見出し画像

落合のオペレーター

11/24
今日は同期芸人の落合のR-1グランプリ1回戦のオペレーター(音響)。
俺自身も21日にこっそり出場して、こっそり落ちていた。

会場へ向かう朝の電車の中で、俺は3日前のことを思い出していた。
21日の夜、自分の名前が呼ばれなかった事実をなるべく乾いた声で相方に告げた。結果を待っている間は一丁前にソワソワしていたくせに。批判なんかされるわけないのに「つまんないネタしちまった」と勝手にバリア張って、わざとらしく笑い飛ばしてイキがった。落ちたこと発表しても損するだけだと、誰に見られる訳でもないのにツイートもしなかった。
なんか突然にそういうことの全部がどうしようもなく情けなく思えてきて、とんでもなく落ち込んだ。朝から3日も前のことで落ち込むなんて本当に意味わかんないし、キモい。俺は運動神経も悪いけど、心の動かし方まで下手糞な人間なんだと嫌になる。
こんな状態でオペレーターをしたら沈んだ気持ちが感染して落合のネタに影響するんじゃないかと心配になって、ビニールの手袋とマスクを買おうと思ったが、それは本当に意味がないことなので辞めた。変に冷静さ持ち合わせてんのもキモい。
とはいえこんなテンションで会ったら、本当に落合に悪影響を及ぼす。どうにか気分を上げなくては。会場の最寄り駅に早く着いたからブラつく。ローソンに入ると肉まんが期間限定で108円で売ってた。いいじゃん、いいじゃん。後で落合にも教えてあげよう。肉まんを食べて落合と合流。

落合は朝から元気でずっと喋ってた。この人は時間帯問わずずっと喋ってる。こちらのテンションは関係ない。ありがたい。
あと落合のいいところは、聞いて欲しいではなく、純粋に言葉にしたいという思いで喋ってることだ。だからこちらが大げさなリアクションを取らなくても、相槌さえ打っとけばずっと上機嫌で話してくれる。きっとペットやサボテンにも話しかけるタイプの人だ。食材なんかにも話しかけてるかも。

落合は、台本を印刷するために立ち寄ったコンビニに、一口しか飲んでない16茶のペットボトルを忘れてしまっていた。彼は一瞬辛そうな表情を見せたが、すぐに切り替えて
「でもこれからも、こういうことは絶対あるから、こうならないように気を付けるのではなく、こういうことに慣れるメンタルを作るのが大事」
と語った。
俺は「なるほどね」と静かに返したが、内心すごく感心していた。
心の中では「なるほどねっ‼︎‼︎‼︎」ぐらい感心していた。
確かに、こういうことはこれからも絶対ある。
R-1グランプリだって来年また1回戦で落ちたら、俺はまた強がってイキがるだろう。それはしょうがない。そういう自分はこれからもずっといるんだ。でも別に悪いことをしてる訳じゃないし、誰かを傷つけてる訳でもない。ただダサくて情けないだけだ。それだけ。
まずはそういう自分に慣れる。もちろん落ちることに慣れてはいけない。だから悔しいという思いはちゃんと持っておく。でも別に落ち込む必要はないのだ。悔しがりながら、強がる自分もいるんだなって、その上で何クソちくしょうだ。
馬鹿は死ぬまで治らない、なんて言葉があるけど本当にその通り。人間の本質なんて一生変わらないのだ。俺は一生、ダサくても情けなくても強がるんだ。ダサ情でも強がる宣言だ。
ちょっとご都合解釈っぽいが、とにかく落合の言葉は俺の心に響いた。

R-1の後、落合と散歩して、雲呑食べた。雲呑に黒酢みたいなのかけて食べるんだけど、それがすごく美味しかった。お酢大好き。スープに入れても美味しかった。
落合が、オペレーターやってくれたからと言って雲呑ご馳走してくれた。ありがとう。

雲呑食べた後また少し散歩した。
見上げれば空が青く澄んでいた。
ぼかぁ冬の高い空が好きです。
それにしても今朝はなんであんなどうでもいいことで、落ち込んでいたんだろう。
今はむしろ強がるのもイキがるのも、とても人間らしいカッコのつけ方なんじゃないかと思える。もしや素晴らしく立派なことなのでは、とすら思える。
仮にそうじゃなくて、ダサかったり情けないことだったとしても大丈夫。
だって誰も不幸にはしてない。だから罪じゃない。俺に生きる価値があるかわからないけど、罪じゃないから罰を受ける必要はない。だから別に胸を張って「情けないなあ」とヘラヘラ嘆いていればいいのだ。
俺に生きる価値があるかわからないけど、1000円あれば美味しい雲呑が食べられる。しかも今日は落合のおかげでタダで食べられた。
俺に生きる価値があるかわからないけど、1000円で美味しいものが食べられるなら、この世界には十二分に生きていく価値がある。
突発的に気分を落としても、友達との会話と美味しいもので気分はスーッと晴れていく。単純でいられることの幸せ。
ああ今日もいい1日だった。

いいなと思ったら応援しよう!