病院との向き合い方

血圧が高いですね
と言われて治療を始めたのは一昨年の冬。

内科のオピニオンリーダーにはかれこれ10年通っている。
手広くやっている先生で、介護のホームまで持っている先生だ。

私はそもそもあまり病院を信用していない。
山崎豊子先生の白い巨塔を見たからとかブラックジャックを全巻集めて読んだからとか、
いや、それも理由の中に入るのだけど、大きな病院での縦割り業務をモロに味わった方ならこの辺ご理解いただけるだろうか。
自分より年下の横柄な態度の先生に「ほら、お前聞いた事ねえだろ?」みたいに専門用語を並べたてられ、肝心な時に
「先生は今学会に行っていません」
財前教授みたいにドイツでも行ってんのかそんな重要な会議なのかと思って翌日尋ねてみると
「いやぁゆうべ飲み過ぎちゃいましてね」
などと首すじにしっかりキスマーク付けて笑ってる先生のどこに信頼が寄せられるかと。
人間らしいといえば人間らしいし、先生も神様じゃないから崇める方がおかしいのだが、その後やってきた看護師の首すじにも同じキスマークがあるの見たらこの病院性欲の塊しかいないのかと骨折で入院してモヤモヤしてメンタルやられて退院する事もあったので、
しっかり向き合ってくれる病院、そう判断出来る所でないと中々心を開けない。

その判断材料は、実は先ほど挙げたブラックジャックの中にあった。
凄腕の名医といえども万能ではない事を教えられる回があったのだが、必ず助けると豪語した患者を死なせてしまい、かつての師から
「人が人の生死を左右する、思い上がりだとは思わないかね?」
と言われた事を思い出し、後悔して頭を抱える最後を迎えるのだが、
医学部や研修を回った先生ならこれを知ってるはずなのである。

絶対はない。けれど最善は尽くす。
それが医療従事者の使命。
あとは患者の意思次第。

その患者も横柄で言う事の一つも聞かなければ、負った病に立ち向かえないのである。
なのでハナから信用出来ないからなんだのと言ってる内は、真剣に治そうという意思をも失っている証拠なのだと気付いた。

その上で、こう心に決めた。
お互いどちらかがしてやってる、と思った瞬間、その信頼関係は崩れる。
診てもらいに来てやってる、のではない。診てもらいに来させてもらってる。
そうするとどれだけ先生がこちらを真剣に診ているか、その度合いが何となくの勘でわかる。

初診では中々それはわからない。
せいぜい2、3回行って、名前すら覚えてもらってない時がその時である。

歯がかなり痛くて、今ではコンビニくらい数ある歯医者からどこを選んだらいいだろと悩んでいくつか行ったのだが、
最初から何も処置せず痛み止めだけ出されたり、痛いと言って来てるのに初診だからと歯石取りと歯ブラシのブラッシングだけ教えられて帰されたり、レントゲンを撮って色々説明だけされてしっかり「撮影代」を取ってそれも何もせず帰されたり……
最終的に選んだ歯医者の先生は、受付からだいぶ待たされたが「あー痛かったでしょう?」とすぐに処置を開始して、その後治療プランを説明してもらい、
今では30年もお世話になって現在も定期的にメンテナンスをしてもらっている先生である。
何より待合室にブラックジャックの単行本が美味しんぼと共に置いてあったのも決定的だった。
この人なら、と。

大事な事は、先生と患者、ではなく、そこには人と人である事、
困った時に本当に後押しをしてくれる人、病を共に戦ってくれる人という感覚が重要ではないかと、
これが私的病院との向き合い方。

先に出てきたオピニオンリーダーの内科の先生も、昨年心筋梗塞でセミリタイアしながらまた復活した「人」なのである。

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