自分の思い通りにならなかったことの積み重ねで自己は形成される
こんにちは。岩淵です。皆さん、お元気でしょうか?
初めましての方に簡単に自己紹介をすると、僕は現在、大学院博士課程で都市計画・建築分野で研究しながら、URBANIX株式会社という会社を経営している27歳です。
なんとか滑り込みで6ヶ月連続投稿することができました。いつも、読んでいただいている方、ありがとうございます。4月のnoteのテーマは「自分の思い通りにならなかったことの積み重ねで自己は形成される」にしました。
僕自身の人生を振り返ってみると、「〜ができるから〜をする」のような前向きな決断ではなく、「〜のためには〜を選ぶしかない」という所謂、消極的な意思決定の積み重ねの結果、今の場所にいる気がします。
「自分の好きなことや得意なことを仕事にする」というのは魅力的ですが、その一方で最近では「好きなことや得意なことを見つけなければならない」というプレッシャーを感じ、自分を追い詰めてしまう人も少なくありません。
人生には順調に進むこともあれば、そうでないこともあります。実際のところ、計画通りに進むことの方が少ないでしょう。そのため、思い通りにならない経験を積み重ね、その経験をどのように受け止めるかが、自己形成において重要な役割を果たすと思います。人生の中で直面する困難や失敗、予期せぬ出来事が、私たちの成長や自己理解を深めるきっかけになるのではないでしょうか。
今回のnoteでは、思い通りにいかない経験をどのように自己形成や成長に活かしていくかについてまとめました。現代社会で感じる息苦しさを和らげ、皆さんが前向きな変化や成長を実現できるよう、少しでもお役に立てれば幸いです。
耐え続けた5年間。
僕は、福岡県北九州市という地方で生まれ、公立の小中学校・高校を卒業し、福岡のCラン大学に進学しました。際立って得意なこともなければ、天才タイプでもない、所謂、普通の人です。
大学卒業後の就活は、一つも内定をもらえず、大学院進学も失敗しました。大学卒業後は、うつ病を発症し、実家で引きこもった時期もありました。普通どころか落ちこぼれの方かもしれません。
今となれば笑って話すことができますが、20代前半では真剣に悩んでいました。というにも、自分の中では努力を怠っているつもりも、手を抜いているつもりも、遊び呆けているつもりも全くなかったからです。自分なりにちゃんと頑張っている結果として、納得する成果が全くでなかったんです。笑
また、自分の価値観やこだわりを譲れない不器用さや頑固さもあり、「このくらいでいい」と割り切るのも苦手でした。他人と比べることも多く、他者の言葉や存在に敏感で、自己否定に陥ることもありました。社会人としての適性はあまり高くなかったと思います。
このような状況下において、「社会人としての目標」や「5年後に向けた人生プラン」なんて掲げられる訳はなかったですし、つくったところでうまく進むことはありませんでした。
とはいえ、お金もないし、実績もないし、伝手もない。土俵に立つことすらできないような状況です。そんな当時の僕は、どうにかして生きていく術を身につけるしかありませんでした。
就職がうまくいかなかった私は、ミャンマーのスタートアップ企業で働く機会を得ました。これは私の意思で見つけたものではなく、友人が引きこもっていた私を心配してくれ、現地の社長に事前に話をしてくれたおかげで働くことができました。当時、サポートしてくれた友人や受け入れてくれた皆さんには心から感謝しています。
ニート状態だった私は単身でミャンマーへ渡航しました。中村哲さんの著書をお守りのように持ち、ほぼ手ぶらで渡航しました。滞在先は決めておらず、現地に着いてからFacebookで家を探し、ヤンゴン市の雑居ビルでミャンマー人2人と一緒に月2万円のシェアルームで生活を始めました。
その後の詳細は省略しますが、大まかに以下のような流れで現在の場所に行き着きました。就職活動の失敗が22歳の時で、今は27歳なので、全体で約5年かかりました。
文字だけを見ると、22歳から27歳までの5年間が順調に進んだように見えるかもしれません。しかし、実際には「目標に向かって頑張っていた」というよりも「死なないように頑張っていた」ような時期でした。まさに首の皮一枚でつながっていた状態だったのです。そのため、「ビジネススキルの向上」や「ビジネス経験」を積んでいるという実感はほとんどありませんでした。
一方で、同年代の人たちは会社で順調に昇給していき、年収も私の2倍や3倍はもらっていたはずです。親族や社会からのプレッシャーもあり、焦りや不安も相当なものでした。一回り上の世代の方からは「社会を知らない」「甘い」といった指摘や、学生だったこともあって「モラトリアムだね」という言葉をかけられることもありました。相手にされることも少なく、理解してくれる人もほとんどいなかったのです。
20代は"着地点"も"計画"も必要ない。
ただ、今振り返ってみると、これまでの右往左往しながら歩んできた経験に対して後悔はありません。当時の私の視点から見ると、「サラリーマンになること」が「大人になること」とはとても思えませんでした。やりたいことや成し遂げたいことがある私にとって、表面上の言い訳や正論を話す大人たちにはあまり興味がありませんでした。彼らは人生論や社会人としての教訓を語ることで自分のアイデンティティを保っていたのかもしれませんが、私にとっては、40歳でも何かを成し遂げようと挑戦し続ける人たちのほうがずっとかっこよく見えていました。
僕は「20代のうちは、未来を完全に見通せないほうが良い」と考えています。20代の限られた経験や知識で見える未来は、それほど大きなものではないでしょう。だから、やりたいことややらなければならないことに全力で取り組み、日々の苦悩や喜びを受け止めながら感性を磨いていくことを意識していました。
もちろん、「グローバルで活躍できるようになりたい」「研究をより大きなスケールで進めたい」「現在の研究を応用した事業を立ち上げたい」「事業を拡大したい」など、目指す方向性は持っていましたが、具体的なゴールを定めることはしていませんでした。そのほうが、自分の成長の余地が広がると思ったからです。一度きりの人生、想像できない場所まで行きたいじゃないですか。だから、今の自分の存在価値を他者に説明しようとすることや、最もらしい・わかりやすい自分でいることをやめました。
"勝つために"競争から離脱する。
話を戻しますと、現代の社会構造の中で戦うことを諦めた私は、「勝つために」競争から距離を置くことにしました。それは、他者と比べられないほど「自分らしさ」を追求する道を選んだということです。私のような突出した能力を持たない人間にとって、既に飽和したマーケットで競争に勝つことは難しく、新卒入社もしていない私がその世界で戦っていくのは普通に考えれば難しいことでした。
これは、「独立しよう!」や「就職せずに起業しよう!」、「好きなことで生きていこう!」というような前向きな意思決定ではなく、僕にとっては、思い通りにいかない中で選ばざるを得なかった消極的な選択の結果でした。
経済的にも社会的にも心理的にも決して容易ではありませんでしたが、日々の苦悩や感情の揺れ動きを一つ一つ受け止めながら、前に進むことを意識しました。ゴールは見えませんでしたが、諦めずにひたむきに取り組んでいたところ、5年ほど経った頃に周囲でいくつかの変化が生まれていることに気づきました。
まず、一つ目の変化は、「普段付き合う人たちが変化した」ことです。同世代の研究者や起業家、アーティストなど、自分と気の合う人々が増えました。これは自分の実績が特別なものだったわけではなく、ノリが合っていたことが大きいと思います。同じような価値観や目標を持つ人々とのつながりが増えたことで、自分自身の世界が広がりました。新しいアイデアや視点を得ることができ、刺激的な交流が増えました。新しいきっかけが回ってくる総量が増え、打席に立てる数が増えました。そうすると、100回に1回はそれなりに結果が出るので、活動がより大きなスケールに拡がっていきました。
二つ目の変化は、「面白い人だね」と言われるようになったことです(もちろん、呆れられているだけかもしれませんが。笑)。当初は「面白い人」や「個性がある人」と言われることはなく、どちらかというと何をしても中途半端な人という印象を持たれていたように思いますが、時間が経つにつれ、徐々に自分らしい特色が評価されるようになりました。これは狙ってそうなったのではなく、価値観や興味を大切にしながら、一つ一つの失敗や経験から学び、独自の視点を磨いた結果かもしれません。自分が本当に面白いと感じることに向き合っていくことで、自然と個性が際立ってきたのかもしれません。
自分だけの「説得力」をつくれ。
自分だけの「説得力」をつくるには、他人と比べて自分の強みを探すのではなく、内なる興味や価値観に目を向けることが大切です。例えば、野球ゲーム「パワプロ君」では、選手の能力が「走力A、パワーB」などと明確なスキルの組み合わせで評価されます。ゲームの世界では基準が明確で分かりやすいのです。
しかし、現実の世界は絶えず変化し続けており、求められるスキルもその都度変わります。そのため、ゲームのような明確な評価基準が現実には存在しないことが多いのです。自分自身の価値を他人との比較で決めることは、変化の激しい現実においては有効な方法ではないでしょう。
このような状況下で自分の力を最大限に活かすためには、自分の中にある興味や価値観に目を向け、自己理解を深めることが重要です。自分が何に情熱を感じ、どのような信念や価値観を持っているかを考えることで、変化する社会の中でも自分独自の強みや戦い方を見つけることができるでしょう。
本当の意味での「説得力」は、誰かの文章を引用したり、他の意見にただ賛同するだけでは生まれません。自己の興味や価値観に基づいて行動し、社会や他人のリアクションを観察しながら自己形成を積み重ねていくことが大切です。結局のところ、自分だけの「説得力」をつくるためには、自分の内なる声に耳を傾け、思い通りにいかない経験を積み重ねることが必要です。その過程で、自己成長を遂げ、独自の視点や価値観を築くことで、本物の説得力を身につけることができるでしょう。
最後に
これまでの経験を振り返ってみると、順風満帆な道のりではありませんでした。しかし、思い通りにいかない状況や困難に直面した経験が、自分自身を形作る上で欠かせない要素だったと感じています。日々の苦悩や喜びを通して感性を磨き、自己の価値観や信念に基づいて行動することで、自分だけの「説得力」をつくることができました。
この「説得力」は、他人と比べて生まれるものではなく、自分自身と向き合いながら独自の視点を育てていくことで生まれます。周囲の変化や新たな出会いが、自分の世界を広げ、新しいチャンスを引き寄せました。そして、それらの機会を活かすことで、自然と個性が際立ち、自分らしい特色を評価されるようになってきました。
これからも、自分の内なる声に耳を傾け、自分が何に情熱を感じ、何を成し遂げたいのかを大切にしていきたいと思います。未来は予測できないことが多いですが、その中で自身の成長を続けることで、新たな道を切り開くことができるはずです
このnoteを読んでいただいた皆さんにとっても、これまでの経験や現在の取り組みが、未来への新たな可能性を見つけるきっかけとなれば幸いです。自分らしさを大切にしながら、未来に向かって進んでいきましょう。