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小さな女



小さな女である

(カフカの短編の冒頭から
書き始める。)

小さな女である

特に身体が華奢なわけではない
心根が小さいのである

その小さな女は
不満と不平ばかり言う

赤の他人たるわたしを
縛りつけ泣き叫ぶ

遠ざかれば
不当な仕打ちの如く
恨み憤慨し
あれこれと罵るのだ


病んでいるのかと
その小さな女を庇おうと
したこともある

息を吐くように嘘を吐く女である

小さな女の防御本能かと思えば
そうでもない

小さな女は姑息、狡猾なのである

小さな女の憤懣を
片付けようとしたが
手に負えず
逃げだした


小さな女は創りあげた世界に
 陶酔し
虚飾の壁を強固にする

外に出ずに喚き騙る

相手にしないに限る

しかし
此方を覗いては
また叫ぶのだ

真っ赤なルージュを塗り
アイシテルと言った唇で

わたしを断罪せむと企み
微笑む

あのような
小さな女に出会ったのは
初めてである

まんまと手口に
罠に嵌まったのである


小さな女の
哄笑 が聴こえてくる

判断力の逞しさ
望む帰結への執拗さ

感嘆するには
やぶさかでは無いのだが


ねめつけるが如く
わたしを痛めつけなければ、
である

小さな女は視ているのだ
わたしの壊れゆくさまを