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#022 さりげない一言

旅の話の続き。

イキケの街で静養し
体調も戻ってきたところで
次の街に向けて出発しました。
次の目標は230kmほどはなれた
トコピアという街。

イキケからトコピアまでは
海沿いを国道1号線が
一直線に走っています。

気持ちのいいほど真っすぐな道。
ある時、歩いていてふと前を見ると
すぐ先に電柱が立っているのが見えました。
ところが、進めど進めど
その電柱に近づくことができません。
そして、気が付きました。
その電柱は電柱ではなく、
ただ真っすぐ道路が伸びているだけだと。


イキケで購入したテントのおかげで
夜は露で濡れることなく
熟睡できるようになりました。
ところが、そのお陰で寝坊気味になりましたが。

この露に関連して、探し続けたものがありました。
フォッグトラップという施設です。
沙漠の中でも海岸沙漠でしかみられないもので、
昼間に温められて空気中に蒸発した水が
夜の間に冷やされてできる露や霧を
ネットのようなもので集めて水を得るもの。

冷え込んだ朝にクモの巣に水滴がつく原理と同じで
人工的にクモの巣のようなネットを張るだけで
沙漠の中でも水を得ることができる施設です。

結局最後まで見つけることはできませんでしたが、
自然の特徴を活かして生活する人の知恵に
凄いなぁ、と思わずにはいられませんでした。


この頃になると、歩くことにも少し慣れ
また、以前よりも交通量が増えたこともあり
沙漠で何もないはずが、
人との出会いが増えてきました。

ある時は、距離がなかなか伸びず
疲れてきたときに車が止まり、
おっちゃんからパンの差し入れがありました。
そして、15kmほど先で働いているから
そこで待ってるよ、とのこと。
その一言で、やる気をもらいました。
さりげない一言で、力をもらいました。

そろそろ15kmくらいのところで
少し休んでいると、
さっきのおっちゃんが戻ってきて
紙袋に包んだサンドイッチと
リンゴと冷たいジュース2本を
差し入れしてくれました。

差し入れのお返しに何かできないかと
この頃から、音楽を演奏することにしました。
手元にあるのは、ギターとオカリナ。
人前で弾くことなどしたこともなかったですが、
この時ばかりは、演奏できました。


仕事をしている中で、
以前は現場のおっちゃんたちに
缶コーヒーの差し入れとかをしていましたが、
最近いつの間にかしていないことに気づきました。

さりげない一言、
ちょっとした気遣いで
元気になれることを
思い出しました。

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