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12/14 鼻の夢
鼻の夢
実家に帰って母と叔母(母の妹)に会う。この前ストレートパーマをあてたことを伝えると、関西出身の2人は「ええやん、ええやん」と褒めてくれた。だけど本当に「ええやん」2回ぐらいで俺を褒める時間は終わって、ハハが怪訝な表情で俺の顔を覗いて言った。
「アンタは鼻がなあ。鼻がアカンわ。」
はっきりアカンと言い切った。唐突な肉親からのディスり。オバもハハに同意して、2人して「整形したら」と言い出す始末。親から整形を勧められるなんて、時代だなあ。
最近は相方にも「下顎が太ってるから痩せろ」と言われている。
相方に痩せろと言われたり、親から整形を勧められたり、まるで欠点ばかりが目立つような俺の顔。それでも産まれてから25年この顔で生きてきた俺は自分の顔を漫画みたいで面白い、味のある顔だと思ってる。特別大好きではないが、全然嫌いでもない。満足はしてないが、悲観なんかしてない。
なのにあんまり整形を勧められるもんだから、「じゃあお金出してよ」と言ってみた。するとオバが「お姉ちゃんがこんな風に産んだんやから、出してあげてよ」と言い方は気になるものの、味方してくれた。
意外な雲行き、おやおやこれは。
ハハは少し渋りながらも言った。
「じゃあ見積もり持っといで」
まさかの展開だ。出資していただけるのであれば話は変わってくる。そうなるのであれば、俺だってこんなペチャンコで黒ずんでて、まるで潰れた泥団子のような鼻とはぜひともおさらばしたい。
持論だが鼻は顔の中で最も重要なパーツだと思ってる。鼻さえキリッと通っていれば、他のパーツがガラクタのようなものであっても割とカッコよく見える。鼻がいいだけでイケメン枠に入ってる芸能人も大勢いるだろう。それだけ鼻は重要なパーツだ。
逆に他のパーツに光るものがあっても、鼻がダメであればもうダメだ。その例が俺だ。俺は目は二重だし、まつ毛も長いし、唇の血色もいい。俺の顔にだって褒めるべきところはあるのだ。だが真ん中に付いてる間抜けな鼻のせいで全てが台無しにある。
さっきは強がって漫画みたいな面白い顔と自分では気に入ってるように書いたが、本当は間抜けな鼻がついてる変な顔である。本人からしてみれば面白いことなんて一つもない。
あと現実世界で生きてるのだから、漫画みたいな面白い顔でいいわけがない。たまったもんじゃない。
だけど鼻を整形できるとなると。おお夢のようだ。今まで真ん中が間抜けだったから顔全体も間抜けになったが、真ん中が小さくてキリッとした鼻に変わるのだ。それだけでもうかっこいい。
想像しただけだが、だいぶ売れそうだ。
いやもうお笑いだけでなく、俳優業とかも忙しくなってきそうだ。おいおい困っちゃうな。朝ドラとかいい役で決まるんじゃないか。
浮かれている俺にハハが「アンタ見積もりだけじゃなくて、ちゃんとリスクとかも調べや」と言った。元気よく返事をする。
先程までは、やかましく口の悪いオカンだったが、今では整形費用を出してくれる優しくて素敵なお母様だ。心なしか美人にも見えてくる。真ん中に付いてる鼻は俺と同じカタチをしてるけど。でもきっとこの人は、息子の友達が家に遊びにきた時に、個包装のお洒落なお菓子を出してくれる上品なお母様だろう。
整形費用を出してくれるとなった途端に、見慣れたハハの顔が、自慢で理想のハハの顔に見えてくるのだから、まあ俺はそれだけ鼻整形に期待しているということだ。
正月にまた実家に帰るため、それまでに色々調べておこう。
夜、湯船に浸かりながら整形後の自分を想像していると、自然と口ずさんでいた。
チャットモンチーでハナノユメ