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デッドオアライト 22

「奴らの手口は三島さんの言った通りです。そして、僕はこの事実を知った時、奴らの行動を止めることがいかに難しいかを理解しました」
「え・・・?久代さんは記者なんですから確かな情報を集めて発表したらいいんじゃないですか?」

白木の指摘に久代は首を振った。

「もちろんそれも考えましたが、どうも気が咎めましてね。第一、そんな情報、週刊誌が発表したとして、信じる人がどれぐらいいるのかわかりません。それに真偽を確かめようにも、亡くなった権力者の血液等の情報をすり替えられていたら元も子もありませんからね」

久代の言葉に白木は大きく溜息をついた。

「結局、奴らには何にも敵わないってわけですか」

天を見上げた白木の肩を三島哲也が軽く叩いて言った。

「1つだけ、なんとかなったことがあるじゃないですか」
「・・・1つだけ?」
「久代さんは私と白木さんを救ってくれたじゃないですか」

白木ははっとして久代の方を見た。
久代は「救ったなんて大げさな」と首を振った。

「ただ知り合いに危害が及ぶのだけは避けたかっただけです。お二人が不幸な目に遭っているなんて寝覚めが悪いですからね」

久代の言葉にどう返していいものか、白木は考えていた。
感謝の言葉を述べるべきなのか、それとも・・・。
それに対して、久代の隣に座った三島哲也は別のことを考えていた。
三島哲也は考えがうまくまとまらなかったが、言葉にしてみることにした。

「久代さんは・・・奴らと取引をしたということですよね?」
「そうなりますね」
「それじゃあ、やっぱり、久代さんの持っている情報をすべて開示することは奴らにとって致命的なことだったんじゃないですか?」
「・・・さすが三島さん。よくお気づきになられました。確かに僕が掴んだ情報はさっきお伝えしたものよりももっとやばいものがあります。奴らの組織の中枢に関わる人物のリストやその連絡系統、資金源などなど・・・ありとあらゆる情報を掴みました」
「・・・いったい、どうやってそんなものを・・・」

久代は意味深に微笑んで、「週刊誌の記者の取材力、舐めないでくださいよ」と言った。
もちろん、久代は真っ当な方法でこの情報を手に入れたのではなく、ハッキングによって得た情報である。
三島哲也は、久代が良からぬ手段で情報を仕入れていることに薄々気づき始めていた。
しかし、それは追及するまいと頭を振った。
どんな方法で情報を手に入れたにせよ、そのおかげであの精神病院から抜け出すことができたのだから。

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