「ルパン三世」の石川五右ェ門は、なぜ「五右衛門」と表記しないのか?
長寿大人気アニメ「ルパン三世」に出てくるレギュラー・キャラクターである石川五右ェ門。
歌舞伎でもお馴染みのキャラクターで、歌舞伎では普通は「石川五右衛門」と表記する。
しかしモンキー・パンチ原作の漫画でも「石川五右ェ門」となっている。
アニメ版ルパン三世の歴史を調べると、一番最初のパイロット・フィルムからTVアニメ第1シリーズ、劇場版の「ルパンVS複製人間」「カリオストロの城」では「石川五ヱ門」あるいは「石川五右ヱ門」と表記されていて、普通のカタカナの「エ」を使っていない。
TVアニメ第1シリーズのエンディング
「ヱ」は字は衛の略字として使われていて、江戸時代の歌舞伎でも使われていた。
1930年上映のモノクロの日本映画「石川五右ヱ門の法事」(斎藤寅次郎監督)でも、この「ヱ」が使われている。
「ヱ」をカタカナとして使っている例はいろいろあるけれど、最近では『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』がある。
それでは何故モンキー・パンチは「五右ヱ門」と表記せずに「五右ェ門」と表記したのか?
私の推理では、モンキー・パンチが「ヱ」が「衛」の略字だと知らなかったので、カタカナのエと勘違いした。
しかし「衛門」を「ヱ門」ではなく、「エ門」と書く習慣は昔からある。
だからモンキー・パンチの「五右ェ門」の表記の使い方は間違いではなく、正しい使い方である。
それなら、パイロット版なども「石川五右ェ門」で統一すれば良かった気がする。
でも作成スタッフに「ヱ」は「衛」の略字という知識があったから、「エ」を「ヱ」に変更したんだと思う。
ところでモンキー・パンチは「石川五右ヱ門」という表記をどこで見たのか?
モンキー・パンチは市川雷蔵演じる映画「忍びの者」の影響を受けたそうである。
当時のポスターを見ると、「五右ヱ門」と表記されている。
だから、そこから来たんだと思う。
ところでモンキー・パンチの初期の漫画には白土三平の影響で、忍者&剣豪漫画がある。
だから時代劇の要素を入れるのは得意だったんだと思う。
ちなみにルパン三世の作成にパイロット・フィルムから関わっている大塚康生は、「ルパン三世」のキャラクターでは石川五ェ門が一番好きだとインタビューで答えている。
< 表記の変化のまとめ >
原作漫画 五右ェ門
パイロット・フィルム 五右ヱ門
TVアニメ第1シリーズ 五ヱ門(第5話のタイトルとエンデイング)
TVアニメ第1シリーズ 五右ヱ門(オープニング」
ルパンVS複製人間 五右ヱ門(ヱは小文字)
カリオストロの城 五ヱ門
TVアニメ第2シリーズ以降 五右ェ門 あるいは 五ェ門
追記
「峰不二子という女」では「五ヱ門」と表記されていた(エンドロールでは五ェ門)