小論文試験とは何か?
合格サポーターの佐々英流(ササエル)です。今回は、小論文試験とは何かというテーマで、考えてみます。
小論文試験は大学入試がメイン?
小論文試験と言えば、大学入試のイメージが強いのではないでしょうか?もちろん、高校受験や一部の資格試験、就職試験でも、用いられることはあります。ですが、小論文試験が、最も課されるタイミングは、大学入試ではないかと思うのです。推薦入試、後期試験以外でも、前期試験、一般試験で小論文を課す大学は増えてきています。例えば、慶應義塾大学などが有名ですね。また、東京大学の日本史などのように、資料を複数提示して、そこから読み取れる事実を分析して、記載する試験も、小論文の変形版と捉えることができます。このように、大学入試では、小論文試験が盛んです。一体、なぜでしょうか?
小論文試験で確認できること
まずは、大学入試で小論文試験を課すことで、一体、何を確認できるのか、ChatGPTに教えてもらいましょう。
一言で言うと、学科試験では確認できない総合的な能力を、小論文試験で確認しているわけですね。
小論文とエッセイと「essay」
そもそも、小論文とは、英語で「essay」と言います。しかし、小論文とエッセイと「essay」は、それぞれ、別物です。小論文はあくまで、論文の小型版です。事実やデータを積み重ね、客観的、かつ論理的に述べていくものです。これに対し、エッセイは、自由な形式でつづった随筆という意味ですね。小論文試験で、エッセイを書いても、高評価は得られません。さらに、ややこしいのは、「essay」ですね。小論文とも、エッセイとも異なります。「essay」には、自己紹介文的な意味合いがあるんです。
一般的に大学入試で課される小論文試験は、「原発の再稼働に賛成か、反対か」といった感じです。
国内にも、実質的に「essay」を課す大学があります。国際基督教大学です。「感動した芸術作品」や「克服した課題」などの記載を求めています。明らかに、一般的な小論文とは、系統が異なりますね。
「essay」をより、実感できるのが、『ニュー試』というNHKの番組です。海外の大学入試を紹介する番組です。例えば、「選挙ポスターを見て分析・評価しなさい」「あなたは頭がいいと思いますか」といった試験問題が紹介されました。海外の大学では、こうした奇想天外な「essay」を通して、クリエイティブ度や、観察眼、論理性、価値観などを推し量っているのです。「essay」の採点者には、相当ハイレベルな能力が、必要となります。
小論文は採点も難しい
海外の入試に比べて、大学入試の小論文は、常識的です。例えば、「食糧需給率が低い我が国が、今後、食料問題にどう対応していけばよいか」といった出題がなされています。他にも、課題文を読ませてその内容についての考えを問うパターンや、資料を示し、そこから読み取れることを問うパターンも頻出ですね。いずれにせよ、何が正解、何が不正解と、一概に言えないテーマに対し、論理的、客観的に論述するわけです。やはり、小論文は論文の小型版なのです。
この小論文という出題形式は、採点者にとって、負担が大きいんです。通常の小論文試験は、800字以内の記載を求めるものがほとんどですが、それでも100件ほどの小論文を読み、採点するのは、骨が折れる仕事でしょう。さらに、高度情報処理試験の小論文では、2,000字~3,000字ほどを記載します。こうなると、採点側も、労力は想像を絶するものですね。これが、もし、マークシート方式なら、採点は自動です。出題側にとって、小論文試験を課す場合、これだけのマンパワーをかけるだけの価値を、見いだす必要があるわけです。
大学入試で小論文を課す意義
大学入試では、小論文試験が多く出題されています。大学にとって、それ相応の価値があるということです。思うに、総合的な能力の確認ということではないでしょうか。総合的な能力とは、学科試験では確認できない、論理的思考能力を指します。
というのも、大学入試を突破すれば、大学に進学します。大学の単位は、単なる試験だけではなく、日々のレポート提出などで、取得しますね。このレポートは、小論文そのものです。さらに、ほとんどの学生は、卒業論文を提出して、大学卒業資格を得るのです。卒業論文は、小論文をさらに本格的にしたものです。つまり、大学での勉強は、レポートや論文の作成が、中心だといえるのです。そう考えると、大学にはマンパワーをかけてでも、小論文試験を課す必要性があるといえますね。学科試験では点が取れても、小論文が書けない論理的思考能力に欠ける学生は、困り者なわけです。
高校では小論文を学ばない?
このように、大学側には小論文を重視しています。では、高校側はどうでしょうか?実は、あまり小論文を重視しているとは言えない状況です。高等学校学習指導要領を見ても、小論文という言葉は、出てこないんです。たぶん、書くことのひとつの様式として、明示されぬまま、定義されているのが実態です。従って、実際の教育現場では、特に必要がない限り、小論文の書き方を学ばないのではないでしょうか。少なくとも、古文、漢文、現代文はあっても、小論文という独立した科目は、存在しないんです。従って、受験生は、小論文の試験を受ける必要性に迫られない限り、小論文の書き方をきちんと学ぶことはありません。こうした状況では、良い小論文を書けるレベルの受験生は数少なくて当然なんです。小論文試験では、数回の添削を受けた程度の準備不足の受験生が、競い合う状況にあると言えます。後期試験の場合だと、添削すら受けることなく、本番に突入する状況でしょう。もともと、小論文は、結構、むずかしいものなのですが、さらに準備不足重なってくるのです。結果は、火を見るより明らかですね。本来、論述内容でこそ、競うべき小論文試験が、誤字、脱字が少ないほうが勝つといった、低レベルな争いに終始するわけです。逆に言えば、英語や数学と違い、小論文は少し勉強するだけで、逆転合格できるチャンスに溢れているとも、言えますね。
大学卒業後の小論文
先ほど、見たように、大学ではレポートや卒業論文といった小論文の延長線上の学びが待っています。では、大学卒業後、小論文に出会う機会があるでしょうか。ご承知の通り、小論文を書く機会は、ほとんどないですね。アカデミックな世界へと身を投じる学生は、修士論文、博士論文、学術論文とさらなる本格的な論文と向き合うことになります。これは、小論文の最終系と言えますね。
では、就活はどうでしょうか?面接試験がメインに変わりますね。小論文が課されることもありますが、補助的な意味しか持ちません。何故でしょうか?企業は、新入社員の採用には、相当のコストをかけています。一度、採用すると、生涯給与として、億単位の出費となるからです。より慎重に人物を見分けるため、新卒採用においては、小論文よりもコストがかかる面接を行っていると考えられます。直接、会って、より正確に、人物評価を行いたいわけですね。また、内定をとれるかどうかは、単なる学力評価ではなく、企業が求める人材像とのマッチングへと変化します。大学入試までとは、評価軸が変わるのです。
さらに、中途採用などの場合は、希望者のスキルや経験などが、より重視されていきます。企業が求める人材も、特定のプロジェクトへの参画を前提として、求めるスキルがピンポイントで、提示されるようになります。その結果、エントリーシートや履歴書が重要になるわけです。採用においては、経歴や資格のほうが、小論文よりも、より重視されるわけです。
また、入社後も、研究室のような特殊な部署に配属されない限り、論文を書く必要はほとんどないでしょう。提案書、企画書の作成や、プレゼン資料の作成の土台として、論理的な思考が求められるという形で、小論文作成能力が生かされているとも言えますね。
さらに、資格試験も、最近はほとんど、マークシート方式になりましたね。記述式では、採点の労力がかかるからです。小論文が課される場合でも、小論文だけというタイプの試験は皆無だと思われます。高度情報処理試験の場合も、午前のマークシート方式の試験と、午後の事例問題を突破した受験生だけが、小論文をチェックされます。つまり、足切りにより、小論文の母数を減らしているわけです。本来、面接を行って、ひとりひとりの業務経験や専門家としてのレベルを確認したいところでしょうが、物理的にそれはできないので、面接試験の代替え手段として、小論文を課していると考えられますね。
このように、大学卒業後に小論文と向き合う必要に迫られる方は、限定的となるわけです。
小論文試験の役割とは何か?
この様に見てくると、小論文試験の役割も、掴めてきますね。
高校までは、学科試験で判断できるような、正解、不正解が明確な分野を学ぶわけです。基礎学力を養成する段階と言い換えられるでしょう。従って、自分の考えをまとめるといった小論文の教育は、主流とはならないのです。
大学に入ると日々レポートを書き、最終的には卒業論文を書きます。外部から得た知識や研究した成果などを、主体的に考察する力が養成されます。大学は、高校までに培った基礎学力を土台に論理的思考力を鍛える場所です。だからこそ、大学は入試で、小論文試験を課すわけです。
さらに、社会に出ると、論理的思考力を基礎として、正解のない課題に向き合っていくことになるわけです。
すなわち、論理的思考力を試すために、論理的思考力を養成する大学が中心となって、出題する試験形式、それが小論文試験なのです。
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