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ジークアクスのネタバレ真相考察~シャロンの薔薇とは~
ジークアクスを見てきた。
以下、完全にネタバレなので、視聴した人だけ読み進めることを願う。
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物語のレールが切り替わる瞬間
冒頭、テレビ版機動戦士ガンダム第1話というレールの上を滑りながら、ムサイやザクが新しくリファインされて出てくるので「ははあ、ビックリしたけど、これは最初のガンダムを繰り返すのだな」とミスリードされる。
異なるのは、ジーンの暴走が無かったことだ。1stガンダムで「シャア少佐だって、戦場の戦いで勝って出世したんだ」「手柄を立てちまえば」と彼は言う。ルウム戦役で5隻の戦艦を沈めたシャアの武勲に、憧れたのだ。
この部下の暴走を目にして、シャアは「認めたくないものだな、自分自身の、若さ故の過ちというものを」と言う。彼はその武勲を「若さ故の過ち」だと思っている。おそらくシャア自身も、命令違反や若さ故に突っ走って戦艦5隻を沈めたのだろう。それをジーンが悪い意味で見習ってしまった。ここからケチがついて、1stのシャアはガンダムに翻弄される。
しかし、ジークアクスのシャアは、これを反省していない。若さ故の過ちだと思っていないからこそ、偵察任務には、あの目立つ赤いザクで自ら乗り込んでいく。
テレビ版では、ルウム戦役後になんらかの反省があったからこそ、シャアはムサイに引っ込んでいたのだ。
グーグルで「ルウム戦役のときのシャアの上官は?」と聞くと、AIが「マハラジャ・カーンです」と答える。ハマーンのお父さんだ。ドズルはシャアのために祝勝会を開こうというくらい彼のことを買っているので、もしルウムの戦果に苦言を呈したとすると(AIがホントのことを言ってると手放しには思えないけど)マハラジャ・カーンこそがシャアを諫めて、足を止めさせた原因者だろう。だが、ジークアクスの世界で、シャアはその苦言をつっぱねた。
本作で物語のレールが切り替わったのは、ここだ。
昔から「ジーンさえ暴走しなければ」という声が散見されるが、本質的には「シャアがこの一歩を踏み出すかどうか」が、ジオン勝利の鍵となる。
このシャアは反省せず、ガンガン進む。
余談:ハマーンの親父に言われて足を止めていたら、代わりに行かせたジーンは暴走するわ、キャッチしていたV作戦はみすみす獲り逃すわ、反省してジャブローでは真っ赤な軍服で潜入したけど、練度が上がってるガンダムにこてんぱんにやられて逃げ出すわ、宇宙まで追っていったら恋人は獲られるわ、陰キャの少年とみくびってフェンシングを挑んだら脳天を貫かれそうになるわ──と、シャアの人生にケチがつきまくったのは、こいつの親父がいらんことを言ったからだよな・・・という気持ちが、ハマーンを見る目に少し入っていたとしても、不思議ではない。(でも、マハラジャ・カーンは政府高官ではあっても、軍人ではないらしいね。AIのガセかな?)
さらに余談:「シンゴジラは、不幸な偶然や無能な人物が、事態をかき回したり停滞させないから好きだ」という声を聞く。ジークアクス前半シナリオは庵野氏によるものと聞くが、本作のシャア快進撃に通じる嗜好を感じる。
四ツ目のガンダムは庵野氏の念願か?
さて、ジークアクスのシャアは反省していないので、自分で偵察に出て、ガンダムを鹵獲する。そして快進撃が始まる。
このときのガンダムは、目が複数ある。通常のツインアイの下に、もう一対。クアッドアイ(四つ目)だ。思い出すのが、エヴァンゲリオン弐号機。アスカの乗っているエヴァもまた、目が四つある。
以前、スパロボにエヴァが参戦するとき「シャアを弐号機に乗せたいけど14歳じゃないからダメだった」みたいな話を聞いたことがある。庵野氏も乗り気だったが年齢制限に阻まれたそうだ。その後にシンエヴァンゲリオンでゲンドウがエヴァに乗る展開を経て、今回、エヴァのように猫背で、弐号機みたいな四ツ目(クアッドアイ)で、そして赤く塗られるガンダムに、シャアは乗った。庵野氏の念願を(多少ねじくれたが)叶えたデザインであると思う。
シャアを歪めないためのお膳立て ガルマの退場
シャアは、グラナダへのソロモン落としに便乗する際、ザビ家への復讐心を持っていることを打ち明ける。しかし、1stのときほど、固執も歪みもない。
声優さんの演技も、池田さんの胸に燃える悔しさを隠した声ではなく、ちょっと平板な感じのするサラサラと流れるような雰囲気。
理由は明白だ。ガルマが軍隊を抜けているので、旧友を謀殺しなくてもよいためである。
ホワイトベースをシャアが奪ってしまったため、ガルマのいる北米にはそのホワイトベースが、出世のチャンスそのものが落ちては来ない。
本作で、ザビ家の男子がアースノイドと結婚するという「無理」を、父親にどうやって通すか。連邦の機密を手土産に、というプランが立たないため、イセリナのためには「ジオンを捨てる」という選択肢しか無かったのでは無いか。ただでさえ、現場の兵士からは「ガルマ大佐はまだお若い。俺たちみたいな者の気持ちはわからんよ」と言われていた。実績が無い上に立場からも離れれば、ガルマは軍隊にいられなくなる。
ただ、国を捨てたなら一大事であり、もっと大きく語られるはず。軍隊を抜けて、政治家に転身したのかもしれない。彼はアイドル的な人気や人望があるので、軍人よりはこちらの方が向いていると思う。
何にせよ、シャアの前からガルマは消えた。
シャアの白スーツの叫びとララアへの執着 その排除
1stでシャアがギレンの演説を聴きながら「ぼうやだからさ」というシーンがある。このときの彼が着ているのは白いスーツだ。このセレクトは、サングラスで本心を覆いながらも「俺はわるくない。俺は潔白だ。あれは正当な復讐なのだ」という隠しきれない叫びなのだと思う。
この慟哭のまま、傷心のシャアはインドでララアと出会ってしまう。「誰にも話せないけど俺こんなに苦しんでいるんだ」という気持ちを服装で表しているシャアが、おそらくそれを正確に見抜く少女と出会ったのだ。
理解されがたい自分の特性に近しい素養を持ち、自分を立ててくれる、不憫な身の上のこの異性を、運命の恋人だと錯覚してむしゃぶりついてしまうのも無理からぬことだろう。
ここからケチがついて、彼は逆シャアまで(死ぬまで)これを引きずる。
ところが、その傷心そのものが無いので、シャアはララアを求めないし、出会わない。ジークアクス冒頭、シャアは鬱屈しないルートを驀進する。
空いた場所を埋めたシャリア・ブルの、その心ををえぐり去るシャア
さらに、重要な要素として、シャリア・ブルの存在がある。
1stで、彼とシャアがあまり意気投合しなかったのは、ララアがいたからだろう。ところが、ここにはララアがいない。
薄暗い照明の個室で二人きりで手を握り合うシャリア・ブルとシャア。見ていて「わあ、エロい!」と思ったが、演出意図がソレなら、その後のシャリア・ブルがシャアに固執するのも分かる。
1stでのシャリア・ブルは、単機でアムロに撃破されてしまったが、ジークアクスでは、シャアを支える頼もしい戦力として背中をピタリと守る。
断ちがたい絆が結ばれてしまったのだ。シャリア・ブルも、惚れ惚れしながらシャアのあとをついていく。
早くから覚醒していた彼は、ニュータイプ感覚を親身に理解できる相手を求めていたはずだ。そこに現れたのがシャアだ。この関係は、1stでのシャアとララアの関係に似ている。ニュータイプという特殊な感覚者にとって、得難い、ただ1人の理解者。シャリア・ブルにとってのシャアとは、そういう人だった。
シャアを失ったシャリア・ブルは、ララアを失ったシャアと同じレベルの執着にとらわれる
充実した、満たされた戦いの日々。そのシャアが、突然に知らない誰かと交信し、目の前から消えてしまった。
この後、ジークアクス後編で、シャアの姿を探し求めるシャリア・ブルが描かれる。どれほど重い感情をもっているのかと、ジークアクス映画感想でも「湿り気のある未亡人」と言われるほどだ。
だが、我々はこの感情の激しい熱量を知っている。
彼の目の前で起きたのは、アムロと交歓し、突然に消えてしまったララアと同じ構図だからだ。
正史のシャアは、いつまでも、夢に見るほどララアへの恋情を焦がしている。劇中で描かれるシャリア・ブルの重たい感情は、正史シャアのそれと同じ苛烈さで身を焦がし続ける。シャリア・ブルの魂もまた、一部を消失させたソロモンのように、シャアの形にえぐり取られたのだ。
彼の胸に、二度と塞がらない穴が空いた。以後、シャリア・ブルはそれを取り戻すことだけを考えて、生きていく。フラナガンスクールが出来て、たくさんのニュータイプに囲まれるようになっても、シャリア・ブルはシャアだけを求める。
それまでのシャアは、気遣い無くお互いがフルパワーで戦えるバディを得て、もはや無敵となり、ジオンの未来を左右する作戦(グラナダへのソロモン落下阻止)すら一手に任されるようになる。
このルートでこそ、ジオンは勝てる。
ジークアクス前半は、そういう物語だ。
シャアの人生を勝利的に終わらせるために必要だった「女運」の切除
ガンダム正史での、シャアの女運の悪さをご存知だろうか。
ララア、キシリア、レコア、ハマーン、クエス、ナナイと、彼が出会うのは、基本的に恐ろしくキツい性格か、もの凄く地に足のついていない女性だ。
幼少期に母親と引き裂かれながら、母性的な優しい女性と縁を持てずに来た女運の偏りの末に、シャアは「母なる大地とか、別に滅びても良い」という精神性を身につけてしまった。アクシズ落としという、尋常でない狂行に走れたのは、この土台が大きい。
ジークアクスでは、この点もシャアの人生を勝利的に終わらせるための環境整理の対象となった。本作では、彼の周囲から徹底的に女が排除されている。彼を受け止められる役割は、戦場の絆を結んだドレンか、同類シャリア・ブルだ。米津玄師にああ歌われるのもやむを得ない。
ただ、切除しきれなかった女運の悪さのが、最後の最後でキシリアに乗っかって状況を作り、実の妹に乗っかって襲撃してくるのは、本当にシャアの宿命だと思う。
二つの世界・二つの絵柄 シュウジが乗ってきた「ランチ」
さて。
前半と後半が切り替わり、絵がおおきく変化した。
前半は、一年戦争を描くにふさわしい、ガンダム・ジ・オリジンのような映画クオリティの重厚な作画。
そして後半は、テンポのよいテレビ用の軽快な作画だ。まるで絵が違う。
両者に共通するのはモビルスーツの描き方が、だいたい同じという点だ。
絵柄を変えているのは「異なる別々の世界が、2個存在すること」を示している。
その前提で作品を眺めると、明らかに異質なものがこの世界にシレッと存在する。
シュウジの隠れ家にあった「ランチ」だ。
※動画37秒にランチ 動画が公開されたので挟んでみた。
ジークアクスでのメカデザインは、すべてリファインされている。
ホワイトベースは、二本の「ト」の字の円筒にエンジンや艤装を取り付けた形になっており、1stガンダムのシルエットだけを残した、まるで収斂進化のようなフォルムで成立している。しかし、まったくの別物だ。
ムサイもザクもガンダムも、ぎりぎり「そう見える」意匠を保っているが、設計思想そのものが異なるし、構造から別物だ。
ところが、このランチだけは、1stガンダムの、あの連邦軍の脱出艇のランチ(スペースランチ)が、そのまま存在している。
そして、シュウジはあの赤いガンダムを所持している。
(ところで、ビットも燃料切れを起こすし、頭部バルカンもすぐ弾切れを起こすと描写されていたので、ガンダムの運用には相当なバックが、運用艦が必要だと思うが、その辺はなぜ出来ているのだろう。ひょっとして「先週くらいに」来たばかりとか? まあ、それはともかく)
シュウジは、あのランチに乗って、1stの世界から来た唯一の人間なのではないだろうか。戦災孤児が多かろう世で、難民が多いサイド6なため目立たないが、彼には家族もなく、世になじまず、一枚でヤバいブツと取引できるような換金性の高いコイン(金貨?)「だけ」を持ち、表側の土地に居を構えず、どことも繋がりを残さず生きている。完全な根無し草として描かれており、その雰囲気を持っている。
では、彼がジークアクスの世界に来たのは、いつだろう。
サイコミュ暴走事故「ゼグノヴァ」でつながった二つの世界
シャアが、グラナダに落下せんとするソロモン内部で、アクシズを割ろうとしたロンドベルのような作戦中に「何か」と出会って交信する。
シャリア・ブルには、その相手が誰なのかわからない。
後に「ゼグノヴァ(? だったっけ? ゼクノヴァ?)」と呼ばれるサイコミュ暴走事故が起きて、ソロモンの一部と、シャアを載せたガンダムが消失する。
どこに行ったのか。あくまで仮説だが、これを「1stの世界に転移した」のだと考える。ニュータイプのあの「キラキラ」を通じて、発光したソロモンの一部ごと、向こうの世界と空間を交換してしまったのだ。(えぐれたソロモンの様子は、七夕の国の描写に似ている)
ソロモンの欠けた部分。むこうに転移した部分は、あっちの世界でモウサ(アクシズの丸いところ)にでもなってるのかもしれない。
そして、中間世界か、何らかのドラマがあってか、連邦兵としてア・バオア・クーかソロモンにいたシュウジが、乗っていたランチごと、そしてシャアの赤いガンダムをもらって、ジークアクスの世界に転移してきている──のではないかと予想する。
シャアを呼んだのはララア その結果
ゼグノヴァのときシャアが交信した相手は、1st世界のララアだろう。
ここまで丁寧に「ララアがジオンと関わらない世界」が描かれてきた。
ニュータイプのサンプルとしてサイコミュを任されるのはシャア本人だ。その世界で、彼は「ラ・ラア」という声を聞く。ニュータイプとして成長を遂げたララアが、モビルアーマーに乗り、サイコミュを通じて発信する声だ。サイコミュの暴走で、ジークアクスの世界は、一瞬だけ1stの世界と、それも向こうからララアが発信するサイコミュ波に同調して繋がったのだ。(タイミングとしては、両世界で「シャアが妹を知らずに殺そうとするのを制止するララア」という形で、発動条件が重なる)
シャアはそこを通って、1月3日に1stの世界に飛んでしまう。しかも飛んだ先は、劇場版ではなくテレビ版だ。
シャリア・ブルの存在がそうだし、ザクレロのパイロットであるデミトリも居たので、ジークアクスもテレビ版準拠の世界により近く並走していると思われる。
この最終回(第43話「脱出」)で、キシリアをバズーカで討ち果たし、サラミスの砲撃をトドメに受けて爆発したザンジバルに巻き込まれて「テレビ版でのシャアは死んだ」という世界。そこに、入れ替わるように現れるジークアクス世界のシャア。まさかジオンが負けているとは、と驚きつつ、大局を見れば、いまさらこの赤いガンダム一機あったところで・・・と思ったのか、何かあったのか。
結果だけはわかる。シュウジ、つまり連邦側のニュータイプ素養のある人間が、赤いガンダムを交換してもらって入れ違いにジークアクスの世界に入ってきたのだ。
では、シャアがガンダムの代わりに交換したものは何か。シュウジの連邦軍軍籍だろう。ひょっとすると、シュウジ(イトウシュウジ)という名前は、日本語中心のサイド6に入り込むための偽名で、本名は「クワトロ・バジーナ」とか言うのかもしれない。(シャアがアクシズに潜伏するなら、これは無意味?)
ゼグノヴァを引き起こした鍵 あれはアルテイシアだったのか。
話をもどして、ゼグノヴァの状況。
ソロモンでのゼグノヴァを通じて正史世界に行ってみれば、シャア・アズナブルはキシリアを殺害してもろともに爆死。悲願だったザビ家も勝手に滅んでいる。シャアは新聞か何かで見て、きっと虚しい思いをしたことだろう。
彼にとって、ジークアクス世界での心残りといえば、顔の見えなかったアルテイシアだ。
あのガンキャノンの軽装版にのっていたのは、本当にセイラさんだったのだろうか。
連邦サイドのストーリーがあれば、正体がわかるかもしれないが、顔が伏せられているなりの伏線があるはずだ。顔を出すと決定的にバレてしまう何かがあるはず。
車田漫画で、初登場の強敵は顔が逆光隠れしているように、隠す理由は演出以外にもあると思われる。(シャアの未発達なニュータイプ能力では、人間はぼんやりとしか把握できない・・・という意図かもしれないが)(あと、アムロ以上の酷使のされ方をして、セイラさんが鬼みたいな顔になってて見せられないのかもしれない。※詳しくは「あの人はどこに」参照)(とすると、ジークアクステレビ放送時には、連邦視点からの描写が加わって、その上で表情が出る?)
仮に、あれがセイラさんだとすると、シャアのニュータイプ能力の覚醒に必要なトリガーとして、彼女は登場したのだと思う。
それまで、未来予知やモビルスーツの直感的操縦などにだけ才能を発揮してきたニュータイプ能力が、冴えに冴えて、ついに装甲越しに人間を把握できるようになった。つまり血縁である妹の魂を感じ取ることを初手に、シャアの能力は拡大し、ソロモンを鍵として1st世界の向こうにいるララアを掴むことができるようになった。
そして、世界を超えてしまったのだ。
ソロモンでの消失現象は、そういう事態なのだと考察する。
「シャロンの薔薇」とは何か
さて、ここでキシリアの口から「シャロンの薔薇」というキーワードが出てきた。オブジェクト(物体? 実験体?)と呼ばれている。それが消失したとされている。
シャロンのバラといえば、ここではスタインベックの「怒りの葡萄」に出てくるローザシャーン(ローズ・オブ・シャノンが訛った名前)と考えて進める。
「怒りの葡萄」は、大資本によって土地を奪われ、故郷を追われて移住を余儀なくされ、移住先でも軋轢に苦しむ物語である。
ローザシャーンは妊娠中に子供を失い、その子にあげるはずだった乳を、死にかけた自分の父親に飲ませる。そのシーンの前に、彼女の母親が聖書の言葉を引用して言う「後のものが先になり、先のものが後になる」
ヨハネの黙示録には「わたしはアルパであり、オメガである。最初の者であり、最後の者である。初めであり、終りである」という一節がある。
ジークアクス内では、これに対応してか「アルファサイコミュ(おそらく赤いガンダムに搭載されている)」と「オメガサイコミュ(ジークアクスに搭載されている)」という言葉が用いられている。
キシリアが言ったシャロンの薔薇とは、ジオン軍の暗号であろうし、聖書の意味そのものではなく、エヴァが非常に衒学的だったように、作劇においてもキーワード的につまみ食いしているだけと思われる。
では、この名前がつけられた理由は何だろう。
ジークアクスの世界でも、宇宙移民は地球を追われて苦しみ、空気や水にも困る生活に押し込まれ、死にかけていた。移民は、最後に出て行った者ほど非道い目に合う。地球から最も遠いサイド3に移ったジオンは、地球からの恩恵もほど遠く、過酷な生活を迫られたことだろう。そんな死にかけたジオンに乳を飲ませて復活させたローザシャーン(シャロンのバラ)は誰だろうか。
ガンダム正史から来た、ララア、あるいは、爆散したエルメスの残骸ではないだろうか。
1stで特殊な爆発の末に消えてしまったエルメスとララア。あれが最初のゼグノヴァ(ファーストインパクト)となり、シャアが消えたソロモン一部消失(セカンドインパクト)と同様の転移現象が発生、エルメスの残骸がジークアクスの世界に、時をさかのぼって開戦前の時代に転送された。
そのテクノロジーが、ジオンにザクをもたらした、というのはどうだろう。これこそがシャノンの薔薇であり、ジオンを蘇らせた彼女の乳だ。
最初にサイコミュのメカニズムを積んだ機械が、ジークアクス世界のジオンに辿り着いく。キシリアあたりがそれに目をつけて、もともと兵器としてデザインされていたことに気づき、研究させはじめたのではないだろうか。
フラナガン機関は一年戦争のだいぶ前に漂着したサイコミュシステムを研究するが、実際に装置を使いこなせる適性ある人物を見つけられないでいた。
そうこうするうちに、技術の一部は転用され、ザクが生まれる。そのザクが実戦に投入される中で、シャアのサイコミュ適性が見出された──という説はどうだろう。
ゼグノヴァでシャアが消え去った「あちら側」には、1stガンダムの世界があって、逆にそこから転移してきたものが、ジークアクス世界のザクを開発せしめたという考えだ。
地球から遠く離れた貧しきサイド3が、突如として地球の軍事力を大きく上回る大発明を成し遂げた。ありえない事態だ。しかし、ありえないことが起きた、ということは、すなわち前提が間違っていたのである。
ここに「後のものが先になり、先のものが後になる」という聖句が成就したのだ。後の世で開発されたエルメスが、それより前の時代にもたらされたことで、後進国だったジオンが、地球連邦より先を行くようになった。
「シャロンの薔薇」は、旧約聖書の雅歌にある一節でもあり、ソロモン王が詠んだとされているので、ソロモン繋がりでこれが元ネタだとする説もある。しかし、実際にシャロンの薔薇があるのは、おそらくモビルスーツ製造工場があるグラナダの地下だ。ソロモンは関係無い。鶴巻監督の意図次第で真偽は定かでないが、筆者は「怒りの葡萄」の方が、ジオンの状況により近しいと感じ、この説を推す。
庵野氏の過去のガンダムデザインから推察される行動
テレビ版の1stガンダム世界が、ジークアクスと繋がっている説。
もちろん全て推測にすぎない。だが、ここにひとつの確信がある。
庵野秀明氏といえば、逆襲のシャアの新ガンダムデザインコンペに、ファーストガンダムとほとんど変わらない絵のガンダムを出したくらいにファーストを丸呑みして愛している男だ。だからこそ、一年戦争IFを音楽や構図そのままに展開したのだ。
となると腑に落ちない点がある。モビルスーツデザインが、あまりにもアレンジを「効かせすぎている」ところだ。
彼らに本音を問いただせば、全盛期の安彦良和氏に全作画を依頼して、1stガンダムをほぼそのままやりたいはずだ。(そうかな?)
そう、つまり「ジークアクスの裏側には、まんま、あの1stガンダムが隠されて転がっている」という予測が立つ。
転移先にある、安彦良和作画の一年戦争世界。おそらく「そっちのモビルスーツデザイン」も、現在公開できない資料として存在するはずだ。二つのまったく違う世界が交わったときに際立つよう、ジークアクスでのガンダム他MSは、意識的にアレンジを効かせすぎたデザインになっているのだと思う。
あの独特なデザインの背後に、本命の「まんまガンダム」がいる。
庵野秀明とは、そういう男だからだ。
それが、先述の説の、楽屋を想像しての根拠である。
クワトロは、ほんのちょっとシャアではなかった説
話をもどして、シュウジの連邦軍軍籍をもらってジークアクスのシャアがあっちの世界に行ったとすると、Ζガンダムのクワトロは、シャアであってシャアではなくなり「君は、シャア・アズナブルという人のことを知っているかね」という5話のセリフに味わいが出る。
まあ、それはともかく。
そのときにシャアに持たされたのが、先述の川ポチャした金貨かもしれない。シャアは、1stでの決戦前に金塊入りのトランクをホワイトベースのセイラさんに放ってよこすくらいには、金塊やら金貨やらを持ち歩いている。
サイド6は、戦後5年の間に何があったのかスマホが普及していて、電子決済も多いことだろう。あの金貨のもつ別世界感は、シュウジが異世界から来た雰囲気に寄り添っている。
シャアだけでは、ジオンは勝てない 技術開発の加速とテムレイの亡命
ジークアクス世界線の連邦側ドラマは、ほとんど描かれない。
ガンダムの開発に失敗したものの、ジオンと連邦の国力差は30倍だ。一年間の長期戦で、連邦の数にまかせた平押しで勝てるかと思われたろう。
しかし、シャアのサイコミュや、そのケツについていくシャリア・ブルが大ハッスルで活躍したこともあり、ジオンはついに勝利を収めた。連邦は地球に引っ込むことになり、ほぼ勝利に等しい引き分けと言える。
連邦は、地球からジオンを追い出すことには成功したようだが、独立は認めた形となった。
アムロの活躍を追う1stでは、アムロが各地のベテランジオン兵をなぎ倒していくので、アムロ一人の働きで連邦はジオンに勝ったように見える。しかし、ウッディ大尉も言っていたが、そんなわけがない。
ジークアクスでも、シャア一人の活躍でジオンが勝ったわけではないだろう。劇中で、ザク・鹵獲ガンダム・ドムくらいしかジオンMSの姿が見えない。(あとはちょっと違うブラウブロと、ちょっと違うビグザム)
技術力と生産力を、これら信頼性のおける機種に集中させたのも、大きな勝利の要因だ。
余談1:遠く手の届かない場所にもビーム砲を延ばして戦えるブラウブロ(テレビ版)はニュータイプの拡張した認識力の象徴だ。そして、数的戦力を回してもらえず、手持ちの武器もおおよそ奪われ、それでも凶悪な爪の生えた足であがきにあがいたドズルを象徴するのがビグザムだとするなら、ここでの量産されたビグザムには、一応は腕のようなものがついていると嬉しい。
余談2:ブラウブロに全天周囲モニタが採用されていた。連邦軍MSであるアレックスで、終戦間際に不完全ながら採用されていたコクピットシステムが、ジオンでもう実現している。サイコミュはともかく、連邦開発の技術がジオンに流出しているのだ。ニャアンが運んでいたジオニックの「テム・レイ回路」風のユニットが、本当にテム・レイ設計によるものだという可能性、連邦の技術士官である彼が、ジオンに亡命またはスカウトされている可能性がある。
また演出においても、全天周囲モニタは「MS開発が加速している」ことを教えてくれる。工場の敷地くらい必要で、エルメスの巨体にやっとつめたサイコミュ機材が、ガンダムのバックパックに搭載できてしまうダウンサイジングもそうだ。この加速感があるからこそ、ビグザム量産にも説得力が出る。ゲームなどでビグザムを量産しようとすると、とにかくカネが足りず、不可能に近いと聞く。ドズル閣下の叶わぬ夢を果たすには、これくらいの加速感が必要だったのだろう。
シャア個人は、それほど超人的な働きをしたわけではない。物語後半で、彼は都市伝説のようになって人々から実体を忘れ去られていく。
ただシャリア・ブルだけが、彼に執着しているのみだ。
ジークアクス本編のはじまり サイド6とは
後半がはじまる。
マチュのコロニーは、行政の情報がすべて日本語だった。日本人街というよりは、完全に日本。日本人が移住する目的で建造されているようだ。
1stで描かれたサイド6といえば、戦争をテレビで中継を見ているような国民性だ。ここは、米ソに挟まれてなお平和から尻をどけなかった当時の日本を象徴しており、本作ではそれをストレートにしただけかもしれない。
そして、難民(コロニー落としによって発生した? ソーラーレイについての言及があったから、その疎開による軋轢などかもしれない)がいる。ジオンのコロニー落としはさほど義憤を生んでいないのか、勝った方には逆らわないのか。毒ガスを使ってのあまりに非道な行為の結果・・・ではないらしい。もしそうなら、もっと苛烈なレジスタンスが生まれているはず。(ただ、事なかれ主義的な国民性なのかもしれないが)
冒頭のサイド7では、コロニー内の、端の方には緩衝地帯のような公園施設的なものがあった。ガラスで透過する場所の近くは、宇宙線被爆を避けるためとか理由があるのだろう。これがサイド6では見られない。おそらく、人口が過密状態になっていて、そういった場所、昔で言うと川原のような場所にも、人はビルを建てて住んでいる、雑然とした世界のようだ。
ここで、マチュやシュウジは、どんな風に暮らしていくのだろう。
ジークアクス本編今後の展開
さて、ジークアクスのプラモデルの画像を見ると、この機体にはヒートホークだけでなく様々な武器がある。おそらく現状でジオンと連邦は休戦中。やがて戦争状態に突入していくことを予感させる武装だ。
そうでなくとも火種はある。サイド6の難民だ。地球連邦が手を引いたので、宇宙は「ジオンとジオンに協力しなかった従属国」に別れて対立する。
弱いものたちは、さらに弱いものを叩くのだ。サイド6の難民は、ジオンへの憎悪を持つ。そして、地球連邦が戦力を建て直すのも、時間の問題だ。
いつか戦争は、再び起こる。
そして、戦争からしか真のニュータイプの目覚めはない。ニュータイプのキラキラに出会い、ビットを、オメガサイコミュを起動させたマチュとシュウジには、ニュータイプの素養が間違いなくある。彼らは戦争に突入し、そのなかでニュータイプに目覚めていくのだろう。
一度不鮮明に起きた「ゼグノヴァ」が、物語の構造上、必ずもう一度おきる。おそらく「ダンバイン」の「東京上空」になる。行った先は、Ζガンダム前夜0085の世界かもしれない。そこできっと非道い目にあって戻ってくる。(ところで、絵柄という意味で両世界にまたがるシャリア・ブルに二つのキャラデザが存在するように、マチュやシュウジがあっちの世界に行った際に備えて、あっちの絵柄の2人の画稿も存在するはず)そんな展開が予想される。
バック・トゥー・ザ・フューチャーみたいにガンダム正史の隙間を、うまく縫う感じになって、ニュータイプやサイコミュ現象の謎を解いてまわる展開になると面白い。人はいずれ時間さえ支配すると、アムロも言っているので、時代の制約もない。0085に限らず時代を超え、あの正体不明の怪現象であるアクシズショックの現場にも現れて、謎を解いてくれるかもしれない。
ガンダムの白さは囮(おとり)、一年戦争IFをも囮、そしてハマーンも囮
ところで、ビギニングの最初のオリジンガンダムっぽい部分は、たぶんテレビ用ではない。
テレビ放映第一話は、ジークアクス本編のマチュの登場からはじまると思う。(「数話を編集しての先行上映」らしいので、駆け足気味だった前半部分が実はこっそり6話分くらいの分量で作られていて、そこも放送してくれると夢のように嬉しい)そして、テレビ公開までの数ヶ月間、前半の話題、つまりカラー版宇宙世紀前史での、ランバラルやドズルの敗因などが考察されつくし、マチュたちへの考察は霞むだろう。
我々からヘンな笑いを搾り取ったあの前半は、歴史背景の説明であり、ガノタへのサービスであり、スタッフのアレンジ料理であり、そして、本編テレビ公開までの「囮(おとり)」なのだ。
出されている情報から先読みをされてしまうと、制作側は非常に困る。
原作小説や漫画が出ていないオリジナルシナリオ作品の場合、世間が見越した通りの展開を、本放送では超えなければならないからだ。
考察能力の鍛えられすぎたファンがひしめく中に新ネタを放り込む場合、三ヶ月もあれば刻み尽くされてしまう。正鵠を射る考察も出てくるだろう。
その回避のための囮が、このオリジン風カラー宇宙世紀前史なのだ。
テレビ放映までの間、ファンはこの囮に飛びついて「アムロどうしてるのかな!?」とか「テム・レイって、酸素欠乏症にはなってないよね、シャアがザクを爆発させなかったしさ!!」「でもガンダムの製造は続かずにキャノンがメインになってるから失脚したんじゃない?」などと大喜びで喋りまくるだろう。
マチュたち本編パートに、特に注目することなく、だ。(囮が美味しすぎるから効果がある)
マチュの配色や、公開タイミングがハマーン・カーンの情報を踏んでいることで「ハマーン様が十代の頃の話!?」とウキウキしながら劇場に足を踏み入れて、ものすごい足払いを食らって逆さまにブチ落ちた人も多かったと思う。これも囮だ。
エヴァの死海文書のあたりからそうだった。実際にはそれほど深遠なテーマでも無いものを、意味ありげに引っ張って引っ張って、26年もかけてやっと完結したエヴァ。あの頃から、とにかく囮を、実に美味そうな囮をばらまいて、いつの間にか物語を進めるのが、彼らのやり口だ。言いたいことを、エンタメでデコレーションするのが、実に実に上手い。
この幻惑によって、物語の串がいまどのへんを貫いているのかを見るのが幻惑される。エンタメが余計な情報となって、ファンは本編考察がすすまず足踏みし、製作は焦らず進行できるのだ。(この足踏みがまた非常に楽しい)
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まさか600いいねは行かないと思うけど、500で↑こんな絵を描いてしまったから、600記念絵は何を描いたらいいのか、もう分からん。アルティメットトゥルーエンド絵としては、シャアとシャリア・ブルの骨がいっしょの骨壺に入ってサイド6の無縁墓地に納まる絵とかか?
↑ 600いいねに達してしまったので、ここも大概妄言がすぎると思いつつ、さらにこじれた妄想を、小説の形で書いてみた。一年戦争の謎に切り込む。ジークアクスにも、ちょっと関係あると思う。
ゲロマズ あと女性の匂いを嗅ぐ
一回の劇場観賞で思いついた考察はここまで。
あとは、いろんなネタバレを読んで理解を深めたいが、どうせ本編が始まる前なので、思い切りジャンプした飛躍した考察をしてみた。当たっても外れても楽しみだ。
これ以後に進んだ考察や余談はこちら「あの人はどこに」にて順次更新。「アムロはどこにいるのかを引き算で割り出す」等、すでに数回更新中。
ところでホワイトベース(名前が変わっていた)で女性士官が言ってた「ゲロマズ」というセリフ、エヴァンゲリオン第拾伍話のビデオフォーマット番次回予告でミサトさんが言ってたのを思い出す。あと、ゴジラ・ライダー・ウルトラマンとあった「女性の匂いを嗅ぐ」描写が今回もあった。
あれの脚本だれ? 庵野さん?