
#062 歩けば人に会える
旅の話の続き。
アントファガスタからトコピアまでの500kmを超える行程で一つ目標を立てることにしました。それは、落ち着くこと、キレないこと。荷物が重いからといってキレないこと、疲れたからといってキレないこと、ヤケをおこさないこと、焦らないこと。それはしょうがないこととして受け入れた上で行動すること。
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歩くことに目標を立てたことで、一つ心の中の整理がついたのかもしれません。歩き始めた当初は、自分で選択したにもかかわらず「何で歩いているんだろう」と自分に問いかけながら、弱音を吐いていました。それが、歩き始めて1か月以上経過した今頃になると、歩くことにこだわり、そして歩くことを楽しみ始めていました。
この心境の変化のきっかけは何だったのか。振り返ってみると、人との出会いがきっかけになっていたのかと思います。沙漠の中を歩き始めたときは、好奇心や物珍しさの気持ちが先立っていたのですが、その気持ちは直ぐに萎え歩く意味を見失いました。それでも歩き続ける中で、人と出会い、人の優しさに触れて、歩くことの意味を見出したのかと思います。
いつの頃からか、疲れて座り込んだ時に「歩けば人に会える。立ち止まれば誰とも会えない」というフレーズを唱えることで自分を奮い立たせていました。人見知りで人に会って人と喋ることが苦手な自分にとって、思いもよらないフレーズでした。
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周りに何もない沙漠を歩いていると、心奪われる景色に遭遇することがあります。その一つは、夕焼けです。真っ青な青空に真っ赤な雲が浮かび、幻想的な景色が広がります。そしてしばらくすると、本当に炎のような夕焼けになります。沙漠の風景がより一層いい雰囲気を醸し出し、地球上ではない月面に立っているかのような錯覚をおぼえました。そして、満月の月明りの明るさも、このとき初めて知りました。