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『長崎すひあすくわっど』4-3

「ええと、坂本、マリア、さん?」
「どうしたの?」

 ルリとハリは首をかしげた。どうやら同じ1年生でクラスメートらしい。マリアと呼ばれた女の子はうなずき、

「これから部活の入部届け出しに行くとけどね、ついてってくれない? 顧問の先生が怖くって……」
「怖い、先生?」
「何部に入るの?」

 ルリとハリが尋ねると、マリアは小さな声で答えた。

「文芸部の、斎藤茂先生。国語の先生けど、なんか迫力あって……」

 ハリとルリが顔を見合せる。助けよう、とうなずきあっている顔だ。それを見たコハクは、手でふたりを静かに制止し、

「ああ、斎藤先生?」

 悪いと思いつつも、ハリルリの間からひょっこり顔を出した。

「話入ってごめんね。それならあれを話題に出してから話すとよか」
「いえ。えと、あれって?」

 マリアは戸惑いながらも聞き返してくれた。

「うーんと、ビワの話! 先生、確かに声が大きかし厳しそうけど、ビワとかビワスイーツの好きとよ。そん話ふったら、多分色々お話してくれるし怖くなくなるよ」

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