〈山陽・北陸乗車記2022年冬with青春18きっぷ+α(その38)〉
「金沢駅→福井駅:
北陸本線 普通列車(521系)」
ここまでご覧いただきありがとうございます。
今回から最終回までは、
この鉄旅の復路(金沢→博多)になります。
どうぞ、これからも気長にご覧くださいませ。
ここ金沢駅ですが、北陸新幹線、北陸本線、IRいしかわ鉄道線のほかに、もうひと路線乗り入れています。それは北陸鉄道浅野川線です。
北陸鉄道(北鉄)は石川県を拠点とした地方中小私鉄のひとつです。北鉄は石川県を中心としたグループ企業であり、金沢市街地訪問の際に利用した激混みの周遊バスも、この北鉄傘下の北鉄バスが運行していたりもします。近年までは関東の大手私鉄の中古車を末長く大切に使っていたことで、関東の私鉄ファンの方からは周知されているかもしれません。そんな北鉄ですが、昨今、新型車(という名の中古車)を導入し旧型車を置き換えたことで知られています。
私が乗る列車まで暫し時間があったので、北鉄の北鉄金沢駅を改札外から眺めてみました。
駅に自動改札なんてもんはありません。有人改札です。また、自動券売機を一昔前の大手私鉄などで見られたLED式のレトロなものとなっています。
そして、北鉄金沢駅で留置されているのは元営団地下鉄(東京メトロ)日比谷線03系です。個人的に03系は日比谷線時代にこれでもかってほどに乗り回した車両でもあるので、第二の余生を北陸の地で過ごす03系を見つけて、どこか懐かしくもなったものです。あまり深くは触れませんが、車体全面のVマークが残っているのがまたどこか懐かしさを感じさせてくれます。
とはいえこの03系、第二の余生をここ金沢のほかに、長野と熊本でも過ごしており、西鉄グループの熊本電鉄(くまでん)の03系は熊本に行く度によくお世話になっていたりもします。
東京メトロでも熊本電鉄でもお世話になっている車両に、九州から離れたここ北陸の地で再会できたことは嬉しい限りです。
今度、金沢を再訪した際は絶対に北鉄03系に乗りに行きます。
ではでは金沢に別れを告げて、いざ近畿へ戻っていきます。ここ金沢駅に来るまでに米原駅から北陸本線を往路完乗してきましたが、これからは湖西線の分岐する近江塩津駅まで北陸本線に乗っていきます。
名残惜しい気持ちを抑えていざ、駅員さんに18きっぷを見せて、金沢駅のホームまで駆け上がります。
ホームにて待ち構えていたのは金沢駅18:30発の521系福井行き普通列車です。
…うぬ?この列車は521系なの?
顔つきがここまで乗ってきた521系と違うぞ、最新型の顔つきだから523系なのでは?
とここまでの投稿を見ていただいた方は思われるかもしれませんが、違うんです。
広島の227系や京阪神地区の225系っぽさを感じる顔つきですが、これも521系です。
1次、2次、3次…と製造時期によって顔つきが異なる車両、それが521系です。
そんなことはともかく、この列車に乗り込んでいきましょう。
車内は広島で乗車した227系とそっくりそのままの転換クロスシートがずらりと並んでいます。転クロ至上主義の西日本では当たり前な光景ではあるのですが。
227系に激似の車内は金沢駅の時点ではほぼ全席埋まっており、途中の松任駅あたりまでは着席を諦めて立つこととしました。
いざ、列車は金沢駅を18:30に定刻通り出発しました。
さようなら金沢、石川県。
また北陸新幹線の敦賀駅延伸前に来ます。
今度来るなら暖かい時期だな。
列車は北陸本線を南下して、小松方面へ向かっていきます。それにしても、この列車が止まっていく駅はどの駅も2〜3cmほどホーム上が積雪しており、駅に到着した当列車のドアが開く度にホーム上の雪が車内に入ってくるのではないかと少年のような好奇心に駆られながら、座席から外を眺めて黄昏ていました。
列車は松に任せると書いて「松任(まっとう)駅」に停車しました。初見で読める人、少なさそうな駅名ですね。
ここ松任駅は北陸新幹線の基地の駅でもあり、松任は金沢のベッドタウンのようなところです。そのため帰宅時間帯の乗車ということもあってか、多数の乗客が降りて行きました。
私、九州の者なので松任駅と聞くと、どうも「待っとう(『待っている』の九州弁)」のように聞こえて、「いま松任駅で待っとうよ」なんてサブイボがいくらあっても足りない、九州の鉄道ファンにしか伝わらなさそうなさむさむの親父ギャグも思いついたり…。
こんなことを言わずに済む、真っ当な人生を歩んでみたかったものです。
そんなことはさておき、列車は松任駅を出て、2024年に三セク化される北陸本線の石川県区間を南下して行きます。
乗車時にはもう日も暮れて、夜が深まりつつあったため車窓から得られる情報は雪、雪、屋根に積もった雪、平野にぽつほつある平屋の民家の屋根に積もった雪、うっすら見える白山らしき山、暗闇のなかで白く光る雪、という感じでした。沿線の降雪を見ると、金沢市街地の訪問で経験した雪に対する憎悪やトラウマの一つや二つ、心底から湧いてくるかと思っていたのですが、521系のとっても暖かい車内から眺める雪はそれとは全くの別物のように見え、言うなればスノードームの雪を眺めているかのような心地になりました。そうですね、わかりやすく言えば降雪が少ない北部九州でごく稀に降る雪そのものにその時ばかりは見えました。
何度も繰り返していますが、日本海側でも積雪の少ない九州の者なので、やはり九州人が抱く雪への憧れをその時ばかりは私も抱きました。
雪国羨ましいなって。
そんな想いに耽っているあいだに、沿線の雪にも目もくれず南下する当列車は加賀笠間、美川、小舞子、能美根上、明峰を次々と後にして、小松駅に到着します。小松市の中心駅の小松駅もこれまたベットタウン、列車は老若男女問わず次々と乗客を吐き出していきます。
4両編成の当列車には1両に多くて五人ほど、まばらに乗客が残されています。私と同じく、この方々も加賀温泉・福井方面へ向かっているのでしょうね。
ここ小松駅では数分ほど特急列車待避のために停車するとのことだったので、車掌さんに停車時分の確認を取り、向かい側のホームに向かって乗ってきた227系顔の521系を撮影しました。それも小松駅の撮影も忘れずに行いました。往路では停車時間も1〜2分ほどで小松駅を出発したので、こうしてJR西日本時代の小松駅を記録できたのも良い思い出になりました。
当列車は小松駅を出発し、粟津、動橋に止まって行き、加賀温泉駅に到着。これまた特急列車の退避待ちということで外に出て、「加賀温泉に降り立ったぞ〜」なんて気持ちになりにいきました。というよりかは、(JR西日本時代の)加賀温泉駅の在来線ホームを記録するためです。
加賀温泉駅のホーム上には吊り下げられた乗車位置案内(号車案内札)が整然と並んでいます。この光景を見るや、国鉄時代に栄華を極めた東北新幹線開業前の上野駅地上ホームも、かつてはこんな感じで東北、北陸、上越方面の特急列車の号車案内札が、ずらっと頭上に並んでいたと聴いたことを思い出しました。そんな東北、北陸そして上越の玄関口だった上野駅の地上ホームを始発とする特急列車は、いまや風前の灯。聞いた話によると、2023年3月のダイヤ改正で常磐線系統の特急列車はほぼ全て、上野東京ライン経由の品川駅始発になるのだそう。
奢れる駅も久しからず、ただ春のダイヤ改正の夢の如しと言ったところでしょうか。
加賀温泉駅の在来線ホームも、2024年にはそうなっていることでしょう。
あな、悲し。
号車案内札を見つめて感嘆していると、
特急列車通過の合図がホーム上に流れてきたため、乗ってきた521系に戻ることに。そして特急列車は加賀温泉駅を爆速で通過。最高速度を出して通過する、特急サンダーバード号はとても見ものでした。常磐路の特急ひたち・ときわ号や日豊路の特急ソニック号とは比べ物にならないほどの速さで駆け抜けていきました。
速い速い。
特急列車が加賀温泉駅を通過すると、乗車中の普通列車もすぐに加賀温泉駅を出発していきました。
加賀温泉駅を越えると次の駅は大聖寺駅、福井県と石川県の県境駅であり、これにて石川県とはおさらばです。
ここからは福井県、近い将来にハピラインとなる区間です。
県が変わったとはいえ、車窓が変わったということはありません。往路と比べると、福井県に広がる平野には雪がより積もっています。
北陸本線、福井県区間の車窓の様子は往路時に説明したのでここでは省略とさせていただきます。
ちなみに大聖寺〜福井間は、乗客の乗降も少なく、金沢駅から乗ってきた乗客がそのまま福井駅まで向かっている模様でした。やはり福井〜石川間の越県需要は、土日の夕方とはいえ一定数はあるようです。また、途中駅の芦原温泉駅から日帰り入浴の帰宅客でもいるかと、芦原温泉駅の駅ホームを眺めていたのですが、誰もおらずに列車は芦原温泉駅を発車していきました。芦原温泉駅からだと特急サンダーバード号か特急しらさぎ号に乗れば一安心ですもんね。北陸新幹線の延伸開業によって三セク化される、ハピラインの先行きが不安に思えてきます。
そう思っているうちに、当列車は終点の福井駅に到着です。金沢から福井まで約1時間40分の旅、夜の雪国を頼むことができる楽しい列車旅でした。
今回の投稿はここまでです。
次回もそのまま北陸本線を福井駅から南下して行きます、どうぞご覧くださいませ。