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『長崎すひあすくわっど』4-16
「ま、まさか……」
周囲の連中もそわそわとした様子を見せ始めている。
アコヤは冷静にスマホを掲げた。
「証拠なら撮ってる。これをこのまま瓊之浦家のご当主に見せても……」
「う、ウソだろどうせ……」
「バ、バカ煽るな!」
リーダー格は慌てて止め、
「すみませんでしたー!」
と情けない声を上げて走り出した。他のメンバーもあたふたと後に続く。
その場に静寂が戻ると、アコヤはスマホをポケットにしまい、軽く息をついた。
「ふう……、やっと静かになったな」
「よかとね、あげんこと言うて」
コハクは呆れ顔で、喉を鳴らすシロクツを抱き上げた。
「ハリルリには後で話しとくよ」
アコヤがコハクを一瞥すると、土産屋の店員さんが、
「おふたりとも、ありがとうございます」
と頭を下げてくれた。コハクは微笑んで、店員さんにシロクツを見せた。
「いやいや、お礼はこん子、シロクツに言うてください。こん子が知らせんかったら、うちらも止められんかったけん」
「そう、シロクツちゃんが……」
店員さんがシロクツの頭を優しく撫でると、シロクツは喉を鳴らして気持ちよさそうに目を細めた。