【研究 vol.2】【論文読解】発達性ディスレクシア、その評価・診断基準と言語域による特徴の違い
宇野彰,春原則子,金子真人,粟屋徳子,狐塚順子,後藤多可志.「発達性ディスレクシア(発達性読み書き障害)の背景となる認知障害ー年齢対応対照群との比較ー」.高次脳機能研究.2018,第38巻第3号,267-271頁ja (jst.go.jp)
この論文についてまとめていくぜ。
〇はじめに
・発達性ディスレクシア(deveropment dyslexia)ーdislexia部分を直訳すると「読みの障害」になるが、読めなければ書けないので「発達性読み書き障害」と訳される。
・この場合は後天的な大脳欠損による「失読(alexia)」とは異なる。
・「読み」とは「読解」ではなく、文字や文字列から音や音韻列への変換過程(decoding)である
・「書き」とは逆の過程(encoding)ー音から文字や文字列への変換である。
・これら読み書きスキルは正確性と流暢性により評価される。
正確性・・・正答数、正答率
流暢性・・・音読潜時、音読所要時間。
・国際ディスレクシア協会(International Dyslexia Association)の定義(Lyon ら 2003)において、音韻障害が原因となる、と記載されている
・他にも二重障害仮説、聴覚認知障害による音韻表象の認識の困難など説は多数存在する。
・本報告においては日本語と他の言語圏との文字言語構造の違いが認知能力の種類や貢献度に影響がある可能性をもとに、ひらがな(カタカナ)と漢字の音読と書字に影響のある認知能力と発達性ディスレクシア児の下位分類から日本語話者の文字習得に関わる認知能力とその障害について報告する、とのことです。
〇考察
・英語圏・・・音韻能力に加えて自動化能力も想定されているのが近年の傾向。また、不規則語においては語彙力が大きく影響を与えている。
・中国語・・・視覚認知能力の影響が音韻能力よりも影響が大きいことが報告されている。
・また文字列から音韻列への変換の規則性が高い文字言語では音韻能力の関与が学年が上が
るにつれ低くなることが報告されている。
・発達性ディスレクシアの背景となる認知障害は文字言語の構造に影響され、この文字言語の体系の違いがトレーニング方法にも影響することが予想される。日本語独自のトレーニング方法が開発されていることにつながる結果と思われる。
珍しく短い投稿ですが、次は境界知能についての論文読解と今後の展望についてまとめようかと。
引き続きよろしくお願いします!