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兄の不登校が妹に伝染した。

 不登校は兄弟に伝染する。
 ある要因から誰かが不登校になると、その兄弟姉妹の誰かも不登校になりやすい。

 うちも長男が不登校になって、ほどなくして三女が不登校になった。
 聞けばよくある話で、支援教室でも兄弟で、姉妹で不登校という家庭をよく見る。

 はじめは「学校って休んでもいいんだ」という新たな価値観が家庭にもたらされたためだと思っていた。人間は楽な方に流れる。お兄ちゃんだけ学校に行かなくていいなんてズルい! そんな風に思って下の子も不登校になったのでは・・・? と思っていた。

 でも、ちょっと違うらしい。
 たとえば、嫌いな上司が釣り好きで釣果の自慢ばかりするのを不愉快に思っていると、部下は釣りに対していいイメージを持たない。
 逆もあって、好きな人がやっていることには、肯定的なイメージを持ちやすいのだ。

 当然、好きな人が嫌っているものを嫌いになることもある。

 生活をともにしている兄弟または姉妹が、行くなら死んだ方がマシだという位に拒絶しているモノを、好きになることは逆に難しい。共感力のある子ほど、我知らず影響を受ける。(学校への価値観がある程度かたまっている上の子たちは影響を受けなかった)

 別の話だが、同級生が先生に怒られているのを見て不登校になった子がいる。その子自体は怒られていないのに、だ。
 自分の中に「絶対に先生から怒られないくらいの完璧小学生だ」という自信がなくて(普通はない)「次は私だ」という恐怖に駆られたのだ。
 事情を共有していて共感しやすくなっている環境ではしばしば起きる。 
 クラス内ですら起こるのだから、家庭内ならなおさらだ。
 となると、この「つられて不登校になっている子」への対処は、何らかの原因があって不登校になった子とはまるで変わってくる。

 後者は無理に学校に行かせることはなく、気力や元気の回復を待つ必要があるが、後者は学校自体のイメージを変えていく必要がある。
 好きな授業、好きなイベントだけでも参加することには、大きく意味があるのだ。

 うちの下の子は「学校に行きたいし、行こうと思っているんだけど、いざ出発する時間になると行きたくなくなってしまう」と苦しんでいた。
 これは、本人にも無自覚に、兄が学校に行きたくなくて泣いたことを我が事のように感じているからではないだろうか。兄の記憶を自分の中に再現して、それに対処できないでいるのだと思う。

 この二者の不登校問題へのアプローチはまったく別のものになる。夏休みが終わって新学期から、下の子は少しずつ学校に通うようにしていく予定だ。

 ただ、この子の中に「いる」あの日に泣いて学校に行きたくないと言っていた長男を慰めるところから始めなければいけないだろう。

 下の子が不登校になって一年。やっと少しだけこの優しい子の苦しみが分かってきた。ほんの少しだけ、だけど。

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