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season1 5話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)

5.『ヨーコの前の色んな道』


 ホームルーム終了のチャイムと共に、みんな口々に話しかけてくれるクラスメイト達。

「アカデミーへようこそ!」
「おっす! 新入り! 仲良くしような!」
「さっきは質問答えてくれてありがと!」
「授業中って、友達相手にもなんか敬語になっちゃうよね」
「あわわ、話しかけられてぼく照れちゃう……」

 こんな感じにおしゃべりしていると、ネモがいないことに気づくヨーコ。

「ありゃ、ネモさんは?」
「さっき職員室に呼ばれてたよ」
「ああ、スター団のことお話しに行ったんかね」

 ヨーコが言うと、みんな口々に、

「スター団? またいたの?」
「ネモ、やっぱり勝ってた?」
「あー、追っ払ったんはうちじゃけど」

 ヨーコ、ちょっと戸惑いがちに話す。

「えっ、スター団相手に?」
「てか、もしかして見学の時にスター団と勝負して勝った子って」
「うちです」

 ヨーコがうなずくと、歓声が上がる。

「マジかー!!」

 その流れで、おしゃべりしながら授業のない子たちとグラウンドでわいわい勝負とかする。楽しい。お昼になりそのまま食堂へ。
 メニューを選んでサイドバーでメニュー待ちしていると、ペパーがいた。

「あのう……」

 ヨーコが話しかけると、振り向くペパー。

「おっ! また会ったな! オレのこと覚えてるよな」
「灯台の人! ペパーさんよね?」
「そーそー! さすがの記憶力ちゃんだな!
おっと、お前は名乗らなくていいぜ。ヨーコ……だ!」
「はい、北條陽子です」
「生徒会長とつるんでるだろ? 学校中オマエの噂で持ちきりだぜ」
「つるんでるというか、もう友達です」

 ヨーコ、きっぱり言い切る。

「そうかい。ま、こちとらそんな有名人に会うため、来たくもねえ学校まで足を運んでやったんだ。オレの野望の実現のため、その強さ貸してくれねーか!」
「野望、といいますと?」
「へへへ! くわしく聞きたいかー!」

 笑うペパー。ヨーコ冷静に、

「聞かんとお返事出来んし」
「そりゃそうか。意外かもしれねーけど、オレ、ピクニックが好きで料理すんのも得意なわけよ」
「はあ」
「今はポケモンを元気にする健康料理を研究してんだけど、この前見つけた本に食べればたちまち元気になる秘伝スパイスっていう食材の情報が載ってたんだ!」
「秘伝スパイス?」
「全部で5種類! その粉末をペロっと舐めるだけで滋養強壮、血行促進、老化防止に免疫アップだ! パルデアにしかない、ガチでめずらしい食材らしい!」
「ほー」
「だけど、秘伝スパイスはヌシポケモンってのに守られてて、簡単には手に入らねーんだと!」

 本を取り出して、開いたページを見せてくるペパー。

「ヌシってのは、多分……、こんなヤツ!」

 エリアゼロの怪物のページ。ポケモンかどうかもわからない、小型化で残酷な生物の絵。そして写真。ドンファンに似た、鉄の轍。ヨーコ、ドンファンを調べる。

「似とるけど違う生き物……?」
「自分で採りに行きたいけど、オレ、ポケモン勝負は苦手でさ。ポケモンが強い友達のアテもねえし……、生徒会長にたのむのもうぜえし……」

 ペパー、ヨーコに振り向く。

「そこで! ぜひともオマエの力を貸してほしいんだ!」
「ほうじゃねえ……」
「あーまだ答えなくていい! とりあえず、ヌシがいそうな場所だけマップアプリに登録しておくな! 名付けてレジェンドルートだ!」
「ありがとうございます」

 スマホロトムの通信。マップにヌシがいるらしき場所の情報が書き込まれる。

(カバーかわええ……)
「細かい話はまた今度だ。お近づきのしるしにサンドウィッチに使う缶詰、やる」
「あ、どうも」

 缶詰を受けとるヨーコ。スクールバッグに入れる。

「考えといてくれよ!」

 去っていくペパー。それから料理が出来上がったので、食堂のおばちゃんに呼ばれトレーを持つと、

「おーいヨーコ、こっちこっちー!」

 呼んでもらい、一緒に食べる。サンドウィッチとポテト、スープ。グレープジュース飲み放題。

「そういや、ネモ来なかったな」
「生徒会長も授業ない日だし、勝負の噂聞き付けたら飛んでくるのにね」
「話長引いてるのかな?」
「うち、探検がてらのぞいてみる」

 みんなが先に出て、お皿を片付けて出て行こうとした時、突然電話が。
 出ると謎の声。

『……北條陽子だな? この通話はあなたのスマホをハッキングして行っている』
「ハッキング?」

 気色ばむヨーコ。素直に答える謎の声。

『ハッキングとは、そうだな……。一時的に乗っ取ったということだ。
わたしの名はカシオペア。あなたの事は知っている。高い素質を持つポケモントレーナー。その腕前を見込んで頼みたいことがある』
「なんです?」
『ヨーコ……、あなたはスター団を知っているな?』
「もちろん。4回くらいやりあっとるし、相棒のひとりがエライ目合わされましたけえ」
『……話が早くて助かる。スター団とは、アカデミーに通う生徒たちが作った……、いわゆる不良グループ。彼らはアカデミーの風紀を乱し、あなたの相棒がされたように周囲に迷惑をかけている。そんな彼らを、わたしは放っておくことが出来ない……!
 わたしはスター団を解散させ、星クズに変える作戦……、スターダスト大作戦を考えている。
この計画には同志が必要……。あなたにも手を貸してほしい』
「……はい、といいたいとこじゃけど、あんたもいまいち信用できん」
『返事は結構。詳しいことはまた後日だ。今日のところはこれで』

 通話切れる。ちょうどクラベルがやって来る。

「どうも、ヨーコさん」
「クラベル先生」
「校内でのスマホ通話は、もう少し小さな声でお願いしますね。大切な個人情報が聞かれてしまうと危険ですので」
「あ、す、すみません気を付けます……」

 ヨーコしょんもり。クラベル柔らかく、

「……今の時代、気を付けることが多くて大変ですね。それでは、後ほど」
「はい……」

 そそくさと出るヨーコ。ぽつりとつぶやくクラベル。

「……スター団」



 一方、職員室を覗き込むヨーコ。見るとなんかすごそうな人(オモダカ)と話しているネモ。

「それではチャンピオン・ネモ、代わりをお願いしますね」
「まっかせてください! むしろ楽しみです!」
「それではおまかせします。ごきげんよう」

 何だろう、と思いながらそっと職員室に入るヨーコ。すごそうな人とすれ違い、目が合う。

「おや……?」
(夜空みたあな目。キレイじゃなあ)
「失礼します」

 去っていくすごそうな人。ニコニコ顔。

「あ、ヨーコ!」
「今ん人は?」
「気になるよね? あの人はトップって呼ばれてる、強くてすごくてかっこよくて、わたしの目標で……。いや、ポケモントレーナーなら、誰もが憧れる人なんだー!」
「はー、どうりですごそうな人なんね……(トップってどっかで聞いたことあるような……)」
「わかる? さすがヨーコ!」

 ネモうなずいた後に、何かに気付く。

「あっ! それでさ、さっきの教室での話! わたしの質問に、強いトレーナーを目指すって言ってくれたよね!」
「うん」
「それならさ、ヨーコもチャンピオンランク目指してみない!?」
「チャンピオンランク!? やる! やります! やらせてください!」
「え! 話早すぎ! とりあえず説明させてほしいな!」

 止めながらも嬉しそうなネモ。

「チャンピオンランクってのは、ポケモンを鍛えてその技で人々を魅力する、ポケモン勝負プロ級の人たち! ポケモンリーグに認められると、チャンピオンランクを名乗れるんだ」
「うんうん」
「到達するには授業を受けるだけじゃダメで、8つのポケモンジムを勝ち抜いて、ジムバッジを集めなきゃいけない。そしたら特別な試験……、チャンピオンテストに挑戦できる。それに合格すれば、晴れてチャンピオンランク!
 ポケモントレーナーみんなの憧れ! すっごい称号なのだー!」
「おおー!」
「……って、自分で言うの恥ずかしいね」
「ありゃ」
「わたしは、前回の宝探しでチャンピオンランクになったんだ。あ、宝探しっていうのは、もうすぐ始まる特別な課外授業! 前のは入学早々あったんだ! 学校の外で冒険しながら、自由に学べて楽しいんだよ!」
「あ、お父さん達もクラベル先生も話してくれんさった」
「今思えば、あの経験が宝物……、だったのかな?」

 考え込むネモ。ヨーコを見て、

「ヨーコと一緒なら、わたしももっと強くなれる……。あらかじめジムの場所、マップアプリに登録しちゃおっか!」

 スマホロトム通信。マップにジムリーダーの情報が入る。

「わぁ、色んな人がおりんさるんじゃね」
「ザ・チャンピオンロード! 考えといてね!」
「うん!」

 一緒に職員室を出て、廊下でネモを見送る。すると校内放送が。
 ピン、ポン、パン、ポーン。

『北條陽子さん、至急、校長室までいらしてください』

 ポン、パン、ポン、ピーン。

「ありゃ、スマホのこと以外、うちなんかしたかね?」

 首をかしげながらも校長室へ。

「失礼します」

 ノックして入ると、クラベルが快く出迎えてくれた(ニャオハはポケモン用ベッドでごろごろ)。

「ヨーコさん、よくいらっしゃいました。
 グレープアカデミーは、気に入ってくださいましたか?」
「はい! とっても!」
「大変嬉しいお返事です。先ほど食堂で話せれば良かったのですが、理由がありまして校長室までお呼び出ししました。私の友人が、あなたに大事なお話があるそうです」
「お友達? どちらにおりんさるんです?」

 キョロキョロするヨーコ。

「おっと、この場にはいらっしゃいません。今繋ぎますね」

 校長室のテレビがつく。すると、

『ハロー、ヨーコ。初めまして』

 近未来的な衣裳をつけた男性の姿が映る。

『ボクはフトゥー。パルデアの大穴の奥、エリアゼロにてポケモンの研究をしている』
「パルデアの大穴……」
「パルデアの中央に存在する、巨大な空洞ですね」
(ペパーさんのお父さん、やったよね……。確かにどことなく似とりんさる)
「我が校の卒業生で、素晴らしい博士なんですよ」
『……単刀直入に話そう。学籍番号805C393、北條陽子……、キミはミライドンという不思議なポケモンをつれているな?』

 身構えつつ素直に答えるヨーコ。

「……はい」
『正直な情報の提供、大変感謝する。いやなに……、責めるつもりはない。ただ、協力してほしいのだ』
「協力? 何をすればええんです?」

 ひとりでにミライドンが出てくる。

「アギャア」
「ミライドンさん!」
『やあ久しぶり。元気そうで何よりだ』
「ギャス!」

 嬉しげにお返事するミライドン。

『実はミライドンはボクが管理していたポケモンでね、ペパーという青年から受け取ったであろうボールも、元々はボクのものなんだ。
しかし今、ボクはそのポケモンを管理できない状況にいてね。ヨーコには引き続き、ミライドンを可愛がってほしい』
「もちろんです! ね?」
「アギャアス」
『そう言ってもらえると助かるよ。ミライドンは今弱っており戦闘能力を失っている。移動に特化したライドフォルムにはなれそうだが、持っていた能力を完全に取り戻すには、時間を必要とするだろう。
ボクの連絡先をスマホに登録しよう。スマホロトムを出してくれたまえ』

 テレビと通信。ヨーコびっくり。

「テレビからでも送れるん!?」
「リモートですからね」
『今後は状況確認のため、定期的に連絡させてもらうよ。それでは達者で』

 フトゥー、どこかへ去ると同時に、テレビ消える。

「アギャギャ! ギャス!」

 寂しそうなミライドン。なだめてボールに戻すヨーコ。

「博士にずいぶん大きなお願いをされてしまいましたね。アカデミーも全力であなたをサポートしますから、たくされたミライドンとともに、学園生活を楽しんでくださいね」
「おそれ多いです。ありがとうございます」
「失礼しまーす! あ、いたいたヨーコ」

 今度はネモが入ってくる。

「ネモさん」
「転入早々、校長室に呼び出しなんて悪いことしたの?」
「まさかぁ」

 笑うヨーコ。ネモも笑う。

「冗談! ジニア先生から、寮の部屋を案内するように言われたの」
「あ、すっかり忘れとった」
「ヨーコのマイルーム! 一緒に行ってみようよ」

 ということで寮へ。ヨーコ達を見送り、ひとりつぶやくクラベル。

「あのポケモン、もしやエリアゼロの……? フトゥー、まさか、あなたは……」

 一方、寮の部屋に来たヨーコ達。もう夕方。

「んジャカパーン!! これからヨーコが暮らす部屋でーす!」
「わぁ、モダンなお部屋!」
「……って、私も初めて入るんだけど。学校初日からいろいろあって疲れたでしょ? ベッドでゆっくり休んでね。人もポケモンも体力回復できるから!」
「うん。ありがとう」
「元気になったらまた明日! いっぱいポケモン勝負しよっ! それじゃ、またね!」
「ほんじゃーねー」

 ネモを見送る。荷物は段ボールにまだ二箱。
 ぴっかりさん達を出し、みんなで寝転がってそのまま眠る。

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