
#017 やさしくされたらどうするか
旅の話の続き。
この頃になると朝露がおりるようになり、
朝起きると寝袋がビタビタに濡れるように
なってきました。
気候が少しづつ変わってきているようです。
ある時、歩いている途中に
ふと腕をみると水ぶくれができていました。
火傷をしたわけでもなく、
また痛みも何もありません。
つついてみると、プチっ。
日焼けした皮膚の下で
汗が行き場を失っていたのです。
一週間以上シャワーも浴びていないので、
日焼けした皮膚はそのまま
鎮座しておられたのです。
■
あるレストランに着いたとき、
そんな話をお店のお母さんにすると、
「コレをつけてみたら」
と、メンタームを持ってきて
顔に塗りつけてくれました。
それから、続けざまに、
「サラダは欲しいか」
と、トマトとサラダを持ってきてくれました。
貰ってばかりで申し訳なく、缶詰をだすと、
おかあさんがパンを持ってきて、
二人で昼ご飯を食べることになりました。
ご飯を食べ終わりウトウトし始めると
「一休みしていきな!」
ということでベッドを貸してもらい
ひと眠りさせてもらいました。
出発の別れ際にも
パンの差し入れをもらったので、
せめてものお返しとして、
Tシャツと日本茶ティーパックを
プレゼントして歩き始めました。
■
「やさしさに触れたいなら
チリの砂漠を歩いてみろ」
砂漠を歩くきっかけをくれた
隊長さんの言葉のとおりでした。
そして、やさしくされたとき、
どうしたらいいのか。
遠慮して断る、
有難く受け取る、
倍返しをする、
その人に返す、
次の人に渡す。
何が正解かわかりませんが、
忘れないようにしたい。
でも、今までもらったやさしさを
忘れてしまっていることも
たくさんあると思います。
だからこそ、
今までもらったやさしさを
その人に返せなくても、
せめて、次の人に渡せるようにしたい。
■
歩き始めて11日目。
300kmを歩き切り、
イキケの街に到着しました。
手頃なホテルを見つけ、
11日ぶりにシャワーを浴び、
11日ぶりにベッドの上で
眠りました。