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雪解雨(ゆきげあめ)
春の息吹が雪解け雨と共に
静かに
陰鬱に
私の心を包み込む
窓の外は薄墨色の線模様
この雨音は私が愛する
一人の作家へと導く
彼は、この世の哀歓を
言葉というナイフで紡ぎ出し
突き付けた
「この雨音は、娼婦の性だ」
忘れ難き言葉_
娼婦の如き無垢なる女
乙女の如き邪まな計算高い女
一切合切 全てが
この雨に包まれた夜空のように
曖昧で捉えどころのない記憶に薄れゆく
私は彼の言葉を反芻しながら
自分自身を見つめる
鏡に映る私の顔は
どこか他人めいている
猫が戻ってきた
「おや、お帰り。お前は愛しいあの子に逢えたのかい?」
その瞳に映る自分の姿を見つめた
この雨音は
私の人生という物語の
最終章を告げる音色なのかもしれない
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