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#069 再出発!

旅の話の続き。

タルタルの町を出発する日の朝、いつものように憲兵隊庁舎の食堂に朝ご飯を食べに行くのが億劫になっていました。好意を持ってくれていたのに、軽くあしらってしまったことで、どんな顔をして会えばいいのかわからず気が重くなっていたのです。

それでも気を取り直して、朝ご飯を食堂に食べに行き、他の職員と話をしていると、彼女が現れました。何も気にしていないような素振りで、いつものように挨拶ができ、一気に気分が晴れました。

そして、感謝の言葉と一緒に、昨晩仕上げた折り紙工芸をプレゼント。少しは喜んでもらえたようで、先ずは一安心。


それから、タルタルの町でお世話になった人に出発の挨拶回りに行きました。挨拶を早々と切り上げて出発しようと思っていたのですが、そう上手くいかず、強面警官の家でお昼ご飯をご馳走になりました。

タルタルの小学校には給食がなく、子供たちはお昼休みになると一度家に帰ってご飯を食べてから、午後再び小学校へ登校する、という生活をしています。この昼休みの登下校には親も付き添うのが慣例になっているようです。

強面警官の家でお昼ご飯を食べた後、そこの子供たちを学校に連れていくのに同行しました。東洋人が珍しいからか、学校に入るや否や、まるで有名人になったかのように、子供たちに囲まれました。

授業が始まるか始まらないかという時に、興味本位で教室の中を覗いていると、先生が近寄ってきて、そのまま教室の中に通され、教壇の前に立たされました。そして、「チリ人」と「東洋人」の違いを子供たちに問いかける授業が始まりました。なんと機転の利く先生だこと。自分でも考えたことがなかったのですが、先生は「目の色が違う」ということに注目して説明していました。

そして、最後に「日本の歌を紹介してほしい」というリクエスト。チリの人は歌が好き。ギターもなくアカペラで童謡の「ふるさと」を独唱しました。

兎追いしかの山 小鮒釣りしかの川
夢は今もめぐりて 忘れがたき故郷


それからは、憲兵隊庁舎に荷物を取りに行き、職員たちに挨拶をして別れました。好意を寄せてくれた彼女からは、ポシェットをもらい、左右の頬っぺを触れ合わせる挨拶をして別れました。心の中ではドキドキしていました。


本当はここから歩いて行く予定だったのですが、国道5号線の交差点まで見送りたいという気持ちに感謝して、この時ばかりは、車で一緒に行くことにしました。歩けば数時間かかる20kmの道が、車で走れば一瞬のこと。

国道5号線の交差点までくると、そこで本当のお別れの挨拶をして、再び歩き始めました。

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