(9)社会保障協定 その1
日本では「国民皆年金」となっていますので、日本の国籍の有無にかかわりなく、外国籍の方を含めて日本に居住している場合には、国民年金か厚生年金保険のいずれかに加入することになります。(強制加入)
しかし例外もあります。大きな例外として「社会保障協定」があります。この「社会保障協定」によって認められた方(要手続き)については、日本国内に居住していても日本の年金制度に加入する必要がなくなります。ここからはしばらくの間は、「社会保障協定」の話をします。
この社会保障協定とは何か、というところからお話ししていきます。社会保障協定を他国と結ぶ大きな目的としては、ひとつは「二重加入の問題」、それと「保険料の掛け捨ての問題(または「年金加入期間の通算の問題」)」があります。
☆☆☆☆☆資料8 ~ 社会保障協定/日本年金機構のホームページより
①社会保障協定とは何ですか?(社会保障協定を締結する背景・目的)
1)国際的な交流が活発化する中、企業から派遣されて海外で働くこと
や、将来を海外で生活される方が年々増加しています。
2)海外で働く場合は、働いている国の社会保障制度に加入をする必要が
ありますが、日本から海外に派遣された企業駐在員等については、日
本の社会保障制度との保険料と二重に負担しなければならない場合が
生じています。
3)日本や海外の年金を受け取るためには、一定の期間その国の年金に加
入しなければならない場合があるため、その国で負担した年金保険料
が年金受給につながらないことがあります。
②社会保障協定は、以上を踏まえ、以下2点を目的として締結しています。
1)「保険料の二重負担」を防止するために加入するべき制度を二国間で
調整する。(二重加入の防止)
2)年金受給資格を確保するために、両国の年金制度への加入期間を通算
することにより、年金受給のために必要とされる加入期間の要件を満
たしやすくする。(年金加入期間の通算)
★★★★★資料8はここまで ~
例えば、日本から海外支社などに海外赴任した場合、日本の厚生年金保険に加入したままで、その赴任先の現地の国(以下、「相手国」)の公的年金制度にも加入しなければならないケースがありました。(「二重加入の問題」)
しかし、海外での公的年金制度の加入は、その相手国の老齢年金を受け取るのに最低必要な期間を満たすことができればいいのですが、多くの場合にはその必要な期間を満たすことがができずに日本に帰国することがあります。そうすると、相手国での年金制度の保険料が掛け捨てになるケースがほとんどでした。(「保険料の掛け捨ての問題」または「年金制度の加入期間の通算の問題」)
そこで結ばれるのが社会保障協定です。なお、社会保障協定は国際条約でなく国ごとの条約によりますので、社会保障協定の内容はそれぞれの協定によって異なっています。協定によっては年金制度の加入期間の通算の取り決めのない社会保障協定もあります。
ちなみに、日本の公的年金制度の場合の「老齢年金を受け取るのに最低必要な期間」は、は平成29年(2017年)7月までは25年(300月)以上必要でしたが、年金法の改正により平成29年(2017年)8月からは10年(120月)以上に変更になっています。
今回はここまでです。よろしければ次回(6月4日予定)もお読みください。
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