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林檎を絞る祖母
風邪を引いたなら、祖母が林檎をその萎れた小さな手で、おろし金で絞り、
日本手ぬぐいだか、キレイな布巾だかに、絞り絞り、最後の芯付近まで絞り、
その後、ぎゅっと布を巾着状にまとめ、林檎ジュースを作って飲ませてくれた。
ふと、今日、いや、もう昨日。
食欲不振、発熱した家族にと、果物売り場を物色。
林檎は高かった。
で、林檎百%なるジュースが今は在るのだった。うんと楽で、うんと安い。
栄養価はむしろ、高いかも知れない。
唐突に、発熱した夜には必ず林檎を絞ってくれた小さな祖母を思い出した。
絞りかすの林檎は、灰汁が出てどんどん汚い色に変色。
その林檎を絞った布の染みも当然取れない。
私が熱を出す度に、洗っても取れない染みの着いた布巾がどんどん増えるわけだ。
「早く飲まんと、そのジュースも色が悪くなるよ」
祖母の言葉通り、最初の透明な美味しそうな林檎ジュースは
布巾の布と同じ末路を辿った。
最近知ったこと、赤ん坊の離乳食には、林檎のすりおろしを与えるって。
ソレって・・布に治まったときの、あの林檎の形状か?
という事は、遥かに祖母は手間かけて
絞りたてのジュースを私に作ってくれていたのだ。
お祖母ちゃん・・私は愛され幸せな孫でしたね。
今更ながら、林檎を観て祖母思う。