投資家たちの“仕手株”歓迎ムードの裏に潜むリスクとは?
「さぞや、オイシイ話がたくさんあるでしょう」。筆者が証券業界の周辺に身を置く者であることを知った方から、このような羨望まじりの声を頂戴して閉口することがある。
どの業界にも大概、外部の人間にはうかがい知れない“業界常識”があり、それを知っておくことはそこで成功するための生命線になることは確かだ。とはいえ、証券業界に「儲け話がゴロゴロしている」と考えるのは間違いである。そうならば証券マンはすべて大資産を築き、大豪邸を構えていなければならないが、そんなことはまったくない。
中には、幸運にして「オイシイ話」を得た人がいるかもしれない。しかし、「ちょろい仕事は、たちまちトレーダーを駄目にする」(『相場のこころ』東洋経済新報社・ロイ・W・シュナイダー著)ということを心得たい。自分に考えがなく、他人の考えだけに頼って投資している限り、儲けは長続きしないし、精神が怠惰になるだけである。
大物仕手筋のサイトが再開
さて、話題は最近の仕手系銘柄人気についてだ。かつて「兼松日産農林やルックなどの大きな相場を演出した」とされる大物仕手筋・K氏。この人が運営するとされるサイトが11月初めに6年ぶりに更新され、それを号砲に「いくつかの銘柄に買い出動したのではないか」と市場で注目されている。
中核銘柄とされるのが新日本理化
株価は11月初めから3倍以上も上昇。確かに業績好調とはいえ、ここまで急騰するほどの材料は見当らず、「K氏介入」という思惑が“最大の材料”といった状況だ。
欧州債務問題など、目下の相場を取り巻く状況は厳しい。そんな地合い下では、こうした仕手系株、材料株に人気が向きやすい。相場は弱気と強気が先鋭化しやすく、“相場の華”といった感覚で市場も歓迎ムードの様相である。
しかし、株価の帰趨はあくまでも筋の手振りひとつ。他人がうかがい知れない領域にあることを見逃してはいけない。いわば「他人の手振りに乗っているだけ」という危うさがある。
K氏ファンや仕手株好きの人にとっては釈迦に説法かもしれないが、こうした仕手株への参戦は自分で銘柄を探して分析し、売買のタイミングを研究するという株式投資の本来の楽しみから隔絶した世界、と言って過言ではない。もちろん、それを承知で乗るのは投資家の自由ではある。
さて、K氏関連株といわれる一連の銘柄群(図参照)。11月からの動きを見ると、周辺銘柄は時折、一斉高するだけ。循環相場ではなく、雁行相場でもなく、中心はあくまでも新日本理化の一本立ち相場であることが分かる。効率を狙うなら中核に絞るのが定石だが、ここから乗れるかとなると、すでに恐怖感すら漂う水準にあるのではないだろうか。