魔法はあると思っている

ハリー・ポッターを翻訳し、日本語版を出版した松岡佑子さん(出版社「静山社」の前社長)のお話を聞いてきたのでレポートを書きます。

ハリーポッターの翻訳家、松岡佑子<静山社前社長>の経歴書 | WorkaHolic[ワーカホリック]|キャリア×転職×仕事ブログ (story-is-king.com)

翻訳についてネットで多くの指摘があることは知っていたので技術のほどはよくわかりませんが(私はJ.K.ローリングの原著を読んでいません)、まだ日本では無名だったハリー・ポッターを小さな出版社から売り出し、大ヒットさせたことはたいへん尊敬しています。

私が小学生の時に賢者の石の映画が公開され、面白くて、次のクリスマスプレゼントに秘密の部屋の日本語訳版の小説を買ってもらいました。
アズカバンの囚人は最後のどんでん返しが面白くて何度も読んだ記憶があります。
小学校の「小説の絵を描く」という課題では、の炎のゴブレットの絵を描きました。

まずエピソードが世界的なのがやっぱり違うなと思いました。

J.K.ローリングは本来は赤髪で、貧乏だったころにお会いした時は本来の色だったが公的な写真としては許可されていないのでお見せできない。ハリポタ成功後の金髪に染めた写真なら公的な写真としているのでこちらをお見せする、とか。(J.K.ローリングは生活保護を受けながら賢者の石を書いた)

翻訳者同士の会議を開いたことがあり、その中の一人が現在の松岡さんのご主人だとか。

J.K.ローリングは出版前に内容も題名も教えてくれなかったので、英字版が発売されたから急いで翻訳しなければならず大変だった。
翻訳も、たとえば「謎のプリンス」の原題は「the Half-Blood Prince」だが直訳して「混血」とすると差別用語で使えないし「王子」とすると実際には王子は出ていないから「謎のプリンス」とした、とか。(謎=ミステリアスという訳でいいかということもJ.K.ローリングに許可をとったそうです)

日本では「兄弟」「姉妹」はどちらが兄姉なのか弟妹なのか気にするが、海外だと重要視されずbrother、sister表記なので確認する必要があったし(例:ハリーはハーマイオニーをsisterと思っているようだが姉か妹か)、確認したはずだったのにJ.K.ローリングが続編執筆時違うように書いてしまっていたから濁して表現した、とか。

小さな出版社だったので、当然翻訳のエリートチームがいるわけでもなく、本職は通訳の松岡さんと知り合い数名で翻訳チームを組んでやっていたそうです。

翻訳についてネットで多くの指摘がある点についてもトークショーの中で触れ、「指摘のうち納得したことは文庫化の際修正したが、『日本語に訳して出版したことにたいへん価値があるのであって、重箱の隅をつつくのは誰でもできる』と言ってもらえたのでやって良かったと思った」とのことでした。
これは気を付けなければなと私も思いまして、私は性格が悪いので油断すると人の仕事にケチをつけるような考えをしてしまうのですが、そうではなくまずその人がなした事をまず考えて、そのうえで評価していこうと思います。

さて、松岡さんは、魔法はあると思っている、とのことでした。
ただし、ハリポタの世界ではなく、情熱を注ぐ人の内にある、適切な努力をした人に魔法がかかる(要約)と。

私もそんな風に心の底から思えるような人生にしたいと思いました。

そんなトークショーを、街コンで連絡先交換した人と半年ぶりに会って一緒に聞いた土曜日でした。

終わり。

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