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『長崎すひあすくわっど』4-2
(単なるすましたヒーロー嫌いのサボリイヤミかと思うたら、なんば抱えとっとかね)
コハクはアコヤを見た。アコヤは相変わらず、教科書とノートそっちのけでタブレット端末の中の辞書か資料集かを眺めているようだった。
薄くて軽いが非常に丈夫なこの端末は、ペンと共に生徒ひとりひとりに専用で配付されている。
辞書や資料集が電子書籍として内蔵されており、理科の実験ノートや総合学習ノートとしても活用されている。ワークシートや宿題の提出も、このタブレットで行っていた。
コハクは、ぼんやりとアコヤの動作を目で追った。タブレットの画面をじっと見つめ、時折ページをスワイプする様子は、いつも通り授業に無関心そうだった。
(なんであがん事言うたとか、やっぱ無理にでもチャットで聞かんばやったかな)
コハクはそんな気持ちを抱えながらも、結局メッセージを出せずにいたのだった。
*
さて放課後。
ハリとルリが2年1組のドアの所に来てくれた瞬間、
「ハリー、ルリー」
前髪の跳ねたボブショートの女の子がやってきた。可憐な雰囲気を纏った子だ。