見出し画像

あなたのキス

三畳1間の小さな部屋
まるで昭和のあの歌みたい
わたしは貴方の足音を待っていた

貧しい暮らし
ご近所のパン屋さんが置いてる無料のパンの耳ー
早く行かなきゃあっという間に無くなるから早起きして並んだ

学生運動の末期、デモ、闘争、
あなたの黒いヘルメット
「今夜は帰れんかもしれん」と言って出たあなた
  拘束されて2日後の朝に戻ってきて「俺は無力だ!」と壁に頭ぶつけて
泣き叫んだあなた

あなたを背中から抱きしめたわたし
泣きじゃくるわたしに発したあなたの言葉
「お前は此処を出ろ」

「俺はまた捕まる、俺と居たらお前も危ない、家に帰ってろ」

「イヤ
離れない」

あなたはわたしを引き寄せ抱きしめて
わたしの唇を噛んだ
そしてむさぼるように長いキス

最後のキスをした

押し包むあなたの熱い唇
口の中でSexするような狂おしいあなたの舌の感触


あなたのキスを
幾つになっても覚えてる


野蛮で熱くて優しい最後のくちづけ