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『長崎すひあすくわっど』4-17
アコヤが少し目を見開き、尋ねる。
「ご存知なんですか?」
「みなと中のビオトープば見せてもらう時に、よく撫でさせてもろうたりしとるとよ」
みなと中学校のビオトープは生物部が管理しており、隔週で近隣の住民に解放されている。
その時シロクツは、生物部の部員達と共に訪れた人々の遊ぶのだ。
「ああ、やけん助けようとして、うちらば連れてきたとね」
コハクは目をぱちくりさせてシロクツを見た。店員さんが首をかしげる。
「連れてきた?」
「はい。シロクツが逃げたって聞いて探しとったんですけど、シロクツ、さっき学校に戻って来てうちらばここに連れてきたとです。そしたら、アイツらが……」
「そう。助けてくれたとたいね。ありがとうね」
店員さんは再びホッとした表情を浮かべ、今回の功労者の頭を撫で続けた。シロクツは満足そうに目を閉じ、コハクの腕の中でさらに心地よさそうに身を預けている。
そんな様子を横目で見ていたアコヤが、ふとコハクの隣に来て、
「知ってたのか? あの仕草、ついてきてほしいってやつだって」
「いや、勘」
コハクはシロクツを撫でながらあっけらかんと答えた。アコヤは顔をしかめて、
「野生の勘かよ、さすが脳筋」