次期政権の経済政策
ドル高の光と影
2025年、世界経済はまたもや激震の兆しを見せています。トランプ氏の次期政権が発足し、その経済政策が市場を翻弄する日々が続きそうです。米国経済の強さと政策によるドル高進行は、果たして世界にとって「祝福」か、それとも「呪い」か。この問いに向き合うことが今、私たちに求められています。
ドル高の進行:アメリカ独走の明と暗
まず注目すべきは、ドルの急速な価値上昇です。米国経済が堅調であること、高金利政策が維持されていること、そしてトランプ次期政権の保護主義的政策が、ドルの需要を支えています。一見すれば、「アメリカ経済の強さ」が世界をけん引しているように映ります。
しかし、「強さ」の裏に潜む不安を見逃してはいけません。例えば、ドル高はアメリカからの輸出を割高にし、新興国におけるドル建て債務の負担を増加させます。その結果、経済のバランスが崩れ、世界市場に不安定さをもたらす可能性があります。ドル高が一国の利益のためのツールに過ぎないと認識されれば、それは国際通貨としてのドルの信頼性にも影響を与えかねません。
トランプ氏の「威嚇外交」がもたらす地政学リスク
トランプ氏の外交スタイルもまた、見逃せない要因です。「威嚇外交」という言葉が象徴するように、トランプ政権の強硬な姿勢は一部の国々を警戒させ、経済的な分断を加速させています。
例えば、トランプ氏が貿易交渉で関税引き上げをちらつかせるたびに、相手国の市場は混乱をきたし、供給網が揺さぶられる事態が続発しています。こうした環境下で、一部の国がドル依存を見直し、人民元や金といった代替資産へのシフトを進める動きが加速しているのです。
人民元と金へのシフト:ポスト・ドル時代の始まりか?
中国は人民元の国際化を着実に進めています。貿易決済や投資契約の人民元建て比率が上昇し、中国主導の多国間協定がドル離れを後押ししています。また、ロシアや中東諸国が金準備を増やしていることは、ドルのボラティリティ(価格変動)に対する懸念が根強いことを示しています。
これらの動きは、一見するとドルに対する挑戦とも受け取れます。しかし、本質的には「経済の多極化」への自然な移行であり、アメリカ一極集中のリスクを軽減する側面もあります。
結論:不安定さの中に潜む可能性
トランプ次期政権がもたらすドル高は、短期的には米国経済を強力に支える武器となるでしょう。しかし、その影響は必ずしもポジティブなものだけではありません。対立的な外交姿勢や世界経済の分断リスクが、長期的にはドルの地位を揺るがし、新たな経済秩序の誕生を促進する可能性があるのです。
未来の世界経済は、不安定さと多極化の狭間に立っています。この状況は危機であると同時に、新たなチャンスを生み出す契機でもあります。だからこそ、目先の利益に目を奪われることなく、長期的な視点で世界の動きを見極めることが必要です。
怜音 カルロス