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上司はプラスかマイナスか-ついでにMBTI*分析もちょっと-

お仕事話。私はとある財団に20代後半から勤めており、まあそろそろ定年が見えてくるトシである。主な業務は官庁や企業からの調査研究プロジェクトの請負。小規模な組織で専門性が要される職種とあって、勤め先の人々とは、半分以上が20年以上の付き合いである。上下関係も20年来ほぼ変わっていない。最近はさすがに中核部の高齢化が問題になり、少しずつ若年層を入れてはいるが。

さて、私の属する部署でプロジェクトのリーダーを務める地位にある人々は2人いて、他の職員はプロジェクトの内容によりどちらか、あるいは両方のチームに参加する。表題の「プラス」「マイナス」はそれぞれの仕事の特徴だが、仕事内容の評価とは無関係。仕事のやり方が「足し算」か「引き算」かの違いと見て頂ければ。

さて、「プラス」上司の行動原理は「知識欲」である。別の記事で言及した「邪念のないタイプ」で、内外ともに自由闊達な意見交換を好む。一緒に仕事をする上でのメリットとデメリット、経験したトラブルは以下のとおり。

メリット:
・組織内のヒエラルキーやクライアントとの政治的関係を意識せずにフランクに質問や意見が言える。
・情報交換が活発。「この分野でこういうニュースがありましたよ」「それ、面白い。ええと、背景説明はここですね」「あれ、この前扱ったあの問題とつながってる。じゃこれ見直してみましょう」「その関連なら、この機関のサイト見るといいですね」…といった発展性のある議論ができる。
・新しい見解や知識を出し惜しみせず内部にもクライアントにも積極的に提供する。

デメリット:
・勤務時間が長くなり、休日や夜間もチャットで議論したりするので、日常生活でオン/オフの区別がなくなる。
・議論がカオス状態になりがちなので、報告書をまとめるとき、長く難解なうえに結論が分かりにくくなる。
・最終報告の作成がいつも土壇場まで引き延ばされ、締切前が修羅場になりやすい。

トラブル:
普段よく使っていた定期資料の購入が突然ストップ。部の資料係であった私が購入元を調べてみると上層部で、幹部職員に理由を訊いてみたが答えてもらえない。「プラス上司」から「あの資料がないと業務効率に支障が出る。ストップする前に事前アンケートを取るべきだし、どうしてもという理由があったなら説明せよ」と伝えよという依頼はもっともなので、交渉に出かける。が、Black Boxの蓋は明けてもらえない。私自身がその資料を必要としていたこともあり、何度もキャッチボールの球よろしく行き来するうち、ついに上層部が逆ギレして周囲の誰かに「もう如月をここに来させるな」と伝える。結局は他の類似の組織から当面必要な分だけコピーさせてもらってしのいだ。
―感想―
私もプラス氏の意見に全面的に賛成だったので、無理を承知でお百度参りしたけど、下っ端だと埒が明かないことを早く悟って直接交渉してほしかった-

一方、「マイナス」上司の行動原理は、「承認欲求」である。プロジェクト運営では「マネージャー」の立場を重要視し、個々のメンバーの内外への情報発信はその管理下でのみ行われる。一緒に仕事をする上でのメリットとデメリット、経験したトラブルは以下のとおり。

メリット:
・スケジュール管理が厳格なので、作業にムラができずルーティン化が容易
・作業内容のチェックが細かいので本質的なミスは生じにくい。
・情報伝達のヒエラルキーが確立しており、連絡漏れがない。
・報告書がビジュアル面で美しく、形式に統一性があり読みやすい。

デメリット:
・報告の分量や内容が「予定調和」であることを求められ、発展的な議論がしにくい。
・情報提供の量や質をリーダーが規制するので、プロジェクトの方向性が「視野狭窄」に陥りやすい。
・リーダーが「管理者」として強力なので、案外属人性が高い。

トラブル:
報告書のドラフトで、私の担当箇所にフォーマットのミスが見つかる。あわてて謝罪+修正をしたうえで、「マイナス」上司に「何ページの何行目と何ページの何行目…を直した」と連絡。が、「直ってない。先方があれだけ丁寧に指示してくれたのに。私の立場考えて。ちゃんと指示見た?」という返答。ファイルを確かめて、このフォルダのファイル○○、と再度伝えても「いったいどこ見てる?」。でふと気づいた。上司の指定で自分が直したファイルは部のサーバ上にあるが、このサーバはWindowsのクラウドサービスのサーバと同期している。上司が見ているのはこのクラウド上のファイル?(どちらもWordだが、バージョンが違うのか、ページ数や画面の構成が違って見える)。で、クラウド上のフォルダを見直し、ファイルの場所と修正ページを改めて伝えなおす。
―感想―
マイナス氏は学校の先生になったら、「生活指導はできるが教科は教えられない(自分と逆)」であろう。数学の問題が解けない生徒に、授業をちゃんと聞いたか、問題を読んだか、などと説教しても益はない。どこでどういう間違いをしたか(計算違い?符合の付け忘れ?補助線が引けなかった?)を見直したうえで、解法を教える方がこじれないだろうに...―

以上をみてだいたい察して頂けたであろうが、私が居心地よく感じるのは「プラス」のほうである。「プラス」上司が上に立っていると、クライアントから照会が来た場合、「そういえばこの前別件でまとめておいたあれが使えそうなので出します」と言えば喜んでもらえる。ついでに自分も、と他のメンバーも色々出してくるので、量が増えて「回答」というより「新規レポート」になってしまうけれど。MBTIで言えば、多分このプラス氏は「ENTP(討論者)」で、定着するメンバーは、E/I、J/Pの違いはあれど、NT型が多いように感じる。

反対に「マイナス」上司のプロジェクトで照会が来た場合は、「こちらがどの情報をどれくらい出すか決めるまで作業するな」ということになる。そのほうが楽には楽だけれど、面白くはない。この上司もリーダーに立つからには優秀な研究者である。がどちらかといえば個人プレーヤーで、部下と研究に関する議論はしない。ただ、マイナス氏は権力が好きな一方で、思いやりや気配りに満ちた人である。上層部の御覚えが目出度いのはもちろん、こちらが「分をわきまえて」いれば親切に対応してもらえるし、有休消化も積極的に勧める。体育会的団結や温情という面ではこれ以上求めることはない。

それでも、このタイプは(私にとってだけれど)「地雷」が多いのですね。「自分がこれだけ努力している、デキる」ということを認めてもらいたいという願望が強力で、そのプライドや立場への「忖度」を忘れると途端にキツくなる。MBTIでいうと「ESFJ(領事)」?社交的で事務能力や計画性も優れている。が、行動原理が感情に基づいているので、他人の評価に好悪によるバイアスが激しい。

この上司に限らず、私の職場には、「SF」も多い。他の部署には「ST」も「NF」もいるのだが、今の部署では「NT」と「SF」にほぼ二分される。で、「NT」の私は、「SF」の人々と話していると、「やっぱり価値観違う」と思う。実利は別として、上層部あるいは権威者に「可愛がられる」人を尊敬するあるいは自分がそうであることが誇らしいという心情はよく分からない。自分が仕事をしていて一番嬉しいのは、報告書やその内外での発表が「面白い(interesting)」と言ってもらえることなのだけれど、それを言う人の地位や年齢で嬉しさが変わるわけではない。自分が評価するのも論文や発表が「面白い」ということに尽きる。
 
一方、人に言われて頭の中が「キイッ」となるのは、「常識でしょ」「気が利かない」「私は(○○さんは、皆は)頑張ってるのに」である。自分はもうトシもトシだし、養わなければならない家族がいるから机を蹴るくらいで抑えているが、若くて身軽な「NT」がこれを言われたらどっとやる気をなくすであろう。彼ら(自分も含めて)は事務処理の場面でよく↑を言われる。確かに事務に関してはやるべきことに気づくのが遅いし、手際も悪いけれど、意図的に怠けているわけではないのです。やり方が分からないから手が付けられないだけで、訓練すればそれなりに覚えますよ。

NT型は他人が見えない人間なので、「やるまで待つ」のはダメ。どのプロジェクトにも多少の事務手続きは生じるのだから、仕事が来た時に担当を決めてしまいましょう。やり方を教える時は、なるべく具体的に。一番良いのは過去の「模範解答」を見せて、数字や名称を変えて写させることです。間違えたら何度でもやり直させる。その際も、「ここを間違えたのは●●したため。模範解答のようにこう書けばよい」と具体的に手順を示す。勤務態度や人格に関わる言い方をしたら×。能力と人格を結びつける発想には猛烈に反発するので、できることもやらなくなります。ただ、一旦覚えれば業務の効率化やルーティーン化には適応度が高いので、次から似たような作業が来た時には機械的に振っても大丈夫と思います。

何だか「職場のアスペルガー対応マニュアル」みたいだけれど、NT⊃アスペルガー、という図式は成立するので、この方法は間違っていないと思う。


久々のこうぺんちゃんです

さて、私の職場には数年置きに、「研究室派遣」的な職員が入ってくる。おおむね30歳前後で博士課程を終えたばかり。普段交流のある大学の先生の紹介で、大学のポストが見つかるまでここで働かせて下さい、というスタンスで、3~5年でローテ―トする。彼らにはその時々で色々なプロジェクトに参加してもらうのだけれど、評価基準が、「プラス」上司と「マイナス」上司では全く違う。

「プラス」の態度は誰が来てもあまり変わらない。結果オーライで最後にそれなりの原稿を書いてくれればよい、とニュートラルに構えている。「マイナス」の場合、「彼(女)が自分にどれだけ忠誠心を見せてくれるか」でまるで評価が違う。「NT」によくある「お勉強はできるが不愛想でマイペース」なタイプは、初めから「感じ悪い」とか「傲慢」とか思われがちである。下っ端同士で一緒に作業してみると、仕事の話はちゃんとするし、やることはやってるんだけどね。

ちなみに、「ESFJ」は筆者世代の女性研究者に多いタイプである。よく気がつく働き者で、研究室の煩瑣な事務を率先して引き受けるので教授陣に可愛がられる。が、めぼしいポストはどういうわけかずぼらで怠け者のNT男が取っていく(実際、私の職場の「派遣型」で、大学のポストを早く得るのは(SFから見て)「いけ好かないタイプ」。にこやかで気の利く評判のよい人は10年以上留まっていたりする)。どうして…とルサンチマンに暮れるのが常であった。これは無論、一昔前の大学が「男性優位」だったことが第一要因なのだが、彼女らが、事務能力は論文業績の代わりにはならないということに気づくのが遅かったということもある。教授陣に愛されているのは「秘書」としてであって、優秀な秘書であればあるほど、「研究者」として見てもらえなくなるという悲劇。

で、性別にかかわらず「SF」の「NT」批判を聞いていると、昔日の恨み節が巻き戻されたようで何だか可笑しい…

*MBTI性格分類については、何度も記事にしているのですが、初めての方は↓のURLを見ると分かりやすいかと思います。文中の2文字の略号は、4文字の分類タイプの真ん中の2文字を抜き出したものです。筆者はINTJ-T。
性格タイプ | 16Personalities

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