教団X・臨床真理・妻はサバイバー
先日、X(Twitter)で、「ボリュームがあって、ゆっくり時間をかけて咀嚼していくような小説(物語)が久々に読みたい。どなたかおすすめありますかね」と投稿したところ、何冊かおすすめしてもらいました。
どの本もとてもおもしろくて、睡眠不足になるぐらい夢中になって、読み耽ってしまいました。
3冊それぞれの感想を記します。
教団X(中村文則)
奇妙な老人・松尾を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、謎のカルト教団(「教団X」)。これに翻弄される人々のお話です。
宇宙、宗教、脳、量子力学、素粒子、カルト教団、公安と警察、テロ、内戦、そして政治…様々なことについて言及されていて、密度の濃い読み応えのある小説でした!
カルト教団の内部のシーンでは、「え、私が読んでるの官能小説かしら?」と思うぐらい執拗に性的描写が出てきます。リアルでとても生々しい…。作者の方の実体験か願望かと思うぐらい。笑
性的欲求のもたらすエネルギーは(個人差がありますが)とても濃く深いもの。そこに強い孤独感や社会からの疎外感がプラスされると、こうした性の解放を謳った強烈なカリスマのいるカルト教団にのめり込んでしまう…十分あり得るでしょうね。
カルト教団の内実、そしてその危険性についてもよく描かれてるなあと思いました。
臨床真理(柚月裕子)
あらすじ…人の感情が色でわかる「共感覚」を持つという不思議な青年・藤木司を担当することになった臨床心理士の佐久間美帆。知的障害者更生施設に入所していた司は、親しくしていた少女、彩を亡くしたことで問題を起こしていた。彩は自殺ではないと主張する司に寄り添うように、美帆は友人の警察官と死の真相を調べ始める。だがやがて浮かび上がってきたのは、恐るべき真実だった…。
コチラも、先に紹介した「教団X」と同じく、フィクションなのに、すごい真実味がある内容で…。
知的障害者の方が入所する施設などにおいて、虐待や性加害などは、実際に昔からよくあり得ることなのでしょう。絶対にあってはならないことですが、完璧には防ぎようがない…。
「教団X」でも、性的欲求のエネルギーの怖さを感じましたが、この小説でも同じくそれを感じました。
妻はサバイバー(永田豊隆)
コチラは小説ではなく、ノンフィクションです。
摂食障害やアルコール依存症などを患うようになった妻の闘病について克明に語った朝日新聞社の記者の方の体験記です。
「事実は小説よりも奇なり」と言いますが、まさにそれがこの本です。
これが実際にあった出来事なのだ、実際のご夫婦の間に起こっている出来事なのだ…と思うと、心底胸が苦しくなり、心の傷や、自分や家族の今後についても考えさせらました。
「ひとは、一人が別の一人の面倒をそっくり見るようにはできていません」
…これは、本の中に書かれてあった一文です。臨床心理学者・西川勝さんの言葉だそうです。
家族の闘病も、介護も、子育ても、そうだと思うんですよね。一人で背負うべきものじゃないし、一人で背負えない。経験者はみんな感じてることだと思います。
こと家族の精神的な疾患となると、助けを求めるのも躊躇するし、周囲も経験不足によりどうしたらいいかわからず、孤独と孤立を深めてしまうのでしょう。
「いつか自分にも、自分の周囲の誰かにも起こり得ること」と、自分事として捉えられるように、一人でも多くの方にこの本をぜひ読んでほしいと思いました。
私が好きな小説
私が好きな小説もご紹介します。
私は作家の村上龍をリスペクトしておりまして、20代の頃は、村上龍みたいな作家になりたいと思っていた時期がありました。そんな私の村上龍作品5選です。
●「最後の家族」…万人におすすめできる万人向けの村上龍
●「半島を出よ」…個性的なキャラ、話の展開、読み応えありすぎる
●「コインロッカー・ベイビーズ」…不遇な主人公たちのカッコイイ物語
●「イン・ザ・ミソスープ」…グロいけどサイコパス犯罪者の心理ってきっとこう
●「空港にて」…どこにでもありそうな話だけど希望に満ち溢れた短編集
村上龍以外を5つ挙げるとしたら、以下の小説が好きです。
●「グレート・ギャツビー」…不倫は文化だぜ、世界共通なんだぜ
●「風と共に去りぬ」…全ての女性、読んで
●「春の雪」…美しい
●「空中ブランコ」…いやもう小説でここまで笑ったの初めて
●「魔女たちの長い眠り」…小学生の時読んで今も面白かった
読書って楽しいですね。
おすすめあればぜひ教えてください!