ハシビロ考
ヒッポポタムス は過去の栄光に思いを馳せていた。
どこからか聴こえてくる子ども達の歌声
「ね~ムー○ン、こっち向いて♪」
そうだ、わしにもそういう時代はあったのだ。
なぁ、そこの若いの、今を享受せよ。いずれわしの様に静寂を友とする日が来るのだよ。
お前はわしとよく似ておる。そのアンバランスな体型。顔のでかさ。口の大きさ。そして
渋い色合い、全てが美なのだよ。じゃがのぅ人という種はブームに敏感さね、飽きると
早いぞ、覚悟せい。
ヒッポのオッサン、血の涙流してるんすか。
ふっ、これはのう、デリケートなわしら皮膚ゆえの汗よ。まぁ、汗も涙も同じじゃよ。わしは憂いておる。これまで散々、心折れ息絶えたモノ達を知っておるからの。
エリマキトカゲ、気の毒にな。知っておるか?ヤツらは人を喜ばせる為にダテに襟を立てているわけではないのだよ。
可哀想になぁ。ただの蜥蜴で在り続けることを拒まれた挙句、大量殺戮さ。
おっと、水にはいらにゃいかん。乾燥がお肌に悪いんでな。
ハシビロとやら、お前さん、いい面構えしとるのぅ。良いか、何があろうと、所詮は人の世じゃ。わしらの知った事ではない。
決して嘆くな、ハシビロとしての矜持を持て。
動かぬ鳥で良いのだ。いずれ僻地に追いやられるであろう。
良いではないか。一瞬の輝き、それはお前さんが感じるものじゃ。
人の嬌声に媚びるなかれ。
人とはいい加減なものじゃ。
ヒッポのおっさん。俺、吹っ切れました。
なんつーか、無表情に見えるらしいけど
それなりに気ぃ遣ってたんすよ。
カメラアングル、一応ね。
俺映しに来てるってさ、分かるとサービスする自分居るんだな。
たまに動かないとマズイかな、なんて頑張るしね。
ほら、あの紅い集団、眼つけてくるんす。
「まぁ、ハシっち、今日も運動不足~?塑像かと思っちゃったわん」
「ねぇ、動かないと私達みたいなしなやかなプロポーションになれないわよん」
フランとミンゴ登場・・
人ってレア商品に弱いのね。何、あの不細工な姿。髪くらい整えなさいよ。足、冷たっ!
細くてごめんなさ~い。
すたこらさっさ。。
出番以上。
ハシビロは思う。
そうだ、ヒッポ翁の言うとおりだ。いつか、忘れ去られる日が来る。「あの鳥は今」・・ってか?
ズボッ・・ヒッポポタムス水面に顔出す。
「良いか、大胆に己自身を信じるのじゃ。」
「小さい人間どもに近づくときには気をつけよ。のがれよ、わたしの友よ。君の孤独のなかへ」
うわ・・
ヒッポ翁・・俺、鳥っす。(友にされとる・・
種に拘るな、わしがお前を友と見込んだのだ。どうじゃ、一緒に水浴びせんかい。
ハシビロは観た・・
ヒッポの周囲を泳ぐ無数の魚類をーーー!
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