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『長崎すひあすくわっど』4-13

「シロクツ!」

 コハクは小さく叫んだ。
 シロクツはふたりをじっ、と見つめ、尾をぴん、と立てると、再び、

「ニャー」

 と高く鳴いて駆け出した。
 コハクは直感でシロクツの後に続いた。アコヤも、

「おい待て」

 と言いつつ、ついてくる。
 シロクツはビオトープからグラウンドを横切り、校門へと軽快な足取りで駆けていく。コハクもアコヤも速度を緩めずに走る。
 シロクツは時折立ち止まってはコハク達の方を振り向き走る。ふたりがちゃんとついてきているかを確かめているようだった。
 練習している運動部の邪魔にならないよう、1匹とふたりで校門を走り抜けるや否や、シロクツは右──水辺の森公園とファミレス方面にへと走った。かと思うと、再び右に曲がる。オランダ通りの方向だ。コハクもアコヤと共に通りに出る。
 その瞬間、コハクの目に飛び込んできたのは、屋内に設置されたガチャガチャをふざけて叩いたり揺らしたりしている男子高生数名と、必死に止める土産屋の店員さんの姿だった。
 シロクツはガチャガチャに手をかけているひとりに向かって、

「ギニャー!」

 と威嚇の鳴き声を上げた。コハクも続けて腹の底から大声を出す。

「こらー!! なんしょっとね!!」

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