デッドオアライト 24
「どうされましたか・・・?」
しばらく無言で考え込んでいた久代を心配した白木が声をかけた。
久代は我に帰って白木と三島哲也の方を見る。
2人とも心配そうに顔色を伺っている。
「あの、答えにくいことだったら別に答えなくても大丈夫ですから。久代さんにも何か事情があってのことだったんでしょうし」
「いえ・・・少し考えごとをしてしまっただけです。白木さんのご指摘通り、僕は奴らに今後一切、誰も殺さないように釘を刺すことはできました。しかし、それはあえてしなかったんです」
「どうしてです?」
「全てを知って、自分が奴らの企みを食い止められると気づいたその瞬間・・・ともすれば自分が人の命を左右できる立場にあることに気がついたんです。それはとても怖いことです」
「怖いこと・・・」
三島哲也が繰り返すように呟いた。
疑問符が付いていないので、久代に問うているというよりは、それについて考えているような口調だった。
三島哲也がその言葉を咀嚼している様子を見て久代が続ける。
「仮に僕があの組織が権力者達を殺すことを食い止めたとします。それで殺されるはずの権力者達が命拾いをした。めでたしめでたし・・・物語がそれで終わるのであれば、僕は正義ということになるでしょう」
「あなたは間違いなく正義の味方です」
「ただ現実はそうもいかない。その権力者達が野放しになることで、失われる命もあるんです」
「どういうことです?」
「奴らが殺していた権力者達は、罪なき一般人達を死に追いやっていました」
「どうして・・・」
白木の問いに久代は首を振った。
「そこまでは調べてません。ですがだいたい見当は付きます。権力者が人を殺すんですから、だいたいは目障りな人間の始末か保身の為か・・・」
「そんな理由で人を殺すなんて・・・」
続きは三島哲也が引き取って言った。
「だから、奴らの計画を止めるようなことはしなかったというわけですか・・・奴らのことを放っておいても殺される人がいるし、奴らの計画を阻止しても殺される人がいる・・・だとすれば、見て見ぬふりをして、やり過ごしてしまう方が賢明だ、と?」
「ちょっと三島さん、そんな言い方ないですよ。久代さんだって色々考えてーーーーー」
久代は白木がフォローするのを右手を出して制した。
「いいえ・・・三島さんの言う通りですよ。僕はただ目の前の事象を見て見ぬふりをしてやり過ごしたに過ぎません。お2人を助けたのだって、その罪滅ぼしに過ぎないのです。決して正義の味方ではない」
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