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第2話 その日    1741文字       


🌻 前回までのあらすじ 🌻   


 腎臓に腫瘤あり、要精密検査。…特に症状があったわけでもなく、たまたま受けた人生初の人間ドックでその日のうちに結果を聞く。動揺と不安が押し寄せるなか、すぐに大学病院で再検査の日取りを決めることに。第2話では、再検査を受けた時の心の揺れについて迫る(1572文字)。


           

                             

亡き父が命を削って遺してくれたメッセージ。
代償はあまりにも大きかったのですが、父から学んだ教訓のおかげで私は現在も生きています。

・人間ドックでシコリが発見されたこと
・発見された時期やシコリの種類
・病院の選別
・すぐに精密検査を受けたこと



これらの事実は後に大きな意味を持つことになりますが、運について語る上では序章にすぎません。
境遇や生死を左右するほどの出来事に遭遇した時に発揮されるチカラ……。
私はいつの頃からか、「運」の存在を信じるようになりました。
また、存在だけでなく、どんな形で現れたのかについて振り返ってみると、輪をかけて凄みを感じるのです。



私は精密検査を受けるために、大学病院を受診しました。
はじめに内科を案内されたのですが、なぜか外科へ回されたのです。
『どうして外科に?  体の中で何が起きているのだろう……』
モヤモヤとした気持ちに駆られながらも、その日は無事に検査を終えました。
けれども、数日後に判明する結果を前に、頭の中では早くもカウントダウンが始まっていたのです。


「腎臓」、「腫瘤」という検索ワードを入力しては、ネットサーフィンを繰り返していたのを覚えています。
おそらく、気になって仕方なかったのだと思います。


ネットには、良くも悪くも様々な情報が入り乱れています。
私はその都度敏感に反応しながら、それでも自分を安心させる何かを得たいがために、パソコンの画面を見続けていました。



忘れもしないその日。
私は検査結果を聞くために、ひとりで外来へ向かいました。
大学病院ともなると人であふれかえっていそうな気がしたものの、午後の遅い時間帯だったせいか、辺りは妙に静まり返っていました。

私は順番を待つために、診察室の前にあった椅子に座っていたのですが、どうにも気持ちが落ち着かず、不安と緊張感から体が力んでいたのです。



壁一枚隔てた先に先生がいます。
私はふと、思いました。
『どんな未来が私を待っているのだろう……』


もし、7年前の自分にメッセージを送ることができるのなら、私は手紙を贈りたいです。



私へ

あなたの身にこれから試練が訪れます。
初めて経験する青天の霹靂とも思える出来事に、この先あなたの心はかき乱され、もがき苦しむことになるかもしれません。

痛みを経験したおかげで、あなたは舵を切るのです。
何とかして自分を立て直そうと思ったあなたは、ある人物に会うことを決めます。
その選択肢に間違いありません。
なぜなら、あなたにとって必要な出会いが待っているからです。


あなたはいつの頃からか、『逃げ癖があり、現実逃避を繰り返しながら生きてきた』と考えるようになりました。



病巣が見つかったことで葛藤が始まります。
『現実から逃れるための言い訳ができたのだから、もう難しいことに挑戦しなくてもいい』と。
一方、『ここまでたどりつくのに10年以上もかかったのに、このまま諦めてしまってもいいの?』と。
あきらめることで一時は楽になるけれど、逃げた自分はこれからもずっとついて回る……。





今のあなたには想像し難いことだと思うけれど、試練を経験したことで、3つの財産を手にします。
ひとつはあなたが今あきらめかけている「その夢」。
夢が目標に変わり、ついに実現するのです。


信じられないでしょう?
今のあなたは無理だと思い込んでいるのだから……。




3つの財産とは、自分との闘いに勝った戦利品なのです。
7年後の未来を生きるあなたは幸せを感じています。
もちろん、現実的な課題はいくつかあるけれど、自分の歩幅で次のステージに向かって歩んでいます。


全てはあなたが成長したことによって、心の引き出しが増えたおかげ。
未来の私はあなたのおかげで、自分に誇りをもつことができました。

あなたがこれから経験することは、全てに意味があるのです。


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七転び八起子👩
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