(95)厚生年金保険の特定適用事業所について その12
それでは少し細かな話になりますが、「特定適用事業所」と「特定適用事業所」ではない適用事業所に勤務する「特定四分の三未満短時間労働者」とどう関係するのか触れておきます。
「特定四分の三未満短時間労働者」は、当分の間は次のように取り扱われます。
☆☆☆☆☆資料122 ~ 被用者保険の短時間労働者への適用に関する経過措置/健康保険法平成24年改正法附則第46条、厚生年金保険法平成24年改正法附則第17条
①当分の間、特定四分の三未満短時間労働者については、[健康保険/厚生
年金保険]の被保険者としない。(第1項)
★★★★★資料122はここまで ~
ただし、「特定適用事業所」であった適用事業所が特定適用事業所の要件を満たさなくなった場合には、上記の122の①の取扱いは行いません。
☆☆☆☆☆資料123 ~ 被用者保険の短時間労働者への適用に関する経過措置/健康保険法平成24年改正法附則第46条、厚生年金保険法平成24年改正法附則第17条
①特定適用事業所に該当しなくなった適用事業所に使用される特定四分の三
未満短時間労働者については、前項(上記の資料122の①)は、適用し
ない。(第2項)
★★★★★資料123はここまで ~
つまり、「特定適用事業所」の要件を満たさなくなったとしても、そのまま「特定適用事業所」として存続することになります。
ただし、「四分の三以上同意対象者」の3/4以上を代表する者の同意を得たうえで、「特定適用事業所」をやめる申出を行った場合には、その適用事業所は「特定適用事業所」ではなくなることができます。なお、「四分の三以上同意対象者」というのは、厚生年金保険の被保険者及び70歳以上でその事業所に使用される者などをいいます。
この申出は、健康保険と厚生年金保険の両方同時に行う必要がありますし、この申出が受理された日の翌日に、被用者保険の被保険者資格を喪失します。
今回はここまでです。『日本の公的年金制度(適用関係編)について』を令和5年(2021年)4月から続けてきましたが、今回で終わりです。次回からは新シリーズ『年収の壁』について取り上げていく予定です。ただ国会などでは、この「年収の壁」を引き上げるまたは廃止の話も出ています。
「103万円の壁」の改正や「106万円の壁」の廃止は、(おそらくですが)早くても来年度以降だと言われていますので、「年収の壁」の数字の出所などを知っておいても無駄ではないかとも思いますので、次回から「年収の壁」を取りあげていくことにしました。
今日で終わったシリーズも何だか条文などで固い感じだったかと思いますが、次のシリーズではもう少し固い感じがしないように、かつ、正確にお伝えできればと思っています。
ついでながら申し上げてますが、お読みいただいたように「パッと読んでスッとわかるような」書き方ではないというのは承知しております。タイパや時短といわれる昨今にはそぐわないかもしれませんが、パッと読んだことはスッと忘れてしまう気もしますので、今の社会保険制度ではこうなっているのかということを少しでも理解していただけるように、次のシリーズもゆっくり&じっくりと話を進めていきます。ただ、ゆっくり話しているうちに法改正されてしまうかもしれませんが...。
よろしければ次回(1月19日予定)もお読みください。