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日本の博士課程は全員、起業せよ。

どうも。岩淵です。全国の博士課程学生の皆さん、お元気でしょうか。僕はとても元気です。

初めましての方に簡単に自己紹介をすると、私は現在、福岡の大学の大学院博士課程で都市計画・建築分野で研究しながら、URBANIX株式会社という小さな会社を経営している27歳です。根拠のない自信が取り柄です。

さて、突然ではありますが、全国の博士課程を(勝手に)代表して、提言したいと思います。

日本の博士課程は全員、起業せよ。

研究者とは?博士課程とは?

博士課程とは研究者になるための登竜門であるとも言えます。さて、そもそも研究者という仕事は何なのか?そんな人もいるかと思うので、Chat GPT 4.0に研究者について聞いてみました。

「研究者」とは、特定の分野において新しい知識や理解を生み出すことを目的として、科学的、学術的、または実践的な研究を行う人のことです。研究者は、大学や研究所、企業などの機関に所属することが多く、理論的な研究から応用研究まで幅広い分野で活動します。彼らの仕事は、実験、観察、データ分析、論文執筆など多岐にわたります。

ChatGPT 4.0に聞いてみました

なるほど。それでは、研究者になるにはどうすればいいのでしょうか?

大学で学士号を取得し、関心のある分野について基礎的な知識と技術を学びます。大学院で修士号や博士号を取得し、専門的な研究能力を身につけます。特に博士号は、独立した研究者になるためにはほぼ必須です。

これもChatGPT 4.0に聞いてみました

なるほど。。ハカセゴウ。。?ナニソレ?オイシイノ?

きっと博士号について知らない方も多いかと思うので簡単に説明します。

一般的に、私たちは、小学校6年、中学校3年、高校3年通い、就職する。もし、進学するなら、専門学校なら2年、大学なら4年間通って、晴れて就職です。ここまでが普通。もう少し研究したい人は、それから修士課程に進学し2年間研究します。

そして、まだ研究を続ける人は、進学し博士課程で約3年間、もしくは就職しながら研究を続け、博士論文という分厚い紙の束を提出し受託されると、ハカセゴウと呼ばれる資格をもらえます。そうなると晴れて研究者としてのスタート地点に立てます。鳥で言うと、やっと卵が羽化した感じです。これから研究者としての下積み時代がスタートです。もちろん、飛び級などで早まる場合もりますが、基本的にはこのシステムです。

僕は、現在、博士課程に(ほぼ)ストレートで進学しているので、公教育20年目です。20代前半の頃は、周りで就職して立派に社会人になっている同世代を見て「ヤベェぇぇぇぇぇ」とか思っていましたが、もうその感情は消え去りました。例えるなら、興味本位で洞窟の中に入っていったら、中々出口を見つけられずに1時間経過。もう引き返し方も出口の場所も分からず、暗闇の中をとりあえず進んでみている、そんな感覚です。

ちなみに、博士課程に進学した場合、ストレートで卒業したとしても卒業時は26歳〜30歳が普通。高卒もしくは大学3年生で就活をするのが一般的な日本においては、博士課程卒業後の新卒としての就職は不可能です。そもそも、変にプライドと好奇心が大きい27歳の新入社員が誰が欲しいでしょうか? 僕なら若くてやる気のある21歳を雇用します🤗

そのため、博士号を取得した後は、研究機関や大学、民間企業に「研究者」として雇われることが一般的です。しかしながら、少子高齢化等の影響もあり、大学や研究機関のポストは減少傾向にあります。したがって、博士課程を卒業した後も就職できない人も少なくありません。

博士課程のお財布事情

次は、皆さんが気になる博士課程のお財布事情です。博士課程はいわば「学生」ですが、どのように生活費を養っているのでしょうか?

結論から言います。博士課程は、国からお金をもらいながら好きな研究ができます。奨学生として選ばれる必要がありますが、選ばれれば国から支給型(返さなくて良い)の奨学金をもらい、生活費や研究費をもらいながら研究できるということです。奨学金の例で言うと、学振や次世代が有名です。

何だよ!博士課程最高じゃん。みんな博士課程に進学しよう!

というわけで、奨学生に見事選出された博士課程学生A君の例のお財布事情を紹介したいと思います。

一般的な地方国立大学・博士課程学生A君
■プロフィール:
・28歳、男
・国立大学大学院の理系研究室所属
・博士課程3年目
・奨学金に選出

■収入*:260万円(240万円+20万円)
・奨学金の支給:年間240万円
・研究室等でのアルバイト:年間20万円

■支出:102万円
・授業料:年額52万円
・社会保険料+国民年金保険料:年額40万円
・住民税:10万円

残り:158万円

この158万円から、
・家賃光熱費:年額72万円(月6万で計算した場合)
・食費:年額36万円(月3万で計算した場合)
を引いた場合、

50万円が残ります。
これが一般的な博士課程学生が年間で自由に使えるお金です。

実際のヒアリングを元にしてます

おい。。嘘だろ。。博士課程。。しんどくないか。。

ちなみに、A君は、奨学金に採択されており、博士課程の中では恵まれている方です。A君のような生活費相当の奨学金を受給できているのは博士課程全体の「1割」(約5,000人)であり、この「1割」は年収180万円以上を換算した結果です(参照:平成28年度文部科学省先導的大学改革推進委託事業「博士課程学生の経済的支援状況に係る調査研究」、※これは平成28年のデータなので、今は改善されているはずです。)

でも、大丈夫!大学の研究室からアルバイトを受けたりすることもできるので、そこで研究をしながら生活費を賄うことも可能です🤗

大学の規定により、専門性の高さに関わらず時給1,000円~2,000円程度。また、1日あたり1週間あたりの勤務時間制限あり。

地方国立大学の規定を参照

え。。で、でも、大丈夫…!他のバイトすればいいし、授業料免除とかあるから…!

・授業料免除:授業料免除は年収108万円以下。成績優秀学生として選ばれ、大学の奨学生になることができれば、免除や半額免除あり。
・国民年金保険学生納付特例制度:年収100万円以下。ちなみに年収100万円未満で選ばれても、免除されるのではなく、猶予(当たり前だが)。

地方国立大学の規定や国民年金のウェブサイト参照

お分かりいただけたでしょうか。経済的自立を目指し、働いて生活をよくしようとすると、免除される授業料や年金の支払いが生じます。だから、大体は、貸与型の奨学金を獲得し、授業料半額免除などを申請しながら学ぶことが一般的です。つまり、博士課程学生は新卒の生活以下。奨学金が取得できなかったら、相当厳しくなります。

「勉強させてもらえるから、そんなの当たり前だろ!」と言っているあなた。分かります。でも、例えば、ヨーロッパでは、博士課程ですら年収が400万円〜600万円もらえるそうです。
(参照:https://fastepo.com/phd-and-postdocs-salary/

ヨーロッパでの博士課程の学生に給与が支払われる理由は、主に教育と研究の質を高めるためです。多くの場合、博士課程の学生は奨学金や給付金(スティペンド)の形で金銭的な支援を受けます。この支援は、学生がパートタイムの仕事をせずに研究に集中できるようにするためのもので、生活費をカバーすることを目的としています。特に科学技術系(STEM)分野では、研究助成金が大きいため、スティペンドが高い傾向があります。

また、多くのヨーロッパの大学や国では、博士課程の学生に授業料の免除(チューションウェイバー)が提供されることがあります。これにより、学生は授業料を支払う負担から解放され、研究に専念できるようになります。この授業料免除は、特に国際的な学生にとって非常に有益です。

さらに、ヨーロッパの大学は、知的な可能性を育成し、革新的な学術研究を促進するために、高額なスティペンドを提供しています。これらのスティペンドは、学生が財政的な制約に囚われることなく、研究に没頭できるようにするためのものです。たとえば、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)では年間45,000ユーロから55,000ユーロ、ドイツのマックス・プランク協会では15,000ユーロから20,000ユーロのスティペンドが提供されています。

これらのスティペンドは、単なる金銭的支援以上のものであり、学生が研究に専念し、学術的および専門的な発展を遂げるための重要な投資となっています。ただし、スティペンドの額は分野や地域によって異なり、ほとんどの学生にとっては、控えめな生活を送るのに十分な額ですが、裕福になるほどの額ではありません。

Chat GPT 4.0が作成。参考情報:Academia Insider、Study International、All Scholarships Abroad

へー。すご。もちろん、ヨーロッパ全ての大学でこれらの実例が見られるわけでは無いと思いますが、それでもこんな好待遇を日本の博士課程の学生が受けている事例はほとんど見たことがありません。

博士課程に行くメリットは?

さて、ここまで聞いて、日本の博士課程に行こうと思った方はいますでしょうか?「キャリアのため?→研究者になる気がないなら、絶対にやめた方が良い」、「お金稼げるから?→そんなわけない」が答えです。

優秀であればあるほど、日本の博士課程には進学しません。僕の研究室には優秀な修士課程の学生が多くいますが(全員僕より間違いなく優秀です)、誰一人として博士課程には進学しません。指導教員にも、僕が修士課程に進学するなら間違いなく合格できないと言われているほどです🫡 つまり、現在の博士課程には、優秀な人材はおらず、僕のような研究力が中途半端な、大して力も無い人が多いのかもしれません(もちろん、全員そうだとは言いませんが)。

博士課程に進学することにメリットなんてありません。行かないことが合理的な判断です。就職もしくは国外の大学院博士課程に進学した方が良いに決まっています。実際、修士課程修了者の進学者数の推移を見ると、過去15年で3分の2まで減少。平成13年度の博士課程進学率23.2%が、10年後の平成23年度には16.5%となり、6.7%(568名)減少してます。企業の研究者に占める博士号取得者の割合も、人口100万人あたりの博士号取得者数も、減少傾向にあり、主要な先進国と比較しても極めて低い水準にあります。ちなみに、中国やアメリカでは、博士号取得者数が急激に増加しているそうです(文部科学省, 2018)

ここまで聞いて、博士課程に進学したいと思った方はいますでしょうか。今、何気なく「博士課程」のGoogle検索エンジンに入力したら「博士課程 地獄」と出てきました。全国の博士課程の皆さん、お疲れ様です。

博士課程よ、起業せよ。

それでも僕は、研究したいし、追求したかった。なぜなら、研究は楽しいからです。きっと研究は「やりたいからやる」が正解です。「知的好奇心」や自分の「偏り」を育ててくれる場所、守ってくれる場所が大学であり、大学は就活支援マシーンにはなってはいけないと思うんです。

でも、やはり経済的な自立は大きな課題。僕が、修士課程に在籍していた頃は、普段はバイト、年末年始やお盆休みは派遣バイト。毎日、本当にしんどかった。そして、生活への不安から働き過ぎ、研究ができなくなるという悪循環。「このままじゃいけない」という危機感だけがあるだけで、生活や学業の改善は全く見られませんでした。終わりの見えないモラトリアムで、「社会人」にも「研究者」にもさせてもらえない。エンドレス地獄がそこにはありました。

そんな追い込まれた僕が、たまたま見つけた「神の一手」。
それが「起業」でした。

起業は、狙って行ったと言うよりも、試行錯誤していく中で運良く辿り着いた「ラッキー・ムーブ」ですし、今もまだ模索中なんですけど、実際に起業してみて、博士課程の学生に相性がいいんじゃないか、と思ったんです。

博士課程の学生は、研究活動の中で、批判的思考を鍛えられているため、複雑な問題に立ち向かうことに慣れています。さらに、専門知識があり、事業の独自性や個性がそもそも備わっています。そして何より、博士課程の学生は毎日のスタンダードがハードシングスなので、高いレジリエンスと粘り強さがあります。

近年では、大学が起業支援をしていたり、インキュベーション施設、産学連携機関を持っていることも少なくありません。大学のリソースやネットワーク、人材をうまく活用できれば、コストを抑えながら、事業化を進めることができます。

あと、逃げ場が無い的なことも起業家っぽいなと思います。22歳の頃、「3年会社で働いて力つけて起業する」とイケイケで言っていた友人知人が周りに多くいましたが、今周りを見渡すと誰一人として起業していません。それもそうです。「自分の置かれる環境を変えること」は難しい。環境を変える理由よりも変えない生き方の方が楽だからです。何より起業という不安定な環境に移行することは、尚更難しいです。

そう考えると、博士課程はそもそも不安定で、リスクを取ることにも慣れています。新卒カードを切れるわけでもなく、社会人としての経験についても大幅に遅れており、普通に就職した会社員との競争からは既に脱落してしまっています。そもそも背水の陣みたいな生き方をしているということです。

起業ってビジネススキルを持っている人がするものと思われがちなんですけど、起業においてビジネススキルは前提条件では無いし、それほど関係ないと考えています。僕も自分で会社を立ち上げて初めてわかったことなんですけど、会社を立てるまでに本で読んでいた「起業のノウハウ」的なものは全く役に立たず、むしろその場その場で、問題を対処していくことの方が重要ですし、力がつきます。

もう一つ。博士課程は"意外に"時間がある。研究者には、朝9時から5時まで研究時間!のような働き方ではなく、むしろずーーーと研究や探求、仕事をしている部類の人間です。例えるなら、締め切りが明日の夏休みがずーと続いている感じです。自分の時間は柔軟に使えるし、ハードな働き方にも慣れています。

そう考えると、研究者は、研究者らしく、プロダクト・アウト的な姿勢でその尖りを活かし、世の中に打って出ていく方が良い気がします。昨今の「イノベーション」のような言葉が叫ばれる現代においては、研究者は結構相性が良いのではないかと考えています。

研究者らしい起業アプローチ

とはいえ、何から始めていいかもわからないと思います。僕も事業を始めてみて初めてわかったことなのですが、研究者は起業家っぽい特性は持っているものの、そのアプローチの角度や努力の方向性は違います。

ここ重要かも

研究では、新規性と妥当性の立証が中心となります。新規性とは、その研究がこれまでにない新しい知見や理論、方法を提供することを指します。また、妥当性の立証は、研究の結果や理論が正確で信頼できることを証明するプロセスです。これには、再現性も含まれます。つまり、他の研究者が同じ方法で研究を行った場合にも、同様の結果が得られることが求められます。このような厳密さは、学術界の知識の基盤を強固なものにします。

一方で、ビジネスの世界では、クライアントの満足度が非常に重要です。ここでの「妥当性」は、研究のそれとは異なり、クライアントのニーズや課題に対して提供されるソリューションが効果的であるかどうかに重点を置いています。ビジネスでは、独自性や創造性も重要視されることがありますが、最終的にはその成果がクライアントの問題を解決し、彼らの満足につながるかどうかが最も重要な指標となります。

簡単に言うと、研究は「正確さと普遍性」を追求するのに対し、ビジネスは「クライアントの具体的なニーズに対する効果的な解決」を目指します。これらの違いを理解することは、研究とビジネスの両方で活動する際に非常に重要です。

ビジネスでは自分の専門分野や知識を活かして特定の課題を解決することが重要です。「n1」のニーズや課題を知ることは、ビジネスの起点として非常に有効です。ここでの「n1」とは、まず最初の一人の顧客に焦点を当てるという意味です。

まず、自分の専門知識やスキル、提供できるサービスや製品を洗い出し、自分がどのような価値を提供できるか、いくつか仮説を立てて見ましょう。ここでは「仮説レベル」でOKです。

次に、その専門知識やスキルがどのような人々の課題を解決できるのかを考えてみましょう。市場調査や潜在的な顧客への実際のインタビューを行ってみるのもいいかもしれません。そうすることで、具体的なニーズや問題点を特定することができます。

次に、特定した課題に基づき、それを解決できるターゲット顧客を絞り込みを行っていきます。その際に、n=1の潜在顧客について、彼らの課題やニーズだけでなく、特性や生活習慣も含め具体的に理解するようにしましょう。

最後に、このターゲット顧客に合わせた具体的なソリューションを提案し、その効果を言語化してみましょう。もし、潜在顧客と親密な関係性があるのであれば、率直なフィードバックを受け取り、仮説したサービスや製品について、改善していくことが重要です。

最後に、その成功体験をもとに他の潜在的な顧客にアプローチしていきます。そうすると、nが増えていき、ビジネスとしての可能性が見えてきます。

最後に

約7,000字もまとめてしまいましたが、いかがだったでしょうか。

実際、僕は博士課程では大学や指導教員の支援をいただいていることも事実であり、自分の会社だけで研究費を賄うことができているわけではありません。でも、これから、自分の独自性や専門性を活かしながら、研究とビジネスの2足の草鞋で結果を残していき、新しい博士課程のロールモデルをつくっていけたらと考えています。

もし、相談したい方、一緒に若手研究者がかっこいい時代をつくりたい方がいましたらご連絡ください。

それでは!


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