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喫煙大国インドネシア
こんにちは。
今日のテーマは、インドネシアの喫煙についてです。
インドネシアは喫煙大国と言っても過言ではないくらい、喫煙が浸透しています。
今回はインドネシアで喫煙率が高い理由を以下にまとめました。
①緩やかな規制と低価格
②文化的・社会的な受容性
③たばこ産業の強い影響力
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①緩やかな規制と低価格
インドネシアでは、たばこに関する規制が比較的緩やかです。例えば、喫煙の年齢制限に関する法令がなく、若年層でも容易にたばこを入手できます。また、たばこの価格が非常に安いことも大きな要因です。1箱200〜300円程度で、さらに1本単位での販売も一般的です。これにより、経済的な負担が少なく、喫煙を始めやすい環境が整っています。結果として、13〜15歳の子供の喫煙率が19%に達しており、これは世界平均の7%を大きく上回っています。また、成人男性の喫煙率は約70%と非常に高く、世界保健機関(WHO)の調査によると、15歳以上の男性の喫煙率は世界最高レベルです。公共の場での喫煙規制も限定的で、多くのレストランやカフェ、オフィスビルでも喫煙が許可されています。一部の地方自治体が独自の喫煙規制を設けていますが、全国的な法整備は進んでいません。例えば、ジャカルタ特別州では2005年に公共の場での喫煙を禁止する条例が施行されましたが、執行力が弱く、効果は限定的です。たばこ税も他国と比べて低く設定されており、2020年時点でたばこ1本あたりの税金は約0.1ドルで、WHOが推奨する水準(小売価格の70%以上)を大きく下回っています。このような規制の緩さと低価格が、喫煙率の高さに直接的に影響しています。
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②文化的・社会的な受容性
インドネシアでは、喫煙が社会的に広く受け入れられています。特に男性の喫煙率が高く、70%を超えるとも言われています。これは、喫煙が男性性や社交の象徴として捉えられていることが一因です。また、家庭や公共の場での喫煙に対する規制も緩く、子供たちの4分の3がたばこの広告を目にし、約3分の2が受動喫煙にさらされているという調査結果もあります。このような環境が、喫煙を日常的な行為として 浸透させていると言われています。文化的には、クレテック(丁子入りたばこ)が伝統的な喫煙形態として根付いており、これが喫煙の文化的受容性を高めています。クレテックは19世紀末にジャワ島で生まれ、現在でもインドネシアのたばこ市場の約30%を占めています。さらに、喫煙が社交の一部として重要な役割を果たしています。ビジネスの場や友人との集まりでたばこを勧められることも多く、断ることが失礼にあたると考える人も少なくありません。教育面でも、喫煙の健康被害に関する啓発活動が不十分です。学校での禁煙教育はまだ体系的に行われておらず、多くの若者が喫煙のリスクを十分に理解しないまま喫煙を始めています。このような文化的・社会的な受容性が、高い喫煙率の維持に大きく寄与しています。
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③たばこ産業の強い影響力
インドネシアは、たばこ産業が経済に大きな影響力を持っています。たばこ農場での雇用や、たばこ関連の税収が重要な経済的要素となっているため、規制強化に対する抵抗が強いです。例えば、インドネシアは「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)」に署名していない数少ない国の一つです。これにより、たばこ広告の規制や公共の場での喫煙制限などの国際的な基準が適用されていません。たばこ産業は、インドネシアの労働市場で重要な位置を占めています。直接・間接的に約600万人の雇用を創出しており、特に農村部での雇用に大きく貢献しています。また、たばこ税は政府の重要な収入源となっており、2019年の税収全体の約10%を占めました。たばこ会社は、スポーツイベントや音楽フェスティバルなどの文化行事に多額のスポンサーシップを提供しています。例えば、大手たばこ会社は国内最大のロックフェスティバルのメインスポンサーを務めており、若者を中心に強い影響力を持っています。政治的にも、たばこ産業は強いロビー活動を行っています。たばこ規制法案の審議が何度も延期されるなど、法整備の遅れにたばこ産業の影響力が指摘されています。
結果として、2021年の喫煙者数は1億1,200万人に達し、2030年には1億2,300万人に増加すると予測されています。これは総人口の40.9%から43.2%への上昇を意味し、多くの国で喫煙者が減少傾向にある中、インドネシアでは逆に増加する珍しい事例となっています。
以上です。それでは皆さん良い一日を。