
season3 23話 ポケモン×この世界の片隅にクロスオーバー(ポケモンAYG)
23.『ペパーの頼み
~レジェンドルートの終わり~』
灯台の研究所へタクシーでやってきたヨーコ。ぴっかりさん達は休むためにボールに入ったまま。日が傾き始めた頃。
と、遅れてペパー到着。
「なんだよ、二着かよ!」
「まっすぐこっち来たけえね」
ドアに近づくペパー。
「ココが、アイツの研究所……。小せえころ、よく遊びに来てた。──オレたち呼びつけて、何の用だろうな」
ペパー、少し考えるが、扉をにらみ、
「今、開ける……」
扉に近づくふたり。ペパー鍵を取り出しながら、
「……天才的なポケモン博士なんだとさ、……オレの父ちゃん」
振り向き肩を怒らせ、悲しげに目を伏せる。
「でも、子供のオレにとっては最悪。いっつも仕事ばっかで、全然家に帰ってなんて来ねえし、遊んでもらった記憶もねえ。マフィティフだけが、いっつもオレのそばにいてくれたんだ」
決心つけたように、鍵を回す。開く音がする。
「開いたぜ……。──行くぞ。ちゃっちゃと終わらせようぜ」
「……うん」
ふたりで足を踏み入れる。夕暮れ時なので、いっそう中は暗い。
「暗うてほこりっぽいね」
と、パソコンがつく。
「ん?」
フトゥーの姿が映る。近付いてみるふたり。
「博士?」
『──頼みがある』
「……はい?」
聞き返すヨーコ。
『ボクは今、パルデアの大穴・エリアゼロの最深部にいる。この場所でずっと、特殊なポケモンの研究をしているのだ。
キミたちにはフトゥーの輝かしい研究……、その最後の手伝いをしてもらいたい』
「最後の手伝い……?」
首をかしげるペパー。
『手伝いに必要なカギが、その研究所のどこかにある。そのカギとは……、バイオレットブック』
「バイオレットブック?」
ペパー、気付き本を取り出す。
「ブックってもしかして……、これか?」
『ああ、ペパー、キミが持っていたとはな。ならばなおさら都合がいい。バイオレットブックを持って、エリアゼロ最深部まで来てくれ。そうすれば、宝物のような経験ができると約束しよう。
ただし、エリアゼロは凶暴なポケモンと強固な電脳システムに守られている』
目を背け、黙りこくるペパー。マフィティフの件を思い出している様子。
『キミたちふたりでは、少々手こずる苦難がありそうだ。ほかに頼りになりそうな仲間を集めてからでかまわない。エリアゼロ最深部にて、キミたちの冒険を待っているよ』
通信切れる。
「──エリアゼロ……」
肩をがっくり落とすペパー。
「アソコはヤバい。マフィティフが怪我したのも、大穴の奥……、エリアゼロなんだ」
姿勢を戻し、
「正直、もう二度と勘弁って場所だけど……」
ヨーコを見据えるペパー。
「──オマエは、行くのか……?」
ヨーコ、しっかりうなずく。
「──行く!」
ペパー、やれやれと首をふり、ヨーコを一瞥。
仕方ないな、と目をつぶり、
「……たのまれちまったもんな」
ペパー、静かに宣言。
「──友達(ダチ)が危険な場所に行くのを、黙って見てられねぇ」
カッ! 目を見開き、腕まくりしながら、
「オレも行ってやる! ……父ちゃんに文句も言いたいしな」
進んでいくペパー。
「よし! ヨーコ! 表に出ろ! エリアゼロでもやっていけるか、ポケモン勝負で力試しだ!」
少し振り向き、
「……おもにオレの! 力を! 試すの!」
「うん! やろう、ペパーさん!」
力強くうなずくヨーコ。外に出る前に中を歩き回ってまじまじと見る。
色々な研究データが表示されているモニター。不思議な装置。「オラチフ」と子供の字で書かれたポケモン用ベッド。重たくて開かなそうな冷蔵庫。長い間使われてなさそうな電子レンジ。棚に置かれた期限切れ調味料。使われていない洗面台の鏡は、ぼやけていてよく見えない。
窓際のテーブルには写真の入っていない写真立て。大きなサンドウィッチを作るお話の子供用の絵本。
どことなく胸を締め付けられる心持ちがして外に出ると、ペパーがマフィティフといた。
*
「よっしゃ! ヨーコ! 勝負の準備はいいか!」
「お願いします!」
「うしっ! マフィティフも準備はいいか!?」
「バウッ、ワウ!」
いつでもいいぞ! と吠えるマフィティフ。
「マフィティフもいけるってよ!」
「え、マフィティフさん大丈夫なん!?」
「まー、オマエが不安な気持ちもわかるけどよ……。コイツ、病み上がりだと思えねえほど元気ハッスルちゃんでさ、ヨーコと戦わせろ戦わせろってギャンギャン鳴くんだよ」
「はあ、それならよかった」
胸を撫で下ろすヨーコに笑うペパー。
「そーいや、もともと勝負が大好きだったんだよな。……生徒会長には負けるけど」
「あ、ありゃ……」(汗)
ペパー、マフィティフをボールに戻す。
「ってなわけで、心配ご無用! スパイスで生まれ変わった新生オレたちの味わい! たーんとご賞味あれだぜ!」
「ほいじゃきっちりいただきます!」
お互い最初の一体! わっぷるさん対ヨクバリス。
「スパイスめぐりで出会ったポケモンオールスターだぜ!」
はりきるペパー。
「先手必勝! わっぷるさん、アクアステップ!」
アクアステップで素早さ上げる。しかしサイコファングで効果抜群。お返しにインファイト!
倒れるヨクバリス!
2体目、リククラゲ対ポンさん。ツタこんぼうで叩くがヘドロこうげきくらい効果抜群。じごくづきで倒す。
3体目、スコヴィラン対まんじゅう。しねんのずつきを器用にかわしがんせきふうじで効果抜群&素早ささげる。しかししねんのずつきをくらいひるんで技出せず。畳み掛けられ倒れるまんじゅう。
続いてゴンさん。だいもんじくらってやけど。はらだいこでパワーアップ! だいもんじくらうも耐えてのしかかり。倒す。
4体目、キョジオーン対わっぷるさん再び。アクアステップで効果抜群! でも倒れない。ボディプレスでわっぷるさん倒される。ゴンさん再び。ヘビーボンバーで倒す。
5体目、パルシェン対ヒナじろう。マジカルシャインで目眩ましするが、パルシェンめげずにアクアブレイク。急所に当たる。しかしルミナコリジョンでとどめ!
ついにトリのマフィティフ対ぴっかりさん。特性いかくで攻撃下がるも、
「悔いのない勝負にしよう! どんどろ轟け、ぴっかりさん!」
ぴっかりさんテラスタル!
「快気祝いのテラスタルだ! 光っとこうぜマフィティフ!」
マフィティフテラスタル!
かみなりパンチくらわすも固い! マフィティフ、かみくだくでぴっかりさん倒す。
「テラスタルを封じるとは……」
「オマエの相棒兼エースだからな。ナメたらヤバいのはよーくわかってる!」
「そりゃどうも!」
ヒナじろう出す。マジカルシャインくらわすも接近を許しかみくだくで倒される。
「さすがマフィティフさん! でも!」
最後のポンさん。ほのおのキバをすんでで華麗にかわしツタこんぼうを急所に当ててとどめ!!
「ポンさんお疲れ様!」
「ぽにおーん!」
「マフィティフ、惜しかった!」
マフィティフをボールに戻すペパー。
「ヨーコ……、ありがとな!」
「ペパーさん強いね!」
「いや、競り買ったのはオマエだ。くそー、これがヌシポケモンを倒しまくる実力かー!」
ペパーがっくし。互いのポケモンを回復させながら、
「っつーか、オマエの付き添いがオレだけだとやっぱ心もとないな! エリアゼロのポケモン強いし、わけわからん装置もいっぱいある。せめてあとふたりくらい……、チャンピオンランクの強いヤツと、機械に強いヤツが仲間にいればな」
「チャンピオンランクはネモさんとして、ボタンさん機械に強いよ!」
「生徒会長はオマエがチャンピオンランクにならなきゃ来ないだろうけど……。って、今オマエ、ボタンっつったか」
「うん、言うたよ」
「スター団マジボスで、天才ハッカーのボタン?」
「ほうよ」
「確かにソイツなら適任だけど、そんなヤバい友達(ダチ)いつの間に作ってんだよ……!?」
「すごいけどヤバくないよ。ええ人よ。ハッキングできるだけで」
「そ、そうかよ。ま! メンツが揃ったらまた連絡取り合おうぜ!」
「うん」
ヨーコうなずき、リュックを背負い直す。
「ほいじゃうち、行くね」
「何すんだ?」
ヨーコ、静かに、
「この地方で、一番強いポケモントレーナーのひとりになりに行く」
「それって……」
うなずくヨーコ。
「ほいで、誘ってくれた友達と、──ケリをつけに行く」
「そうか……。頑張れよ、オマエならやれる!」
「うん、ありがとう!」
「それじゃあな。仲間になりそうなヤツいたら声かけてくれよ!」
爽やかに去るペパー。見送るヨーコ。