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魚の夢

 大嵐が過ぎ去った後の、静寂に包まれた海の中。海底で一匹のヒラメと一匹のカレイが、偶然にも同じ岩陰で避難していることに気づいた。彼らは、自分たちが互いにとても似ていることに驚いた。

「君、僕と顏がそっくりだね!」
 カレイはヒラメに向かって言った。

「そうだね、でも僕の方が少しスタイリッシュかも」
 ヒラメは応えた。

「でも左の目が上で、ちょっと寄り目だね」
 カレイはヒラメの目が片方上にあることを、ヒラメはカレイの平たい体を笑った。

 ヒラメは半分だけ怒って、
「君こそ、世界を逆さまに見ているようだね」

「ああ、世界をより多く見るためだよ」
 カレイの方も半分だけ怒った。

「僕の目は、ただちょっと左右非対称に並んでいて、世界はもっと面白く見えるよ」
 ヒラメは笑った。

「ああ、だから君はいつも迷子になるんだ。美しいものはシンプルな中にあると思うよ」
 カレイはクスッと笑いながら返した。

「でも僕の泳ぎはスマートだよ。君みたいにグルグル回ってばかりいないからね」
 ヒラメは不機嫌そうに言い返した。

「グルグル回るのは、六つの故郷を見るためだよ。君はいつも同じ景色で飽きないの?」
 カレイはやんわり返した。

 広大な海原は殺風景で、ハナギンチャクが海流に身を任せ、優雅に揺れ動いている。

「薄っぺらい言い回しは好きじゃないな」
 ヒラメは大きく口を開いた。

「平たい顔してよく言うよー」
 カレイは口をすぼめた。

 擬態していた泥色のカニが、横歩きに逃げ去るのを見やって、ヒラメは重い口を開いた。
「ひらめいた! ぼくたちは個々に進化した。それは偶然であって必然だ。二つの体が合わさることで本来の姿を取り戻すのさ。それは気まぐれだけど、巡り合わせなんだよ」

 一つの貝が口をひらけ、二人は笑った。カレイとヒラメは口を揃え、

「合体だ」

 海底に不思議な光が満ちて、二人は互いを見つめ合いながら声を合わせた。
 二つの身体が一つに融合し、四つの目が二つに、泳ぎ、踊り、回転し、尾びれも口も頭も一つに統合され、感情も考え方も一つになり、分裂した二つの個体が完全な一つになった瞬間、彼らは遠く離れた離島に姿を変えた。
 後に、政府はその島に白旗を打ち立てた。

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