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金子あつし (著)『えなも おどっちゃうけん! 1 はじまりのとき』 ためし読み! 1 どこ行きたいの?
アクリル板を飲み込んで、おなかが痛くなる
アクリル板を吸い込んで、胸が痛くなる
アクリル板がせまってきて、目の前が真っ暗になる
アクリル板がない場所は、この世にはないの
アクリル板がないところ
今日も布団がとびきり重い、つらい、生き苦しい。
月曜日、また、「学校に行けない1週間」が始まる。
遠くへ行きたい、どこか遠くへ。行かないといけない学校も、
大きな湖も重すぎる布団も、アクリル板もない、どこか遠くへ。
その思いを初めて両親に打ち明けたのは、ギョーザを囲んだ夕食の
時間だった。
「遠くにいきたい、どこか、どこか遠くへ。あ、へ、変な意味
じゃないよ。旅行。ひとり旅」
両親が、とまどっている。
「あ、や、で、でも、中学生でひとり旅なんておかしいよね。なし、やっぱりなし、今のなし」
「え? いいんじゃない? 最近ヒマだって、言ってたし。ねえ、
お父さん」
「んんん、かわいい子には旅をさせろなんて言うしなあ」
両親の反応は、意外なものだった。
学校に行くことはおろか、最近は外に出ることさえない私に気を遣って
くれている。そのことは、分かる。気を遣わせているのが申し訳なさ
すぎて、今すぐ誰も私に
気を遣わなくて済むよう、遠くに往きたい。あらためて、その思いを強くした。
「どこ行きたいの?」
お母さんの質問を受けて、私はうつむいた。
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金子あつし (著)『えなも おどっちゃうけん! 1 はじまりのとき』
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