風の香りのせいにして
季節の変わり目は、身体も心も不安定になりがちで、なんとなく、後ろに引っ張られているような感覚になる。いつかの頃のように悪いほうへと引きずられていってしまうようで、不安になる。
ぼくが自力で見つけた結論が、誰かの“善意”によって踏み潰されたり。ぼくの信じたいものを、他人の“気遣い”が否定したり。
彼らに悪意はないのでしょう。…かえって質が悪いとも思いますけれど。
ぼくだって、他人を悪く言いたくはありません。できるだけ、平和に、穏便に済ませたいと思っている。けれど、そう上手くもいかなくて。
そうなれば、いつまでも黙っているわけにはいきません。だからといって、傷つくのも、傷つけるのも嫌ですから。揉め事が起こるより先に、立ち去るくらいは許されましょう。
他人の言葉は、本当に善意なのかもしれない。ぼくに見えないだけで、正解なのかもしれない。それに従ったほうが、ぼくは楽になれるのかもしれない。
でも、どうしようもないくらいに、気持ち悪くて苦しいんです。
知識も、考えも、能力も。何もかもが、まるで奪われていくようで。お前は何も持たないのだよ、と言われているようで。
…それが、気持ち悪くて仕方ない。
そんな場所に居続けたら、あの時のようにどうしようもない沼に沈んで、抜けられなくなってしまいそうで怖い。
這い上がる気力すら吸われて。
お前にそんな力などない、と言いくるめられて。
変えるなんておこがましいことだ、と言われて。
…何も持たないまま、ここにいるほかないのだ、と。
そう、思わされる。
そんなの、もう嫌なんですよ。
大層なことなんてできないのは分かっています。そんなことを言うつもりはありません。
それでも、使う言葉の意味くらい周りの人と同じではないのですか。ぼくの言葉だけ通じないなんて、そんなこと…。
ぼくが気がついていないだけ、認められていないだけ、なのでしょうか。
…だからと言って、愚痴ばかりを言うのは嫌ですから。せめて、これからの決意に変えたい。
不安や寂しさ、そのすべてを、風の運ぶ香りのせいにして。
ぼくは自分のために、前を向かなければ。
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