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幻夜
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蝶々は夜に飛ばないのですか、おかあさま
蛾と蝶々、どちらも美しいのに
どうしてヒトは蛾を殺すのですか、おとうさま
夜にはお行儀よく
家に居て
お手玉して遊ぶがよろしいの
お人形は怖いのです
もう一体たりとも要りません
目がじっとワタシを視ているでしょう
少し間をおけば、お人形が位置をずらしている気がするのです
無数の目、ワタシを追いかけて
何やら囁く声が聞こえそう
お外には月が出て、
出て無くても
外気が気持ちよく
生暖かい初夏の風の中
ふわりふわりと
蝶々が、飛んできて
ワタシの指に止まれば
いと嬉し
夜に太陽と月が一緒に視えれば
嗚呼 息とめて
恍惚の
幻の住人となれますのに