

・この絵本は、ほとんどのページが【裁ち切り】で表現されています。裁ち切りが使われていると、描かれている世界がページの境界を越えて広がっているように感じられ、読者は絵本の世界にもっと入り込めるようになります。「ね、ぼくの友だちになって!」と、小さなねずみ君がいろいろな動物たちのしっぽに向かって語りかけていきます。右のページにしっぽが描かれていて、ページをめくると左ページに、そのしっぽの持ち主が描かれ、右ページには、また違うしっぽが描かれています。次は、どんな動物が登場するのかなと、期待を膨らませながらページをどんどんめくりたくなります。動物は、一匹とは限りません。黄緑色のワニの背中にピンクの鳥が乗っているページもあります。しっぽだけのページを見ている時、「黄緑色の上にピンク、次は何だろう?」と考え込みます。早く答えを知りたくなります。ページターナーです。
・「ね、ぼくの友だちになって!」の文字が、吹き出しの中に手書きで書かれ、【タイポグラフィー】が使われています。活字の形、大きさ、種類、配置、行の長さ、行間の幅、行の切れ目など、1冊の絵本の中の文字に関係するデザインの技法です。短い同じ言葉の繰り返しですが、声に出してみると違いがわかるように思います。動物たちの返事はなく、小さなねずみ君は気づいてもらおうと、飛んだり、走ったり、カンガルーのしっぽの上にのったり、クジャクの羽の下にいたりして表情が豊かに描かれています。吹き出しの位置はいろいろで、形が細長かったり、丸かったり、ページによって様々に表現されています。そのため、テキストが1行だったり、2行、3行だったりしています。タイポグラフィーの効果で読者はねずみ君に同情し、感情移入していきます。最後にやっと素敵なお友だちと出会い、「ええ、いいわ!」の返事に、読者はねずみ君よかったねという想いになります。
・見返しをめくると、カールした緑色の太い線が描かれていて、そこからどのページにも両開きの下に太い緑の線が続きます。草の道が表現されているのかなと思いきや、蛇でした。ねずみ君はお友達と出会って仲良く木の根の穴に入ります。そこから外を見た時に、蛇の存在に気づきます。この蛇の裁ち切り】の工夫が、長さをより強調。長い長い長ぁ~い蛇であることを感じると共に、読者は、ねずみ君は危険と隣り合わせだったことに気づきます。裏表紙にくねくねと蛇の全容が描かれていて、余韻が残ります。
・エリック・カールの特徴的な制作手法である【コラージュ】(「貼り付ける」を意味するフランス語の動詞〈coller〉に由来します)は、薄手の紙に複数の色を塗り重ねたものを切って貼り付けています。鮮やかな色の組み合わせや模様の組み合わせが面白く、絵筆の跡や絵の具の肌合いが触感を強く呼び起します。貼り付けられたものが何なのかを見極めようとする読者の注目を集め、「見たい」という強い気持ちをさそいます。また、クレヨンで毛やひげ、まつげやたてがみなどが手描きされ、絵全体に動きを感じます。
(14種類の動物が登場する単純明快なお話ですが、技法の視点から「絵を読む」という経験を通して、絵本を深く楽しむことができました)

チーム2で紹介された絵本

『太陽といっしょ』
作:新宮晋
クレヨンハウス/2017年11月

技法:断ち切り・はみだし・判型

『てをつなぐ』
作:鈴木まもる
金の星社/2017年

技法:裁ち切り・はみだし

『おーい、こちら灯台』
作:ソフィー・ブラッコール 山口文生 訳
評論社/2019年

技法:判型・タイポグラフィー・裁ち切り・枠・ビネット・フリップ

『ひみつのビクビク』
作:フランチェスカ・サンナ なかがわ ちひろ 訳 
 廣済堂あかつき/2019年

技法:裁ち切り

【参考文献】

『絵本の絵を読む』
ジェーン・ドーナン 著
正置友子・灰島かり・川端有子 訳
玉川大学出版部/2013年3月

②    Question3「子どもはどのように絵本を読むのか?」
・「見ることは言葉より先にくる」と言われている。子どもには絵そのものを読む力がある。
・子どもは作品を読む姿勢が主体的である。
絵があることで想像を膨らませて、また戻ることが出来る。物語の世界と現実の世界が呼応している。
よく読み聞かせしてもらった子どもは、文字が読めるようになった時、文字を見たら読んでもらった人や登場人物の声が聞こえてくる。文字を見ると声が聞こえる回路ができている。
文字を知ると絵を見る力が退化する。
・子どもに絵本を読む時、その子が文字を読めるのか、まだ読めてないかによって、絵を見る見方が違うのではないかという視点で、その子の読みを想像しながら読んであげること大事。

【参考文献】ポストモダンの絵本を子どもたちと一緒に読みながら考察している。

『子どもはどのように絵本を読むのか?』
ヴィクター・ワトソン、モラグ・スタイルズ 編集
谷本 誠剛 訳
柏書房/2002年11月1日

 絵本を一緒に読むこれまでの体験から、子どもにとって本がいかに大きな力をもつかを感じます。お世話になっている絵本アドバイザーの話が思い出されます。本棚から本を取り出す行為、自らページをめくるという行為がとても大切だと。そこに絵本があるということが大切になってくる。保育園にこそ司書が必要だと。学びを深めて良質な絵本の選書の目を持ちたいと思いました。

③  講義  「子どもの心理発達と絵本」
 ミッキー先生ご自身の絵本を通しての子育て体験をお話ししてくださいました。
・絵本は、育児に迷った時、子どもの心の中ってこんなのではないかと読み手が想像できる。
・いい絵本は、子どもの心理をうまく表現している。
・現実を見る視点を俯瞰することが出来る。
・神話・昔話を読んであげることは、見えないものを信じる力ができてくる。
・ミッキー先生は、『クシュラの奇跡』を参考にして、ずっと読書日記をつけておられました。自分にとって大切なネタを書き残すことは宝物。子育ての短い期間を書くことは財産になる。たくさんの資料や書籍の紹介がありました。

『クシュラの奇跡』
ドロシー バトラー 著 百々佑利子 訳
のら書店/2006年3月20日

 記録することの大切さを改めて感じました。
 この秋、長女のところに初孫が生まれる予定です。先週、家に帰ってきた時のことです。お腹も目立ち始め、胎動を感じるようになってきたと喜んで 報告してくれました。ちょうどオンライン絵本会にじのひろばのリハーサルで、私は『だんだん だんだん』(たけがみ たえ 作・ひさかたチャイルド・2021年05月12日発行)を読みました。長女は横で聞いていました。夕方、おじいちゃんとお散歩に出かけるお話です。「だんだん だんだん」というフレーズが何度も出てきます。関西弁のアクセントになると意味が違ってくるので、気を付けながら緩急や間の取り方にも心掛けて読みました。終了後、長女が「だんだん だんだん」って言った時、すごく反応してお腹を蹴っていたと言うのです。私が読む絵本を聞いてくれていたと思うと嬉しくなり、すくすく育っていることを実感しました。手足を嬉しそうに動かす様子を想像しました。長女から『だんだん だんだん』また読んでほしいとリクエストがありました。
 生まれたら読書日記はつけていこうと思っていましたが、ミッキー先生のおっしゃる自分にとって大切なネタであり、絵本を通してもう孫との対話は始まっていることを感じました。先週から書き始めています。

 今回は、都合がつかず欠席しましたが、録画や勉強会のチームのフォローにより、勉強出来ました。ミッキー先生、チームメンバーに感謝です。
最終日の発表という目標に向けて、勉強会やチーム間のコミュニケーションを積み重ねていく中で、チーム2ピース5の結束力が高まり、チームビルディング力がついていってるように思います。


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