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『長崎すひあすくわっど』4-11
「ハリルリや科学部の子みたくもう充分頑張っとる人ならともかく、最初から人任せにすっとも、ちょい違う気のすっし」
そこまで言って、コハクは頬をかき、
「……まあ、アドバイスくらいはすんばってん。けどちゃんと自分で考えた人じゃなからんば、うちはあんまし助ける気にならん。
──ハリルリは多分、そんな人らでも助けたかとやろうけど。けどふたりには、お父さんみたくなってほしくなかとよ」
この間、アコヤは黙って歩き続けていたが、コハクのこの言葉を聞いたとたん、
「驚いた」
とだけ言った。
「何(なん)が?」
「脳筋のお前が、まさかここまできちんと考えてたとは」
コハクは舌打ち混じりに答えた。
「あっそ! アンタもサボリイヤミんくせして色々抱えとるごたっけどね!」
アコヤも眉間にシワを寄せ、ここぞとばかりに言い返す。
「少し見直して損した」
「アンタに見直されても嬉しくなかし!」
コハクは吐き捨てるように言いながら前へ向き直った。
「ってか、気に食わんなら文句言う前にふたりば助けんね。スネるよりもそっちん方がよかやろ」