見出し画像

#075 歩くことは迷惑かもしれない

旅の話の続き。

コピアポの街を出て5日目、150kmほど進んだバイェナルという町に到着しました。街の真ん中を川が流れ、川岸には緑豊かな綺麗な道が続いていました。


この頃、精神的に少し追い込まれていました。一つは、歩く旅をしていることが、迷惑ではないかと思う出来事が続いたことでした。

あるとき、いつものように歩いていると、路上でオリーブの塩漬けを売っているおっちゃんに会いました。オリーブの塩漬けは、栄養価が高くサラダに入っていたりおつまみに出されたりするものですが、そん時は殆ど食べたことがありませんでした。

試食を色々勧められ、中でもAceituna sin amargoという種類のものが口にあったので、一袋買うことにしました。感じのいいおっちゃんで、オリーブも買ったことだから、この近くにテントを張って泊まらせてもらおうと聞いてみると、「家の近くにテントを張るのはダメだ」と断られました。

自分の家の庭に見知らぬ東洋人が泊まることに抵抗感を覚える人がいることは当然のことですが、これまでテントを張ろうとして断られたことがなかったので、この時は少しショックを受けました。


ショックを受けることは続くもの。再び歩き始めてしばらくすると、トラックの運ちゃんに会いました。その運ちゃんからは
「歩くときは車道を歩かずに側道を歩け。俺たちは道路税を払っている。旅行者は、道路税を払っているのか?」
と問いただされました。もちろん、道路税は払っていません。


側道は路面が凸凹しており、荷車を引いて歩くには非常に歩きにくいのです。このため、右側通行で向かってくる対向車が見えるように、いつも道路の左側の車道を歩き、車が来ると側道に移動して車を避けるようにしていたのですが、この辺りから交通量が多くなったこともあり、トラックの運ちゃんにとっては、迷惑に感じられていたのです。


それからしばらく路面がガタガタの側道を歩いていたのですが、荷車が壊れそうで心配になり、また気分も落ち込み気味になっていたので、その日は早めに切り上げて岩陰にテントを張って寝ることにしました。

その夜は、自分のしていることが不安になり、何とも言えない寂しさに包まれました。そんな時の心の支えは音楽。ギターを弾きながら歌っていると、幾分か気が楽になり、落ち着いて眠りについたのでした。

いいなと思ったら応援しよう!