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【歌詞考察】22/7「佐藤さん」、自分のアイデンティティを省みる【物語論】【音楽】

22/7の「佐藤さん」は、「佐藤さん」は数多くいる中でも、「僕」は僕だと、自分のアイデンティティを主張しているような曲となっており、自分の存在や生き方を求める曲が数多くあるナナニジらしい曲ともいえるのかもしれない。

佐藤さんをリズムにのって連呼しているところに面白みがあり、これまでナナニジが歌っていた曲とは全く違った異色の歌となっていると思う。まさに、中毒性のある曲となるかもしれない。


物語行為(語り手)は一人称法

22/7の「佐藤さん」は、「佐藤さん」である「僕」の目線から自己のアイデンティティを再認識している歌詞が描かれている。

また、物語世界内部の登場人物である「僕」視点となってまた、語り手ともなっている。

 台詞、歌割によるメンバーの歌声の移り変わりは、語り手の移り変わりがあるようにも聞き取れるような歌声となっている。

「佐藤さん」の「叙法」

ジュネットの『物語のディスクール』の「叙法」では、物語の法は次の2点に集約される

①人は自分が物語る対象をより多く物語ることもより少なく
物語ることもできる。

②その対象をあれやこれやの視点から物語ることができる。

①について「詳細に語る/語らない」ということであり、ナナニジの「佐藤さん」の歌詞では、語り手の感情や思いが詳細に語られているものとなる。

つまり、詳細的に再現した歌詞となっていることからミメーシス性が高い歌詞となっている。

②については、歌詞そのものの語り手は「僕」であり、その変移はないといえる。

しかし、ナナニジメンバーの歌割によって歌っているメンバーが移り変わっていることから「僕」の気持ちを多数な視点から物語っているようにも受け取れる曲となっている。

「物語内容の時間」と「物語言説の時間」

物語の時間の展開を語ったものに、ジュネットによる「順序」があり、「同じ内容(物語内容)を異なった形(物語言説)で語ることができる。

「物語言説の時間」は、歌詞の順序となる。

①イントロ→②頭サビ→
③ 台詞1→④1Aメロ→⑤1Bメロ→⑥1サビ→
⑦ 台詞2→⑧ 2Aメロ→⑨ 2Bメロ→⑩2サビ→
⑪ ブリッジ→
⑫ 台詞3→⑬ 3Aメロ→⑭ 3サビ→⑮4サビ→
⑯ アウトロ→⑰ 台詞4

「物語内容の時間」は出来事が起こった順番に並んだものとなる。

22/7「佐藤さん」の「物語内容」の展開と「物語言説」の順序はほぼ同じ展開となっている。

しかし、物語は4つ物語回路がほぼ同時に展開されている特徴的な構造となっている。

第1の回路となるのが、「佐藤さん、佐藤さん、佐藤さん、佐藤さん」と連呼している部分になる。最後に、「いや鈴木さん?」という言葉がミソとなっており、この後にある台詞へとつなげるキーワードとなっている。

1 イントロ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん

11 ブリッジ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん

16 アウトロ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん いや、鈴木さん?

22/7「佐藤さん」、第1の回路

第2の回路となるのは「佐藤さん、佐藤さん、佐藤さん」という問い掛けに対し、「佐藤さん」である「僕」の気持ちを表した歌詞となっている。最後には、私は一人であるという言葉に行きつき、最後の台詞へと繋がっていく。

2 頭サビ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
日本一の多い
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
名字の僕だ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
だけど僕は僕だし
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
世界で一人だけ

6 1サビ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
そんな 多いのかね?
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
鈴木さんだって…
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
髙橋さんも…
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
それに 田中さんだって…

10 2サビ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
街で声掛ければ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
みんなが振り返る
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さんばかり
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
わからなくなってしまう

14 3サビ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
そんな 多いのかね?
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
鈴木さんだって…
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
髙橋さんも…
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
それに、田中さんだって…

15 4サビ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
日本一多い
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
名字の僕だ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
だけど僕は僕だし
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
世界で一人だけ

22/7「佐藤さん」、第2の回路


西條和

第3の回路となっているのが「台詞」ポエトリーリーディングの部分となり、「佐藤さん」である自分が他者からの問い掛けに答えたり、相手側に名前を問い掛けをした部分となっている。最後の「あなたのお名前は?」「佐藤です」がキーポイントとなり、4つの物語回路は最後の台詞に収束され、佐藤である自分は自分であるという言葉に行きつくように歌詞が組まれている。

3 台詞1
「初めまして 佐藤です。
あなたのお名前は?」

7 台詞2
「はい。佐藤です。
どこでお会いしましたっけ?
ああ~っ!
失礼ですが、お名前は?」

12 台詞3
「佐藤です」
「佐藤です」
「佐藤です」
「佐藤です」

17 台詞4
「あなたのお名前は?」
「佐藤です」

22/7「佐藤さん」、第3の回路
望月りの

第4の回路となっているのが、「佐藤さん」である僕が、「佐藤さん」である自分のことに思い巡らしている歌詞となっている。最後に「僕は僕でしかないよ」という言葉も他の物語回路同様に、最後の台詞へと収束されるように作り上げられている。

4 1Aメロ
名字は覚えやすいけど
その分忘れやすいんです
「佐藤です」
そう同じ名字が
周りにいっぱいいるもんですから…
「佐藤です」

5 1Bメロ
彼も彼女も
君もまさか?
佐藤ってことはないよね?
よし どうせだったら
世界に広げよう 佐藤さん計画

8 2Aメロ
あちらこちらにいるから
ごちゃごちゃになってしまってるんです
「佐藤です」
ああ あの佐藤さんか
いつぞやは 姉がお世話になりまして…
「それは、違う佐藤です」

9 2Bメロ
もう 慣れっこだ
よくあることさ
あいつも誰も”佐藤”で
ただの”佐藤”違い
できれば下の名前で呼んで欲しい

13 3Aメロ
”佐藤”って名字が同じだって 
そうさ 関係ない
僕は僕でしかないんだよ

22/7「佐藤さん」、第4の回路
河瀬詩

第1の回路、第2の回路、第3の回路、第4の回路で、それぞれの物語が展開されているが、最後の、⑰台詞4の「あなたのお名前は?」「佐藤です」に収束されるような構造となっている。

望月りの
22/7「佐藤さん」の物語回路の展開

一方で、時間的順序については、ほぼ同時期に展開されており、時間的に入れ替えた構造ではない。

頻度

物語内容における出来事の生起の回数と叙述の回数については、一度起こったことを一度だけかたる単起法による歌詞となっている。

サビでは「佐藤さん」を連呼している部分が繰り返されていることから反復法ともいえるかもしれないが、物語的な歌詞とはなっていない。

パースペクティブ・焦点化

パースペクティブは「あるポイントからの見方」を表している。

「焦点化」は特定の人物の角度からの語りには「見る」以外の感覚、例えば「聞こえた」「感じた」「匂った」などを一括したものとなる。

パースペクティブは、物語世界の情報を把握するために誰の視点を採用するかということを扱う領域である。

内的焦点化 は、 ある登場人物を「視点人物」として、その人物によって知覚された事柄のみが描かれるもの。

外的焦点化 - ある対象(特に登場人物)を描く際に外面のみを描くもの。思考や感情は窺い知れないもの。

物語回路によりパースペクティブが異なっているところが面白い。

第1の回路では外的焦点化的な歌詞となる。

第2の回路は、楽曲的には、ナナニジメンバーそれぞれが歌割をし各節で違った歌声が次々と繋がっている様子である。

同一の出来事に対してさまざまな視点から語られる物語(内的多元焦点化)のようにも聞き取れる歌声となる。

15 4サビ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
日本一多い
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
名字の僕だ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
だけど僕は僕だし
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
世界で一人だけ

第3の回路は、「台詞」であり、 佐藤さんである「僕」から語りとなっており、僕に対して問いかける言葉でもあることから、「内的多元焦点化」といえるかもしれない。

17 台詞4
「あなたのお名前は?」
「佐藤です」

第4の回路は、「佐藤さん」である自分が、多くいる「佐藤さん」の内の一人だけれども、自分は自分であると、繰り返し語る歌詞となっている。

8 2Aメロ
あちらこちらにいるから
ごちゃごちゃになってしまってるんです
「佐藤です」
ああ あの佐藤さんか
いつぞやは 姉がお世話になりまして…
「それは、違う佐藤です」

9 2Bメロ
もう 慣れっこだ
よくあることさ
あいつも誰も”佐藤”で
ただの”佐藤”違い
できれば下の名前で呼んで欲しい

台詞と歌割

台詞は、望月りの、四条月、相川奈央、月城咲舞、麻丘真央などがこなしている。

その中で望月りのは、はじめと終わりの重要なポイントをこなしている。

ソロパート、歌割、ユニゾン、台詞など担当者が代わっていることがわかるものの、どのようなメンバーによる歌割になっているのかは、雰囲気は分かるけれども、まだ把握しきれていない。

22/7 「佐藤さん」歌詞

1 イントロ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん

2 頭サビ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
日本一の多い
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
名字の僕だ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
だけど僕は僕だし
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
世界で一人だけ

3 台詞1
「初めまして 佐藤です。
あなたのお名前は?」

4 1Aメロ
名字は覚えやすいけど
その分忘れやすいんです
「佐藤です」
そう同じ名字が
周りにいっぱいいるもんですから…
「佐藤です」

5 1Bメロ
彼も彼女も
君もまさか?
佐藤ってことはないよね?
よし どうせだったら
世界に広げよう 佐藤さん計画

6 1サビ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
そんな 多いのかね?
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
鈴木さんだって…
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
髙橋さんも…
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
それに 田中さんだって…

7 台詞2
「はい。佐藤です。
どこでお会いしましたっけ?
ああ~っ!
失礼ですが、お名前は?」

8 2Aメロ
あちらこちらにいるから
ごちゃごちゃになってしまってるんです
「佐藤です」
ああ あの佐藤さんか
いつぞやは 姉がお世話になりまして…
「それは、違う佐藤です」

9 2Bメロ
もう 慣れっこだ
よくあることさ
あいつも誰も”佐藤”で
ただの”佐藤”違い
できれば下の名前で呼んで欲しい

10 2サビ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
街で声掛ければ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
みんなが振り返る
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さんばかり
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
わからなくなってしまう

11 ブリッジ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん

12 台詞3
「佐藤です」
「佐藤です」
「佐藤です」
「佐藤です」

13 3Aメロ
”佐藤”って名字が同じだって 
そうさ 関係ない
僕は僕でしかないんだよ

14 3サビ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
そんな 多いのかね?
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
鈴木さんだって…
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
髙橋さんも…
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
それに、田中さんだって…

15 4サビ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
日本一多い
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
名字の僕だ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
だけど僕は僕だし
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
世界で一人だけ

16 アウトロ
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん 佐藤さん
佐藤さん 佐藤さん いや、鈴木さん?

17 台詞4
「あなたのお名前は?」
「佐藤です」

おわりに

歌詞の中に「よし どうせだったら 世界に広げよう 佐藤さん計画」という歌詞がある。

最近のニュースには、「500年後には日本人全員「佐藤」に?東北大学が驚きの試算発表」したものがあった。

まさに、歌詞の「佐藤さん計画」の実現を物語るような曲とも言えるかもしれない(笑)。

22/7の「佐藤さん」は、佐藤さんをリズムにのって連呼しているところに面白みがある。

これまでナナニジが歌っていた曲とは全く違った異色の歌となっていると思う。

まさに、中毒性のある曲となるかもしれない。

一方で、「佐藤さん」は数多くいる中でも、「僕」は僕だと、自分のアイデンティティを主張しているような曲となっている。

自分の存在や生き方を求める曲が数多くあるナナニジらしい曲ともいえるのかもしれない。

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