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#063 沙漠の中の出会い

旅の話の続き。

何もない砂漠の中を歩いているのですが、よく人との出会いがあります。むしろ、何もない砂漠の中だからこそ、出会える人がいます。

この頃は、自転車で旅をしているチャリダーに立て続けに出会いました。スウェーデンの人、スペインの人。

沙漠の中で出会う人は、初対面のはずなのですが、初対面ではない気持ちになるのが不思議です。歩いているとき、前から自転車をこいでいる人が向かってくるのをみると不思議と笑いが止まらなくなりました。そして、近くに来ると「おう、お前もか」というような雰囲気でお互い笑いながら挨拶をかわしていました。同じような奇行をし、同じような境遇を経験しているからなのか、不思議と仲間意識が芽生えるものです。

自転車で旅をしている人にとって、向かい風はとても厳しいようです。風の抵抗を受ける荷物を載せた重い自転車を向かい風に向かって進む姿は、心に訴えかける何かがあります。向かい風に向かって歩くことに苦しくなった時には、向かい風に向かう自転車を思い出し、自分を鼓舞するようになりました。


また、時々点検や修理のために車が止まっているときがあるのですが、ここでも沙漠の中だからこその物語がありました。

ある時、何かの故障で車が止まっていたところ、そこを通りがかった車がとまりその運ちゃんが故障車を直しているところでした。休憩がてら荷物を置いてその様子を見ていると、故障した車の運ちゃんがヒッチハイクで戻ってきました。アントファガスタまで修理部品の調達に行っていたようです。

それから、しばらくすると故障車の修理が無事に終わりエンジンがかかるようになりました。故障した車の運ちゃんがお礼にお金を渡そうとすると、修理した運ちゃんは「それは受け取れない」とばかりに断り、そのまま走り去っていきました。チリの人の一面が見れた気がしました。


沙漠の中のような厳しい環境では、一人ではどうすることもできないことがあります。その環境の中では、お互いにその厳しさが分かっている分、お互い助け合おうとするのかもしれません。

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