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ホロニック自己内対話で脳内ブレスト! ~ 同一モデルの多面性を活かす新時代のプロンプト術~
はじめに
チャットボットや大規模言語モデル(LLM)を活用したアイデア発想・問題解決の手法として、最近「ホロニック自己内対話 (Holonic Self-Simulation Prompting)」が注目されています。狭い界隈で。。
これは、“1つのモデルが多面的に自己を分割し、衝突と調停を行う”という新しい発想です。
従来の「Chain-of-Thought (CoT)」や「マルチエージェント対話」とは何が違うのでしょうか?
また、元シュンスケコミュニティの仲間で、Xなどで活躍するひろ吉さんの投稿を参考にしつつ、ホロンのアイデアをLLMに応用したメリットとは?
本記事では、その仕組みと実践方法、ホロニック自己内対話プロンプトを作り出すメタプロンプトまで、順を追って解説します。
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ホロニック自己内対話とは
ホロン(Holon)の概念
ホロン は、A. Koestlerによって提唱された「全体であると同時に部分でもある」という概念。
個々のホロンは独立した役割や視点を持ちながらも、同じ中核的なアイデンティティやシステムに属している。
LLMへの応用
従来のロールプレイやマルチエージェントでは、複数の人格が並列に会話しているように見せるのが一般的でした。
ホロニック自己内対話では、「同じ自己を複数に分割」して、あえて内面的な衝突や調停を起こすのが特徴。
その結果、1つのモデルが多面的に思考し、自己矛盾を自然に解消しながら最適解を見出すことを狙います。
例:ホロンA, B, C
ホロンA(革新的アイデア担当): 発想力に振り切って突拍子もない案を出す
ホロンB(保守的検証担当): Aの案を厳格に検証し、問題点・リスクを指摘
ホロンC(調停・最終判断担当): AとBの意見を総合し、最善策をまとめる
これらは「同一の自己=モデルが演じる多面性」だという点が重要で、普通のマルチエージェント会話とは違った深みが生まれます。
ひろ吉さんの投稿とホロンのアイデア
このホロンの概念を取り入れたアイデアは、元シュンスケコミュニティのひろ吉さんが X(旧Twitter)の投稿 で言及していました。
1. ホロニック自己内対話 (Holonic Self-Simulation Prompting)
— ひろ吉🎨 (@HIROKICHI_PD) February 3, 2025
1.1 背景と狙い
•ホロン (Holon) とは「全体と部分の両方として機能する単位」を指す概念(A.…
ひろ吉さんは、ホロンという概念の、全ホロンは『自分が全体(モデル)の一部である』かつ『自分自身が一つの全体として独立に思考する』というところが好みとのこと。また、「一緒に存在しているというか重ね合わせているというか全部自分であると認知している感。なので並列より直列派です」とも。その発想をLLMのプロンプトエンジニアリングに活用できないか――というのが本記事の出発点です。
ポイント: 外部エージェント同士の対話ではなく、同じ自己意識を複数に分割するという視点がユニーク
自己内での衝突を回避できないように設計することで、創造性(自由な発想)と論理性(厳格な検証)をバランスさせることが期待されます。
マルチエージェントブレストとの比較
一般的なマルチエージェントシステム
複数の独立した人格(エージェント)が並行してブレストし、アイデアを出し合う
相互交渉の設計が必要で、意見衝突の解決は「外部」同士の折衝として扱われることが多い
リアルな会議のように見える反面、矛盾や衝突が表面化しないまま終わるケースもありうる
ホロニック自己内対話の利点
同一アイデンティティ
矛盾やリスクを見落とすと「自分自身が破綻」するため、強制的に矛盾を解消する圧力が働く
知識リソースを共有
すべてのホロンが同じ大規模言語モデルの背景知識を参照。会話がスムーズ
プロンプトで容易に拡張
ホロン数や役割をプロンプトの文面で増減できる。プログラム的なエージェント設計より手軽
一貫性と創造性の両立
ホロンAが極端にイノベーティブな案を出し、Bがシビアにツッコミ、Cが折衷案を出すフローで、単なる平均化ではない調停が期待できる
具体的な比較表(イメージ)
| ポイント | マルチエージェントブレスト | ホロニック自己内対話 |
|---------|----------------|-------------------|
| アイデンティティ | 独立した人格が複数 | 同じ自己を多面化 |
| 矛盾の扱い | 外部エージェント同士の衝突 | 内部矛盾として強制解消 |
| リソース共有 | 設計により異なる | 同一LLMの知識を活用 |
| 拡張性 | 新規エージェント追加がやや煩雑 | ホロンを追加するだけでOK |
| 創造性と整合性 | 仕組み次第 | 内面での衝突調和が自然 |
図解:比較イメージ
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