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#060 禍福は糾える縄の如し

旅の話の続き。

アントファガスタで次の街へ出発する準備をしていたのですが、ここで新たな試練が待ち受けていました。

アントファガスタの次にある大きな街はコピアポになるのですが、その間は540km近く離れています。その途中に、チャニャラルという小さな町がありますが、そこまででも380km離れています。

これまでは、大体200kmごとに大きな街がありました。一日平均30kmのペースで歩いているので、1週間ごとに水と食料の補充ができていました。

ところが、これからのアントファガスタとコピアポの間では、チャニャラルで何かしらの水や食料を調達できると想定しても、2週間程度は水と食料の補充ができません。持ち運ぶ水と食料を増やばいいのですが、そうすると荷物が重くなり一日に進む距離に影響してきます。

とはいえ、2週間分の水と食料は必要なので、これまでよりも一日の消費量を少なくすることを覚悟して、水ボトルをこれまでの6本から10本、パンやクッキーもこれまでの7日分から12日分程度に増やして出発することにしました。


出発当日の朝は、毎回のように気が重く、なかなか起きれませんでした。自分自身に「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせながら準備を済ませて、宿で仲良くなった家族に挨拶に行きました。

「チリの中でも、サンチアゴとアントファガスタは危険だから気を付けて」と忠告を受けつつ、昼前に宿を出発しました。日本アニメ好きの兄ちゃんは、最後の最後まで日本語を教えて欲しいと話していて、その熱心さに圧倒されるばかりでした。


荷物が重いものの、歩き始めてからは、順調でした。海岸沿いの道を進み内陸に向かう長い登り坂入ったのですが、まさに追い風が背中を押し続けてくれて気楽に歩みを進めることができました。坂を上がりきり国道5号線に入るったところに検問所があり、そこで休ませてもらっていると、早速リンゴの差し入れをもらいました。

そこから少し進むと、ガソリンスタンドがあり、そこにテントを張らせてもらうことにしました。その夜は、ガソリンスタンドの灯りの下で本を読んでいたのですが、眠くなりテントに戻るとテント入口の網が破られネズミが入り、貴重な食料が少し食べられていました。

リンゴをもらったり、パンを齧られたり。
禍福は糾える縄の如し。

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