母と娘と
「結婚はしてもしなくても良いのよ」
なんて話題になったのだ。
母と買い物に出かけた帰り道。
西陽が柔らかく差し込み、フロントガラスが眩しい。
「結婚しなくても兄弟と楽しく旅行したり友達と遊んだり、ぜんぜん良いんだよ」
「そうだね、それが全てじゃあないよね」
「でも、独身と比べて良かったなぁって思えることは
買い物の時に荷物を持ってくれることかな」
「あ、そうなの?」
「なんだかんだ鬱陶しいって思うことも多いけど、重いもの買った時に持ってくれるでしょ」
「まぁ、一緒に行ってたらね、確かにね」
「そこが男手があってありがたいなって思う」
その話を聞いて、どうして両親が仲良く長続きしているかわかった気がした。
もっと優しくして欲しいとか愛されたいとか、あれもこれもやってくれないとか。
期待とか希望とか不満をたくさん持つことじゃなくて。
そんな些細なことひとつ。
日常のちいさなことひとつ。
そこのありがたさをもつだけで、家族であり続けられるのだろうと思った。
それでいうと私には、結婚するとしたらどんな人が良いかという理想があってという話をした。
「私の理想はね、よく食べる人」
「いっぱい食べるのいいね、好き嫌いなくね」
「そう、あと手が湿っている人」
「どういうこと?」
生きていく中でいちばんに幸せを感じる食を楽しむこと。
スーパーや家でビニール袋をさっと開けてくれれること。
たったその2点だけが、私が諦めずにいたいと思う理想なのだ。
確かに、それは大事だよねと親友みたいに話せる娘が私にもいたらとも思った。
これは正真正銘、2023年9月の出来事だ。
いつか私の理想が現実になる日がくるのではと思って残しておこうと思う。
今、この手を繋いでいたいと思っていて。
この気持ちを書き残したいと思う日がきて。
それまでは、どうかその後も。
そんなふうに明日も想っているのだ。